今3Dプリンターを買うなら光造形機で間違いない? 熱溶解積層方式と比較しながら考察する
あらためて基本に立ち返る
今回はあらためて基礎をおさらいする形で、「光造形3Dプリンターとは何か」「その魅力と他の造形方式との違い」について、解説したい。
SK本舗ブログをお読みいただいている皆さんには釈迦に説法かもしれないが、何事も初心は大切。足元を見直す意味も込めて読んでいただけたら幸いだ。
比較対象としたのは熱溶解積層方式の3Dプリンターだ。果たして、今買うならどっちがおすすめなのだろうか。
1.光造形とは何か
まず光造形方式3Dプリンターとは何か。これは液体状のレジン(樹脂)に紫外線を当てることで硬化し、オブジェクトを造形出力する機能を持つ3Dプリンターのことだ。
長らく一般向け3Dプリンターでは主流とされてきた熱溶解積層方式に対して、光造形方式が一般に普及したのはここ数年のこと。その原因は光造形が以前まで比較的に高価だったことがあるが、現在は弊社取扱の商品を始め、安価で高性能な光造形機も増えている。それゆえ、一気に市場においてプレゼンスを高めるようになったのだ。
もとより光造形機が誕生したのは1987年。つまり今から35年前のことだ。当時はラピッドプロトタイピングと呼ばれ、主に試作品などの製造を速やかに行えることが喧伝された。一般に「世界で最も歴史のある3Dプリンター」と呼ばれており、すなわち今日の光造形ブームは3Dプリンター界においては原点回帰のようなものでもあるのだ。
2.光造形の魅力
光造形機の魅力はなんといっても出力物の滑らかで美しい表面にある。
これは他の方式に対して明らかに光造形が優っているポイントで、要するに精度が極めて高いのだ。熱溶解積層方式などで懸念される「反り」などの心配もなく、かつ熱溶解積層方式では目立ちやすい積層痕などの心配もいらない。
また造形速度の速さも魅力の一つだろう。たとえば熱溶解積層方式と比較すると、その差は歴然。特に複数のオブジェを出力するという場合、熱溶解積層方式であれば、単純にかかる時間が倍々で増えていくところ、光造形に関してはビルドボリュームの範囲内であれば、ほぼ一つでも二つ同時でもかかる時間に変化はない(ただ高さのある造形物に関しては熱溶解積層方式の方が速いケースもある)。
なお、しばしば聞くのは「音の小ささ」だ。光造形方式は造形中の音が熱溶解積層方式と比較しても極めて小さいため、夜間での使用にも特別な配慮がいらない。これもまた魅力の一つと言える。
一般に光造形のマイナスポイントとして、本体の相対的な高価さと素材となるレジンが熱溶解積層方式の素材であるフィラメントに比較して入手がしづらいというポイントが指摘されてきたが、これは現在、ほぼクリアーされている。実際、SK本舗ではヴァリエーション豊かな本体とレジンを安価で提供しており、いずれの商品も性能的に優れている。
3.光造形の欠点
前項目において、現在では光造形のマイナスポイントとされてきたポイントが基本的にはクリアーされていると書いたばかりだが、光造形機特有の苦労もある。
そのひとつは「後処理」だ。
光造形機で出力を行う場合、造形物に残ったレジンをアルコールで洗浄しなければならない作業がある。これは熱溶解積層方式には必要のない手順であり、3Dプリント時のひと手間として欠点と言えるべき点かもしれない。
ただ、現在は「水洗いレジン」など、アルコールを用いず水で洗い流すことが可能なレジンもあるため、この作業の煩雑さは改善されてきている。後処理が面倒だという理由で光造形を避けている人がいるとしたら、端的に「もったいない」だろう。
またもうひとつ、「安全性」という観点においても、光造形は相対的に注意が必要だ。もちろん、きちんと取扱のルールを守って使用するぶんには安全性はなんの問題もないのだが、素材であるレジンには触れるとアレルギーを発症する可能性などがあるため、その使用にあたっては手袋の着用が欠かせない。
まだ小さなお子さんがいるような家庭で使用される場合は、お子さんがレジンを勝手に触らないように配慮する必要があるだろう。
最後にもう一点、匂いの問題がある。一般的にフィラメントよりレジンの方が匂いが強い傾向はあるが、これは商品によってだいぶ差がある。一概にどちらが良いとも言えないところだ。いずれにしても、化学製品を使用する以上、使用時には換気を行うなどの最低限のケアを心がけておけば、問題はないだろう。
4.光造形の種類
さて、ここまで光造形の魅力と欠点を、主に熱溶解積層方式との比較において見てきたが、実は一口に光造形といっても種類がある。
