イタリアのロイヤルガーデンに巨大鯨が出現|金属3Dプリントのクリエイティブな可能性
伝統的な緑のガーデンに海の巨大生物が?
イタリアの都市トリノのロイヤルガーデンに巨大鯨が登場して話題となっている。
ロイヤルガーデンは16世紀以来、トリノ市民を楽しませてきたクラシックな広場。北イタリアらしいのどかな雰囲気を堪能できる、観光客にも人気のスポットだ。
そのロイヤルガーデンで現在行われているのが「Animals at Court」展。広大な庭園に様々な生物を模った彫刻が展示されている。
その中でもひときわ目立っているのが、件の巨大鯨像だ。制作したのは、スタジオC&Cのパオロ・アルベルテッリとマリアグラツィア・アバルド。今回、彼らはこの鯨のパスデータをデザイン、さらにそのデータをMX3Dのワイヤーアーク積層造形 (WAAM) 金属3Dプリンターによって出力することで、伝統的な陸の広場に海の主を出現させたという。
金属3Dプリンターが「ものづくリ」を革新する
まず驚くべきはその重さだ。この鯨の彫刻は約880キロの重量とされている。あたかも地面が海面であるかのように地中から飛び出しているヒレは、通りすがるものたちを驚かさずにはおかないだろう。
制作者によれば、今回、鯨を制作したきっかけとして、ダイビング中にザトウクジラを目撃したという経験があったという。深海で見た鯨はあたかも金属のように重厚だったという。今回はそのインスピレーションに基づき、実際に金属を用いて大地の鯨を制作したというわけだ。
大胆極まりない地上の鯨は、言うまでもなく3Dプリント技術なしには実現しなかった。ブロンズの鋳造は従来とてつもない手間がかかる作業であり、不可能ではないものの、アーティストが巨大作品を生みだすために利用するにはコストがかかりすぎる手法でもあった。
あるいは彫刻といえば、これまではあくまでも手作業によって作られるものというイメージも強かった。しかし、今回のケースで明らかなように、すでに彫刻制作はいわゆる彫刻技術を持たない人々にも開かれようとしている。
金属3Dプリンターはいまだ発展途上の分野だ。これまで主に工業用に用いられてきたが、実はこうしたアートの文脈においても様々な活用方法がある。実際ここ数年でそうした事例は格段に増えてきている。おそらく、今後もその活用範囲は拡張していく一方だろう。
たとえば経済アナリストたちは、金属3Dプリントの市場規模は2026年までに800億円以上の規模になるだろうと推測している。いよいよ本格的な金属3Dプリント時代が始まるということだろうか。次なるニュースを楽しみに待つとしよう。
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