
農作物の危機を3Dプリンターは救うか|最先端の植物フェノタイピングによる品種改良
気候変動に耐えうるサトウダイコンを3Dプリント実験
農業の未来を3Dプリンターが変えるかもしれない。そう予感させるニュースが届いた。
革新的な研究を行っているのは、ドイツのボン大学とシュガービート研究所(IFZ)の研究者チーム。彼らは、AI支援作物パイプラインの改善を開発することにより、農業を未来に持ち込むための取り組みを続けている。
GigaScience誌に発表された研究成果によれば、彼らはレーザースキャンと一般的なFDM3D印刷を使用することで甜菜(サトウダイコン)の詳細な3Dモデルを生成することに成功。これは今後、農家がインテリジェントな作物育種を支援するのに役立てられることになる。つまり、より栄養価が高く、生産的で、持続可能な特性を持つ農作物の開発を、この3Dモデルが促進するということだ。
研究チームによれば、この研究は、「植物の繁殖を促進し作物の生産を改善すること」を目的としたもので、3Dプリント植物がその正確な参照を提供することになるという。これまで伝統的に、植物フェノタイピングの参照データは侵襲的な方法に依存してきた。しかし、3Dセンシング技術の最近の進歩は、「手動測定では参照できないパラメータを収集する可能性を提供」することができる。
植物フェノタイピングによる品種改良
この研究が注目される背景には、まさに日本も現在経験している気候変動に対応した農業の実現への期待がある。刻々と変化していく気候環境において育成可能な作物品種を生み出していくためには、植物の遺伝的構成または遺伝子型とその環境との相互作用に関する信頼できる情報が必要だ。こうした植物の幾何学的または生理学的特性にアクセスするプロセスは一般的に植物フェノタイピングと呼ばれている。
この植物フェノタイピングの研究は、これまでその多くが植物の表現型に対する情報を手動で記録する形で行われてきた。しかし近年では、より多くのフェノタイピングパイプラインがコンピュータ支援センサー、そして人工知能を使用する形で、作業を自動化し、プラントに関する複雑な情報をより効率的にキャプチャするようになっている。実際、今日の植物育種において中心をなしているのは機械学習アルゴリズムだとも言われる。
とりわけ今回の3Dモデルを通じた研究は、植物の地上部分の特徴を3Dで再現し、より良い3Dモデルを作成することにあった。研究チームの学生は研究の意義について次のように述べている。
「再現可能な参照モデルの生成のための積層造形技術の適用は、客観的で正確な参照のための標準化された方法論を開発する新しい機会を提供し、それによって科学研究と実用的な植物育種の両方に利益をもたらします」
チームは、レーザーベースの光検出と測距(LiDAR)技術を使用してモデルのデータを収集し、Faro Focusシステムで甜菜をスキャンして、12の角度から3Dデータを生成した。その後、チームはPrusa i3 MK3S+ 3Dプリンターを使用して、PETGの等身大モデルを製造している。
このモデルは最初に実験室で、次に現場においてテストされることになった。これらのモデルは3Dプリントを使用して簡単かつ正確に作成できるため、チームは「3Dプラントフェノタイピングで標準化された参照アプローチが可能になる」と述べている。
温室やフィールド実験において観察された甜菜の3Dモデル(ボン大学)
今後の展望として、この研究は低コストのフェノタイピングソリューションが必要な米やアフリカの孤児作物などの他の作物へと発展していくことになるという。
現在、猛暑日が続いている日本も例外ではない。この気候変動が農業へ与える打撃は単なる懸念としてではなく、すでに現実のものとして日本の農家を悩ましている。気候変動を食い止める努力も必要だが、一方でこの気候変動にいかに対応していくかということもまた大きな課題だろう。
参照論文
https://academic.oup.com/gigascience/article/doi/10.1093/gigascience/giae035/7695669?login=false