その出力方式には大きくSLA方式とDLP方式がある(その他にもLFS方式などもある)。
SLA方式は素材となるレジンに点状のUVを当てて、土台から少しずつレジンを硬化し、積み重ねることでデータを出力する方法だ。細かくUVを当てていくため複雑で細かいオブジェでも、データ通りに出力することができる。精度は非常に高いが、速度においてDLP方式に劣るとされている。
DLP方式は素材となるレジンを下から面状のUVによって硬化し、ミルフィーユのように層にしてデータを出力する方法だ。こちらはUVを当てる範囲が大きいため、スピード感のある造形が可能になる。ただ、どうしても解像度を均一に保つことが難しく、造形範囲が広ければ広いほど解像度は荒くなってしまう(逆にいうと造形物が小さければ速度と解像度を両立できる)。
要は解像度のSLAと速度のDLPという形で認識しておけば間違いないだろう。
5.2022年におすすめの光造形3Dプリンター
さて、あらためて光造形3Dプリンターについて見てきたが、総じて言えることは、子供に対する安全性などの特定のポイントにこだわらない限り、今日、3Dプリンターを選ぶなら光造形が断然おすすめだと言える。とりわけ、3Dプリンターを使って高精度のものを作りたいと考えている方は、まず光造形を選んで間違いない。
では、どんな光造形機を買うといいのだろうか。最後にここでは2022年におすすめの光造形3Dプリンターをしておきたい。
・Phrozen Sonic Mini 8K
大人気のPhrozen Sonic Miniシリーズの最新機種。今回の8Kではプロの彫刻家が作成した繊細な手作り作品を超えるほど、非常にリアルなテクスチャ、毛穴、しわも造形可能だ。衝撃の解像度22μmは出力精度を追求する方には最適。もちろん「Sonic」シリーズ、出力速度も非常に高い。
商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/all/products/phrozen-sonic-mini-8k_sonicmini8k
・Elegoo MARS 3
もはや低価格帯の光造形機においては定番となりつつあるElegoo MARSのversion3。今回はElegoo初のULTRA 4K MONO LCDが搭載され、さらに性能がぐっと高まっている。正直、この価格帯でこの性能はElegooだけ。スライサーソフト「ChituboxxPro」の1年間分の無料トライアルがセットなのもうれしい。
商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/all/products/elegoo-mars3
・Phrozen Sonic Mega 8K
大きなオブジェクトを出力したいという人にオススメなのは、巨大なビルドボリュームを備えたPhrozen Sonic Mega 8Kだろう。価格帯は上記した二つのマシンよりも高くなるが、33cm(幅) x 18.5cm(奥行) x 40 cm (高さ)の印刷範囲はありがたい。加えて8Kの驚異の解像度。他の大型3Dプリンターの2倍のディティールが表現可能だ。
商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/all/products/phrozen-sonicmega8k
・Phrozen Sonic Mighty 4K
大人気のPhrozen Sonicシリーズの大型高解像度版。速度、解像度、サイズ全てを兼ね備えた、まさにオールマイティな一機。20(幅)×12.5(奥行)×22(高さ)cmの造形ボリュームにして、このお値段は嬉しい。
商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/all/products/phrozen-sonicmighty4k
・Elegoo Saturn S
初心者にオススメしたい機種といえば、こちらのElegoo Saturn S。大人気を博したSuturnの最新版であり、ビルドボリュームが一回り大きくなっているところが特徴だ。さらに新たに消臭機能が加わり、嫌なレジン臭が大幅にカットされている。家庭でも使いやすく、お値段も手頃。これから3Dプリンターを始めようという人には最適だろう。
商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/all/products/elegoo-saturn-s