「近赤外照射」によって3Dプリント技術は新たなフェーズへ
江南大学の研究チームによる驚きの技術革新
現在、SNS上である動画が話題になっている。
This print appears to be happening in midair - it's a method of #3Dprinting that combines direct ink writing with up-conversion particles-assisted photopolymerization. With this method of printing ceramics, the need for support structures is eliminated
— Wevolver (@WevolverApp) July 29, 2023
Credit: ASTM International pic.twitter.com/KsPd5cvOfB
「#3dprinting」というハッシュタグと共に投稿されたこの動画を見て驚かない人はいないだろう。なんせ、この3Dプリンティングにおいては支持体が存在しないのだ。あたかも、開放された空間上にペンで絵を描いてるかのように、突如としてライン状の物質が生成されているのが分かる。
どうやら、この新技術の開発を行ったのは、中国の江南大学の研究チーム(Yongqin Zhao, Junzhe Zhu, Wangyan He, Yu Liu, Xinxin Sang & Ren Liu)のようで、映像はASTM internationalによって撮影されたものらしい。今年の4月にはこの新技術に関する論文が『nature』にも掲載されている。
論文によれば、この新技術の鍵となっているのは「近赤外照射」という新たな硬化方法のようだ。
この新技術の元になっているのは、3Dプリントの一種である「直接インクライトプリンティング(DIW)」とのこと。DIWとは、特殊な「インク」を用いて物体をレイヤーごとに作り上げるプリント方式で、従来は外部で硬化させる時間を必要としていた。しかし、この新技術により、インク(スラリー)が出力されるその場で硬化させることが可能になったという。
その秘密が「近赤外照射」なのだ。この技術では、特殊な感光剤を混入したスラリーがプリンタのノズルから押し出されると同時に近赤外光を照射。これによりスラリーがその場で硬化し、設計通りの形状を保つことが可能になった。近赤外光の照射時間を調整することで、スラリーの硬化速度や硬度を細かく制御することもできるようだ。
いずれにしても驚くべき革新的な手法だ。この技術が一般化した暁には、3Dプリンティングのプロセスが格段に速くなることは間違いない。また、3Dプリントの製品の品質や強度も向上するだろう。実際、この新技術は、複雑な形状の物体や大規模な構造物の製造に革命をもたらすとすでに期待されているようだ。
3Dプリント技術は、我々の生活を豊かにし、産業界に多大なる影響を与えてきた。近赤外照射を活用した3Dプリントは、その最新の進歩と言える。
「その場で硬化」、そして「細かい制御」。これらの特性が生み出す新たな可能性に向けられた期待は大きい。近赤外照射による3Dプリントがもたらす未来の製造技術、その可能性は無限大だ。