製造ラインで欠かせない「治具」を3Dプリンターで製作することの様々なメリット
3Dプリンターと治具
現在、様々な商品の製造過程において3Dプリンターが欠かせないツールとなっている。
商品のパーツの製造は言うまでもないが、もう一つ、製造過程において重要なあるものを出力する上で、3Dプリンターが非常に役立てられている。
そう、治具(じぐ)である。
おそらく、製造業についている人以外にとって、治具は聞きなれない言葉かもしれない。また一口に治具といっても用途によって大きさや形状もさまざまなものがある。
3Dプリンターの導入は、この治具の製造に非常に役立てられている。
ここではまず製造業において重要な治具の役割、使われ方について紹介してみたい。
そもそも治具ってなに?
治具とは製造物を加工する際に、加工されるものを固定し、加工の案内をしてくれる補助的な役割をもった装置であり、一般に「補助工具」とも言われる。
たとえば底面が円形になっていたり局面になっていたりするオブジェクトを、フラットな作業台の上に置いてネジ止めをしようという場合、オブジェクトを安定した状態に保つのが難しくなる。こうした時にそのオブジェクトの底面にフィットする台を使用すればオブジェクトは安定し、作業がスムーズになる。治具とはその際用いられる台のことだ。
この場合、治具は作業の安定化を目的として使用されているが、その他にも治具は商品の品質を安定させたり、作業効率の上昇のためなど、様々な用途で用いられる。
一般に治具は加工するものに合わせて毎回作られることになるため、量産販売はされていない。技術者や専門メーカーが、用途に合わせて一つずつ作っていくケースが多い。
以下では製造過程で欠かすことのできない治具の種類を見ていきたいと思う。
治具の種類
大別して治具は二種類に分けることができる。
①加工ラインで手作業に際して使用される様々な治具
②機械加工の際に工作機械にオブジェクトを固定する治具
まず①に関しては以下のようなタイプの治具がある。
・オブジェクトを加工、測定する際にオブジェクトを安定させるもの
・部品同士を貼り付ける際に位置などを決定するもの
・他の部品を挿入する際にその挿入をガイドするもの
・塗装、シーリングの際のマスキング
これらの治具は目的に応じて、形状も材質も全く異なる。柔らかい樹脂状のものもあれば、丈夫な金属状のものもある。あるいは治具そのものが装置である場合もある。
②に関しては、ステンレスや金属などの丈夫な素材で作られる場合がほとんどだ。加工の種類によって大きさも様々であり、動かすのにクレーンなどを用いるほど大きい場合もある。オブジェクトの固定もネジなどでしっかりと固定される必要がある。
いずれにせよ、工作機械や工具などと同じように、治具は製造業を支える非常に重要な役割を担っている。
3Dプリンターで治具を製作するメリット
さて、現在、この治具の製作にも3Dプリンターが大いに役立っている。では、3Dプリンターで治具を製作することには、どのようなメリットがあるのだろうか。
・小ロットに対応しやすい
まず、3Dプリンターを用いることで、小ロットの製造にも柔軟に対応することが可能になる。製造現場では多種類・小ロットの治具が必要とされるが、これらをひとつひとつ手作業で製造した場合、時間もコストも非常に高くついてしまう。その点、もとより小ロット製造に適したツールである3Dプリンターが非常に役立つのだ。
・微調整や改善がしやすい
次いで、治具の不具合や微調整にも試作品レベルでフレキシブルに対応できるという点がある。実際に治具を作ってみたものの微細なズレなどがあったり、よりよくするための改善点が発見される場合がある。3Dプリンターで治具を製造する場合、こうした状況にも試作の段階で対応することが簡単にできる。
・軽量素材を使用することができる
3Dプリンターを用いることで治具自体も軽量化できる。これは3Dプリンターが中空構造を採用することができるからであり、また素材のバリエーションも豊富であるからだ。これは作業が効率的になるばかりではなく、ヒューマンエラーの防止にも効果がある。
・時間短縮
治具を機械加工で製造する場合と比較した際、3Dプリンターを使用すると製作時間が大幅に短くなる。また、治具の製造現場が遠隔地である場合、3Dプリンターであれば、3Dデータを送付するだけですぐに現場での治具製作に反映することができる。
治具の製作に3Dプリンターを活用しよう
このように製造工程において欠かせない治具を製作する上で、3Dプリンターを活用することで得られるメリットは非常に大きい。
一般に治具を3Dプリンターで製作した場合と機械加工で製作した場合とを比較すると、納期において前者であれば1日程度、後者であれば7日程度と大きな差がある。
またコストに関しても、前者の場合は材料費のみで済むところ、後者であれば外注費としての人件費なども必要とされてしまうため、どうしても高くついてしまう。
製造ラインにおいてのコストカットをご検討されている方は、是非とも3Dプリンターを導入してみてはいかがだろうか。