自宅でガラスを3Dプリントできるようになる日も近い?|ガラス3Dプリント技術の最前線
ガラス3Dプリントは熱溶解積層と似ている
3Dプリント可能な素材といえば、まず樹脂と金属が思い浮かぶという人が多いのではないだろうか。しかし、その素材のヴァリエーションは実際のところかなり多様だ。とりわけ現在注目を集めている素材といえば「ガラス」だろう。
一般的にガラス3Dプリンティングは溶解積層方式と似た形がとられている。ガラスの粒子を溶かし、それを1層ずつ配置して希望する形状へと仕上げていく。ただし、一般の溶解積層に比べて素材をガラスとする場合、動作温度は約10倍ほど高くなり、その温度はなんと1300度と言われている。そして、そもそもフィラメントに相当するガラスの調達がまず難しい。オンラインでサクッと注文というわけには現状いかない。
ガラス3Dプリントで使われるガラスは多様であり、ソーダ切開ガラスやクリスタルガラス、あるいはガラス瓶などのガラスをリサイクルして3Dプリントすることもできる。溶解温度はガラスの種類によっても異なり、ここら辺は微調整が必要だ。
また3Dガラスプリンターとしては、世界初の商用ガラス3DプリンターシリーズであるMapleなどが知られている。その価格は45,000ドルと個人使用するにはちょっと高価にすぎるが、企業であれば導入可能な価格帯だ。
Maple3(画像引用)Maple Glass Printing
Maple(現在はバージョン3)ではガラス素材をまずロッド(棒)状に成型し、そのガラスロッドを3Dプリンターのノズルへと繋がる上部の穴を通して挿入することで3Dプリントが行われる。このガラスロッドはビトリグラス(こちらは15000ドル)という装置に粉砕ガラスを投入することでつくられるようで、直径は3.5〜6mm程度となっている。粉砕ガラスはリサイクルされたものでも良いため、素材を何度も使いまわせるのは大きな利点だろう。
ビトリグラス(画像引用)Maple Glass Printing
出力は熱溶解積層方式と基本的には変わらない。Curaなどのスライサーを使用して3Dデータの情報をマシンへと送信、その後は一層ずつオブジェクトが造形されていく。後処理はオブジェクトの用途によって異なるとはいえ、基本的にはビルドプレートから外した段階ですでに完成状態となっている。
Mapleを製造しているMaple Glass Printingの公式動画を見てみると、その造形力はかなりのものだ。そして何よりガラス特有の高級感ある質感がたまらない。これは是非とも試してみたくなる。
光造形可能な液体ガラス樹脂も登場
実はMapleとは別のところで、ガラス3Dプリンティングに関する新たな技術も生まれてきている。たとえばドイツの新興企業であるGlassomerが開発を進めているのは非晶質シリカを含む液体ガラス樹脂だ。すでに技術的には完成しているらしく、今後このガラスレジンがリリースされたら、任意の光造形3Dプリンターでガラスのオブジェを出力することができるようになるという。
(画像引用)Glassomer
ただ、こちらの場合、後処理が必要で、出力されたオブジェはその後、1300度に達するオーブンで焼結される必要があるという。
この技術であれば、表面の粗さを数ナノメートルにまで下げることができるとのこと。つまり、相当に複雑な構造も出力できるらしい。ただし、ガラスという性質上、オブジェクトの厚さが薄すぎると亀裂が入ってしまう。そのため、ガラスの壁は1cm以上は必要だろうとのことだ。
いずれにせよ、ガラス3Dプリンティングはもうあと少しで私たちの手に届こうとしている。オリジナルのガラスフィギュアや、ガラスのアート作品を自在に作れるなんて夢見たいじゃないか。続報に期待したいところだ。