いよいよNASAが「アルテミス計画」を本格始動へ|3Dプリント部品で打ち上げられたアルテミスⅠロケットの行方
NASAによる今世紀最大のプロジェクト「アルテミス計画」
以前紹介した世界初の3Dプリント月面基地「LINA」の計画をご記憶だろうか。
3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に
https://skhonpo.com/blogs/blog/3dlinalina?_pos=1&_sid=c9d2ecef1&_ss=r&fpc=2.1.365.596066bca8c8032d.1688992280000
「LINA」は、NASA のフィールドセンターの一つである宇宙建築テクノロジー企業AI SpaceFactory が、ケネディ宇宙センターのエンジニアらと共同開発を行なっている月面基地のプロジェクトだ。今年の初夏にそのデザインがNASAから発表され、まるでSF映画のような近未来的デザインで大いに話題になった。
この「LINA」建設プロジェクトの背景には「アルテミス計画」がある。これは今後10年以内に月の南極に宇宙飛行士を送り込むためのプロジェクトで、「LINA」もまたそのための施設として研究されている。実際の施工においては自律型ロボットを使用する予定で、月の南極部にあるシャックルトンクレーター付近に建設を予定しているという。
今回、このアルテミス計画の進展を伝えるニュースが届いた。2022年11月16日、アルテミスⅠロケットが3体のダミーを乗せてテスト飛行を開始したのだ。
その後、NASAのオリオン宇宙船は、約63フィートにわたる 4つのソーラーアレイを運びながら月への道を進んでいる。フロリダのケネディ宇宙センターから打ち上げられたアルテミスIは、月と火星への有人探査を可能にするための、ますます複雑化するだろう一連のミッションの最初のものだ。
3Dプリント技術の35%のコストが削減
実はこのアルテミスⅠにも3Dプリント技術が多く用いられている。
たとえばロケットが地球の重力から逃れるのに十分なエネルギーを生成するための大量の推進剤を動かす際に、最も高温に対処するように設計された4つのRS-25エンジンには、エンジンの全体的な生産コストを削減する多数の3Dプリントコンポーネントが使用されている。実際、それら3Dプリントコンポーネントを用いることでパフォーマンス、信頼性、安全性を維持しながら、35%のコストが削減される。
画像: NASA/Frank Michaux.
この際、主に用いられたのはLPBF方式の金属3Dプリンターだ。LPBF方式とはレザーパウダーベッドフュージョン方式の略。これは素材となる金属粉末を層状に敷き詰め、造形する部分をレーザーや電子ビームにより焼結することを繰り返して部品を造形する方式のことで。他の造形方式と比べて高精度・高密度の造形が可能であることが知られている。一方、その反面、造形速度が遅く、大量生産には不向きであり、そのため今回のようなプロジェクトベースの部品製造に用いられることが多い。
また最初の飛行の2分間で推力の75%以上を供給する二つの固体ロケットブースターもまた3Dプリントとコンピューターモデリングに依存している。これらのブースターは2020年にNorthropよりケネディ宇宙センターに出荷されたものだ。
画像:NASA/Kim Shiflett.
さて、オリオン宇宙船は21日に月のそばを飛行した後、月面から数マイル離れた非常に安定した軌道へと向かう途中で月面への比較接近を行う予定だ。このアルテミスミッションを通じて、NASAは月面に最初の女性と最初の有色人種を着陸させ、長期的な月滞在への道を開き、宇宙飛行士が火星に向かうための足がかりとして機能させたいとしている。今回の打ち上げは、この10年間で最も話題になった宇宙プログラムの1つの始まりを示す狼煙だ。
今後の予定としては、次のロケットであるアルテミスIIの打ち上げミッションが2024年までに実施され、4 人の宇宙飛行士が月を周回することになっている。その成功が確認されたら、いよいよアルテミスIII、有人着陸ミッションへと入っていくとのことだ。