「まるで煮込み牛肉のよう」すでに多くの高級レストランでも採用されている3Dプリント代替肉の最前線
高まるオルトミートへの関心
これまでも3Dプリント人工代替肉(オルトミート/ビヨンドミート)については多く取り上げてきた。
いまや活況を呈しているその業界において、とりわけ初期より技術的にオルトミート産業を牽引しているのがイスラエルのベンチャーRedefine Meat(以下、RM)だ。同社の製造するオルトミートは、植物ベースの成分を肉の構成によく似た複雑なマトリクスとして積層させることで、動物のリアルな肉と同じ外観や食感、風味を再現していることで知られている。
Redefine Meat
RMが注目を浴び出したのは2010年代の後半頃。当時はまだ3Dプリント代替肉については、世間的にも全く知られておらず、また世間の関心も今ほどに高くなかった。あれから数年、環境問題への意識の高まりとともに、食糧危機に対する有効な解決策として人工代替肉に注目が集まり始めた。
2021年には、マイクロソフトのビル・ゲイツやアマゾンのジェフ・ベゾスなども、人工代替肉について発言して話題となった。ビル・ゲイツは「すべての富裕国は100%合成牛肉産業へとシフトすべきだ」という考えをインタビューにおいてはっきり示し、ジェフ・ベゾスもまた”家畜からの世界的な温室効果ガス排出量 “を削減するためには、オルトミートを開発している企業に積極的に投資していく必要性があるだろうと、雑誌《WIRED》の取材に答えている。
さらに同年の資金調達ラウンドにおいて、にRMは2900万ドルを調達。この資金を元に産業用代替食肉(オルトミート)3Dプリンターの大規模生産施設を建設、いよいよ世界市場へと自社のオルトミートの流通を開始しようとしている。
なぜRedefine Meetに注目が集まるのか
このように、RM、そして3Dプリント人工代替肉は、現在、非常に大きな注目を集めているわけだが、もちろん、それが食肉である以上、重要なポイントとなるのは「味」だ。いかにそれが先進的な技術によって作られ、環境問題の解決に向けて有効であると言っても、おいしくなければ人々に普及することはない。
この点に関しても、RMのオルトミートの評価は高い。
たとえば英国で最も有名なシェフの一人であるマルコ・ピエール・ホワイトは、最近、彼の手がける多くのレストランでRMのオルトミートを取り扱っている。ホワイトは肉の多いイギリス料理とフランス料理を専門とするシェフだ。その彼が他のオルトミートではなく、RMのオルトミートを選ぶ理由は、その食肉としてのクオリティが高いからに他ならない。
現在、ヨーロッパでは、すでにオルトミートを提供しているレストランは少なくない。ホワイトのレストランも同様だ。実際、その味はどうなのか。そこに関し、最新の「3DPRINT.COM」の記事では、ホワイトのレストランが提供しているオルトミートのステーキを実際にライターが食し、それについてのレビューを行なっている。
レビュアーによれば、見た目は「ステーキのようには見えなかった」と書いている。それは確かに肉には見えたが、いわゆる「ステーキ」ではなかったらしい。さて、味と食感はといえば、やはり「ステーキ」とは違うものだったという。だが質感的には明らかに肉だったとも書いている。本物の肉と同様の不規則で柔らかな歯ごたえのある繊維質の食感は、どちらかといえば「煮込み牛肉」のようだった、と。
総評としては、RMのオルトミートは完璧ではないが、レビュアーがこれまでに試した他のどの代替肉製品よりも本物の肉の触覚を再現している、というものだ。
もちろん、技術は日々進歩している。これはあくまでも2022年の最前線の代替肉がそうであったという話だ。
日本のネクストミーツにも注目
ちなみに日本にも欧米と比較した場合に数は少ないもののオルトミートを提供しているレストランは存在する。多くはベジタリアン向けの植物由来肉として提供されているようであり、今のどころRMを使用しているレストランの話は聞かない。
あるいは3Dプリント代替肉の開発を行う日本の企業としては「Nexxt Meats(ネクストミーツ)」が注目だろう。同社は「地球を終わらせないために」をスローガンに、2020年に立ち上げられた代替肉開発、製造、販売の企業で、すでに「NEXT牛丼」や「NEXTメンチカツ」など自社商品の販売も行っている。コンビニやスーパーでも店舗によっては取り扱いがあるため、すでに食べたことがあるという方もいらっしゃるかもしれない。
Next Meats|地球を終わらせない
いずれにしても2022年を一つの境に3Dプリント人工代替肉の猛進撃がようやく始まりつつあるという印象がある。今後の動向から目が離せない。