金属3Dプリンターの導入費用、ランニングコストはどれくらい?
金属3Dプリンター導入のメリットとは?
様々な業界の製造現場に浸透しつつある金属3Dプリンター。
かつては金属3Dプリンターと言えば、一千万円はくだらないと言われるほど高価格だったが、現在ではお手頃価格の金属3Dプリンターも増えてきている。
製造業にとって金属3Dプリンターの導入がもたらすメリットは様々ある。
詳しくは以前にまとめた以下の記事を参照していただきたいが、概要だけをここにまとめると、金属3Dプリンターは主に
①治具の製造
②従来工法では造形困難だった複雑な形状のオブジェクトの造形
③型が古くて金型が残っていない部品の造形
などに役立つと言われている。
金属3Dプリンターだからこそできることとは?|導入のメリットを考える
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dmetal2023?_pos=1&_sid=eefab547f&_ss=r&fpc=2.1.365.596066bca8c8032d.1688992280000
あるいは、より一般的なメリットとしては、
①生産性の向上
金属3Dプリンターを使用することで、従来の製造方法よりも高速かつ正確に製品を生産することができる。金属3Dプリンターは、複雑な形状や設計の製品を生産することができるため、設計や生産プロセスを簡素化することができる。
②コスト削減
金属3Dプリンターは、製造に必要な材料の量を最小限に抑えることができる。また、プロトタイプを迅速に作成することができるため、生産開始前に問題を特定して修正することができ、開発コストを削減することができる。
③環境への負荷が少ない
従来の製造方法では、製品を製造するために大量の材料が必要で、大量の廃棄物が発生するため、環境に負荷がかかりやすい。その点、金属3Dプリンターは、材料の使用を最小限に抑え、廃棄物を削減することができる。
などの点が挙げられる。
もちろん、プロトタイプの迅速な製作や、製品のカスタマイズ性の向上においても、金属3Dプリンターは大いに資するだろう。
こうした様々なメリットがあるため、現在、金属3Dプリンターの導入について悩まれている企業さんも多くいらっしゃると思う。
ただ、導入にあたってまず気になることといえば、その費用感だろう。果たして金属3Dプリンターを導入するためにはどれくらいの費用が必要なのだろうか。
金属3Dプリンターの導入費用は?
上述したように、近年、比較的安価な金属3Dプリンターも増えてきている。ただし、その価格の幅は広く、造形方法によっても、大きく変わってくる。
現在、金属3Dプリンターは安価なものでは10万円程度、高価なものでは1億円以上となっている。
最も安価な金属3Dプリントの方法はFDM、つまり金属フィラメントを使用した溶融堆積モデリングのマシンを使用することだろう。デスクトップ3Dプリンターで使用するための金属フィラメントの登場は、金属3Dプリントへのアクセスの敷居を格段に下げた。
何より通常のFDM3Dプリンターで簡単に印刷できることが嬉しい。ここでいう「通常」とは、少なくとも 180ºCから220ºCの必要な温度に達することができる加熱ベッドと硬化鋼ノズルを備えたFDM3Dプリンターのことだ。
先ほど最も安価な金属3Dプリンターは10万円程度だと書いたが、原理的には10万円以下の3Dプリンターでも金属フィラメントを用いれば金属3Dプリントは可能なのだ。
金属3Dプリンターの後処理とは?
金属3Dプリンターを10万円で導入できるなんてすごい時代になったものだ。
ただし、留意すべき点はある。まず重要な点として、金属フィラメントを使用した3Dプリントでは、使用可能な金属部品を3Dプリンターから直接出力することはできないということだ。
金属フィラメントで出力された部品は、後処理と呼ばれる炉内での剥離工程と焼結工程を経る必要がある。この後処理を自社で行えない場合は専門業者に依頼することになり、ここにもまた別途の費用が発生することになるのだ。一般に後処理委託費用は1kgあたり4~5万円となっている。
ちなみに金属フィラメントを使用しないタイプの金属3Dプリンターであっても、一台で後処理の全てを行ってくれるプリンターは存在しない。少なくともクリーニングは必要だ。そのため、金属3Dプリンターを導入する上では、追加の機器を購入する必要があるということも知っておく必要がある。
小金属3Dプリンターのランニングコスト
また、金属フィラメント自体のコストも考慮しておく必要がある。
たとえば金属フィラメントのコストはステンレススチールで1kgあたり、約2万円〜6万円程度となっている。チタンの場合は1kgあたり10万円以上となる。つまり、素材のランニングコストが3Dプリンター本体のコストをすぐに上回る可能性が高い。
Ultrafuse® 316L金属フィラメントMetal(3,000g/ フィラメント径:1.75mm)
実は素材コストの上では金属フィラメントよりも金属粉末の方が安い。長い目で見ると一般的なレーザー焼結法(SLS)の金属3Dプリンターを用いた方がコストを抑えることができるかもしれいのだ。ただ、SLSの3Dプリンターは安いものでも500万円程度と、導入にあたってはそれなりの費用が必要となる。
少なくとも金属3Dプリントのランニングコストは、樹脂を素材とする場合と比較して、かなり高額になってしまうことは認識しておく必要があるだろう。
金属3Dプリントの代行サービス
このように金属3Dプリントには現状でどのような方法を用いても恒常的に使用する上ではいまだそれなりの費用がかかってしまう。
そのため、コスト面で自社への導入が難しい企業向けの金属3Dプリントサービス請負業者も現在少しずつ増えてきている。
こうした出力代行サービスを利用することのメリットとしては、必要な時にその都度コストを計算することができるということ、また初期投資や金属3Dプリンターを操作するオペレーターの雇用を行う必要がないということが挙げられる。
以下、金属3Dプリントの出力代行サービスを行なっている代表的な企業をいくつか紹介しておこう。
株式会社J.3D
https://j3d.co.jp/
株式会社SOLIZE
https://www.solize.com/service-solution/3dprinting/3dprint/3dprinting_metal/
オリックス・レンテック
https://www.orixrentec.jp/3dprinter/service/3d_printing.html
繰り返しになるが、金属3Dプリンターを製造現場に導入することによって得られるメリットは非常に大きい。一方で金属3Dプリンターの導入と使用には相応のコストもかかる。どのような用途でどの程度使用するかを吟味した上で金属3Dプリンターを最適な方法で利用することが望ましいだろう。