サポート柱に関する6つの大原則
礼に始まり礼に終わる。どうも合氣道初段 SK本舗の広報エリナです。
男の長髪は認めませんが、女装子は許します。おすおすっ!
3Dプリンターのモデリングにおいて、すごく重要なポイントの一つにサポート柱(サポート材)がある。どんなに造形物そのものを完璧にモデリングしても、このサポート柱による適切な支えがなければ、ガラガラドッシャ〜ン、ヒュ〜ドロドロ……、そう、うまく出力されないことがあるのだ!
と、偉そうに書いてしまったが、私とてサポート柱のイロハについてはてんでさっぱり。なんせ白帯だからな。というわけで、今回はこのサポート柱について学んでみたいのだが、実はそのためにうってつけの記事を発見したのだ。
それはAMERALABS社のサイトに掲載されている「6 Key Principles of 3D Printing Supports that Work」という記事……なのだが、現在は英語版しかない。そこで、和魂洋才の広報エリナ、以下に翻訳を試みたい!
ちなみに、本記事は光造形の3Dプリンター使用を前提に書かれたものだ。もちろん、弊社が取り扱っている「Phrozen Shuffle」は光造形方式。「Phrozen Shuffle」ユーザーは特に必読だ。
某キャプテンの言い回しを借用するなら「サポート柱を制するものは3Dプリンターを制す」。レッツスタディ!
なぜサポート材が必要なのか
まず、SLA 3Dプリンターでの出力にはなぜサポートを使用するのか、その理由を最初にご説明しておきましょう。そこにはさまざまな要素がありますが、それぞれ理解しておいて損はありません。中でも最も重要であろう要素を以下にリストアップしました。
オーバーハング
オーバーハング、つまり上部にいくほど造形物の大きさが大きくなるような形状を出力する際にはサポート柱が必要になります。これはSLAに限ったことではなく、どの3Dプリンターにも共通していることです。
ボトムに対して適切な形状を保つため
造形プレートに対して、より接着性を高めた状態で出力する場合、造形物の下層をより強く硬化するという方法が一般的です。しかし、これは露光時間が増加することになるため、ボトムを分厚くさせてしまい、レイヤーのガタガタを目立たせてしまう可能性があります。この補正のために造形物にアタッチメントレイヤーとサポート柱を配置することがあります。
造形方向の調整を行った際に断面積を均一に保つため
レイヤーの断面積を均一に保つことは重要です。きちんと均一に保てないとレイヤーのガタガタができてしまいます。その上で、様々な方向調整が行われます。この際、造形物を所定の位置に保持するために、サポート柱が必要になります。
正しい寸法を保つため
Anycubic Photon、Wanhao、Peopoly Moai、Phrozen Shuffleなどの最も人気のあるボトムアップスタイルのプリンターには、FEPまたはPDMSレジントレイがあります。各層が硬化した後、FEPまたはPPDMSからの分離力が印刷物に大きな圧力をかけます。その結果として、さまざまな変形、寸法の乱れ、グリッチなどが生じる可能性があります。造形物のより繊細な部分をサポート柱により強化することで、こうした失敗の可能性を抑えることができます。
上記は一例ですが、さまざまな要素を考慮するなら、造形物の周囲には多くのサポート柱が必要になる可能性があると言えるのです。
潜在的リスクと問題点
さて、造形物全体をサポート柱の上に置くという方法には、潜在的な失敗のリスクもあります。個々のサポート柱の設定に関しては多くの数値がありますが、特に重要な数値はサポート材の先端部分の直系になります。
より小さな先端直径(基本0.3mm未満)に設定した場合、サポート柱から取り外しやすく、表面の傷も最小限に抑えられますが、強度は弱くなってしまいます。 逆に、より厚い先端直径(基本0.4±0.5mm未満)は強度こそ高いものの、サポート柱の取り外し後に跡が残ってしまいます。
サポート柱の弱点は、通常、基本的なボトムアップタイプの3Dプリンターの作用、すなわちFEPフィルムから新たに印刷されたレイヤーが剥離していくという作用に由来します。 その剥離作用の力は非常に高いです。 その力は新たに「作られた」レイヤーの断面積に大きく依存し、面積が大きいほど、剥離力は高くなります。
そしてこの剥離が出力の成功と失敗を決める重要な瞬間になります。 出力中、FEPからの剥離力が、サポート柱の上に造形物を保持する力よりもはるかに高くなると、出力は失敗に終わります。3Dプリンターでの出力は何千にも及ぶレイヤーから構成されていることが多く、新しいレイヤーがすでに印刷されているレイヤーに一定のストレスをかけつづけていることを意識しておきましょう。
この点に関して、下記の画像を参照してください。
緑:プレート
黄:弱く壊れやすいサポート柱
赤:接着力の高さゆえに広くなった断面積
青:FEP(フィルム)
このような事態は是非とも避けたいところです。以下で、さまざまな可能性を考慮しながら、より詳細に検討していきましょう。
サポート柱の6つの主要原則
上述したリスクを解決するための方法を可能なかぎりで考えていきましょう。一見すると、サポート柱の密度を高めたり、先端の直径を大きくすれば、失敗を回避できるような気もします。部分的には正しいと言えますが、答えはそれほど単純ではありません。
また、多くの方は過去の経験と自分の好みに基づいて、独自のやり方を選択していることかと思います。たしかに、この問題の解決においては、普遍的に正しい方法というのは存在しません。全ての3Dプリンターはそれぞれ独特だからです。
とはいえ、成功率をより高めていくためには、多くの情報と慎重な計画が必要です。そこで、以下に私たちが私たち自身の経験に基づいて作り上げたガイドラインをご提供致したいと思います。それは大きく6つの原則からなります。
1.サポート柱は厚い方がいい
