3Dプリント自動車が当たり前の時代は目前!? 過去数年間の事例をピックアップ
とどまることを知らない自動車産業の3Dプリント化
自動車製造業界において3Dプリンターがなくてはならない存在になって久しい。いまや、業界を代表するほとんどのメーカーは、自社の自動車の部品の一部から大部分を3Dプリンターに頼っている。
多くのメーカーは、自動車の部分に応じて使用する3Dプリンターを使い分けている。たとえばプラスチック部品であればFDM、金属部品であればSLMといった具合に。
なぜ自動車業界が3Dプリント技術を積極的に導入しているのか。まずコストの削減があるだろう。3Dプリンターを用いれば、最小限のコストで必要な部品を必要なだけ製造することが可能になる。たとえば、これまでであればコスト高であった少量生産も3Dプリント技術を用いれば比較的に容易になる。あるいは自動車のフレームの造形などに関しては3Dプリント技術を用いればこそ可能となるフォルムも存在することだろう。
おそらくこの先10年で自動車業界の3Dプリント化がさらに推し進められることになることは間違いない。果たしてどんな3Dプリント自動車が先数年で登場することになるのだろうか。それについてを想像するために、ここでは過去数年間で製造された3Dプリント自動車の中から、特に注目すべき5台の自動車を紹介したい。
1.デヴィッド・ボウイへのオマージュカー
これは2019年にあるフェスティバルで発表され、初のフルスケールの3Dプリント自動車として話題となった一台だ。日本人の自動車デザイナーである山本拓実が作成し、イスラエルに拠点を置く3Dプリント企業であるMassivit3Dによって製造されたこの自動車は、同時にあのデヴィッド・ボウイへと捧げられたオマージュカーでもあった。
大判3Dプリントを活かしたこのフォルムは、まさに3Dプリンターの本領発揮ともいうべき流線の美しさを備えている。実際いこれを公道で走らせるとなると、やや目立ちすぎるし車高も低すぎる気がするが、3Dプリント自動車の夢を感じさせてくれるという点では触れずにはいられない。
2.夢見る親子によるランボルギーニ・アヴェンダドール
実はこの車については以前にも記事で紹介したことがある。
3Dプリンターでランボルギーニを一般人が自作!? さらにはプリントしたボディを取り替え可能な未来型自動車も登場
この車は米国コロラド州のレーザー技術メーカー、KMLabsの最高科学責任者であるスターリング・バッカス氏とその12歳の息子によって作られた、ランボルギーニ・アヴェンダドールだ。なんでも、この親子、レーシングゲームの「Forza Horaizon3」をプレイしたことを機にランボルギーニに一目惚れしてしまったのだとか。
その後、親子二人は仕事終わりの1時間を使い、息子と地道な作業を続けた結果、およそ1年4ヶ月で、ランボルギーニの外装を作り出すに至ったという。予算はおよそ2万ドル。普通に買えば数千万円かかると思うと、かなりお得(?)だ。
いずれにせよ、3Dプリント技術の根幹にはこうしたDIY精神の存在が欠かせない。皆さんにも是非とも挑戦してみてほしいところだ。
3.幻のクラシックカー「ラストン・ホーンズビー」
3Dプリント技術の強みは、すでに製造ラインが止まってしまった製品のパーツも出力が可能な点にある。たとえばクラシックカー。中でもこのラストン・ホーンズビーは、製造時期がわずか5年、加えてもとより少量しか生産されていなかった幻の車だ。
もちろんマニアなオーナーは存在した。しかし、100年前の車である。各部にガタがきているのは当然だった。しかし、スペアパーツはもはや存在しない。そこを補ったのがSiemens UKだった。
Siemens UKは試行錯誤の末、、SLMテクノロジーによって2016年にパーツを正確に再現することに成功。かくして、幻のクラシックカーがここに再び蘇った。つまり、なにも新しいモデルを3Dプリントするばかりが能ではないということ。次にその眠りから目覚める幻のクラシックカーは一体どれだろうか。
4.150以上の部品が3Dプリンターで作られたシンガポール発の電気自動車
シンガポールの南洋理工大学の学生によって2015年に製造されたNanyang Venture VIIIは、アウターシェル、グリル、ドアクラッチなど150以上のパーツが3Dプリント製の電気自動車だ。
そもそも大型オブジェクトを製造する際の3Dプリント技術の可能性の実証を目的に取り組まれたプロジェクトといいうこともあり、可能な限り3Dプリンターで出力することが試みられた。
個々の顧客のニーズに合わせて上部ボディまたは運転席をカスタマイズできるマイクロカーコンセプトが採用されているのも注目点。3Dプリンターを用いる利点はそのカスタマイズしやすさにあるのだ。遠くない将来、世界の道路は色とりどりのカスタマイズ3Dプリントカーで埋め尽くされるようになるかもしれない。
5.いまやイタリアでは一般的!? 3Dプリント電気自動車「YoYo」
最後はすでに一般販売され、イタリアでは各都市で普通に見かけるという3Dプリント電気自動車Xev「YoYo」だ。そのボディは3Dプリンターで成形されており、長さ2500mm、幅1500mm、高さ1575mm、総重量が750kgで、軽自動車クラスのL7セグメントに分類されるコンパクトな自動車となっている。
2人乗りという制約はあるものの、小回りのいいサイズ感で都市の交通には最適。デザインの自由度も高く、また部品点数が少ないため、低コストで製造できる点も現代的だろう。バッテリーは交換式で価格も100万円前後とお手頃、さらに安全性も抜群とのことだ。
すでにイタリアでは普及しており、カーシェアリングにも導入されているという点で、その将来性も感じさせてくれる。今後どんどんとこうした3Dプリント自動車が登場してくることは間違いない。日本のメーカーの飛躍を期待したい。