通常の出力においては、薄いもの(通常0.2〜0.3 mm程)よりも厚いもの、平均0.4〜0.5 mmのサポート柱を使用することをお勧めします。 私たちの経験に基づいて、(Anycubic Photonで使用されているような)高出力の速さ重視で印刷したい場合は、より厚い柱を使用するのがより安定したサポートの方法です。
厚いサポート柱だからといって、配置されるサポート柱が少数でいい、というわけではありません。私たちは経験的に、レジン使用の3Dプリンター出力において、優れた成功率と優れた品質を得るためには、多くのサポート柱を必要とすることを学んでいます。 したがって、サポートの先端を密度によって調整する必要があります。
しかし、状況によってはサポート柱の先端を非常に薄くしなければならないこともあります。たとえば、非常に複雑なオーバーハングのモデルを出力するような場合です。 そのような状況では、先端を薄くする他に選択肢はありません。 それでも、以下の他の戦略によって、出力の成功率を高めることはできます。
2.高密度/中密度でサポートする
サポート柱を使用する際、表面にはどうしても跡が残ります。それが嫌だから、サポート柱を使わないという方もいるでしょう。ただ、いずれにしても、作品の表面を滑らかにするためには、紙やすりで表面を磨く作業は欠かせません。サポート柱をより多く使用することで追加される研磨作業時間はさほど長くありませんが、成功率は劇的に高くなる可能性があります。
あるいは、表面上の美しさを追求しない場合の出力に関しては、より強くサポートされるような方向での出力をするという選択もあります。基本的に、中密度から高密度で配置するといいでしょう。これによって素晴らしい成功率を得るかもしれません。
ただし、密度が上がれば、そのぶん材料の消費量も増えますし、サポート柱の取り外しが難しくなる場合もあります。
3.ソフトウェアを賢く利用する
サポート柱の質は、選択したソフトウェアパッケージによって大きく異なってきます。Autodesk Meshmixerのようなプログラムを使用すれば、サポート柱のほとんどすべての数値を修正することが可能でしょう。さまざまな設定オプションを試して実験してみることで、自分の設定に最適な方法見つけることができます。
必ずしもメーカーが提供するオリジナルの3Dプリンター出力のソフトウェアを使用する必要はありません。 STLを他のソフトウェアパッケージにインポートしたり、サポートを追加したり、更新されたSTLファイルをエクスポートしたりし、出力しているソフトウェアでそれを使用したりすることができます。(SK本舗ではFormware3Dを推奨しています)
ここで重要な点が1つあります。 自動サポート生成に完全には頼り切らないようにすべきです。 そのような自動機能が完璧とは言えません。もちろん、最初の出発点としては使用することができますが、より成功率を高める上では、さらなる分析と手動による調整を行う必要があるでしょう。ここは非常に重要なポイントです。
4.相互接続サポート
これは見落とされがちなポイントです。サードパーティ製のソフトウェアを使用している場合、サポート柱を個別に配置するのではなく、下の画像のように相互にブリッジできるようにしてください。
サポート柱の間をこのように接続することにより、サポートに失敗してしまう可能性が大幅に減少します。 この技術は、破損や損傷を起こしにくい、より堅固なベースと二次サポートの組み合わせを作り出す技術です。 しかし、それはまた同時に、材料を多く消費することも意味します。
5.レジンの特性を考慮する
出力においてどのレジンを選択するかということは重要な課題になります。 できるだけ少ない数のサポート柱によって出力物を形成しようとしている場合は、硬度の高いレジンのほうが良いでしょう。
AMD-3 LEDのようなレジンは、注意深いサポートと、そして先端が小さいサポート柱を要求するような、ディティールの複雑なモデルのために特別に設計されています。 より硬いSLA 出力用のレジンは、FEPフィルムからの分離作用においても大幅に曲がることはありません。 出力モデルの繊細な部分でさえもその剛性は確実に保持されます。
一方、柔軟性のあるレジンは使用する場合、異なる戦術が必要となるかもしれません。 そのようなレジンは、造形中の柔軟性を補うために、より多くのサポート柱とより先端を厚くすることで対応するとよいでしょう。 さらに、相互接続されたサポートと組み合わせると、優れた造形品質で納得の成功率となるはずです。(SK本舗で販売しているWHレジンはこちらの部類に属します)
6.FEPフィルムの状態を良質に保つ
最後になりましたが、FEPフィルムの状態というのはとても重要です。新しくて新鮮なFEPフィルムの方が、しばらく時間が経過したものよりも良い状態で造形ができることは明らかです。 容易に出力ができると想定していたにもかかわらず予想外の失敗が発生し始めた場合は、まずFEPフィルムを確認してください。
FEPにたくさん傷があったり、曇っていたり、ゆがんだりしている場合は、積極的に新しいものを入手して使用してください。 また、シリコン製のスパチュラを使うようにし、FEPに鋭利な道具を当てることは避けるようにしてください。
そして、レジンが最もムダになるのは、出力が失敗したときに他なりません。コストを考慮してサポート柱のような安全対策を加えることは躊躇する、といったようなことは避けた方が良いでしょう。
〇和訳用元URL
いかがだっただろうか? サポート柱はまさに縁の下の力持ち、3Dプリンティングにおける影の主役であるということをご理解いただけたのではなかろうか。う〜ん、奥深い! やはり、「サポート柱を制するものは3Dプリンターを制す」のだな。
皆さんも是非この6つの大原則を参考にして、出力の成功率をますます高めていって欲しい。
以上、広報エリナでした、おすおすっ!