金属3Dプリンターの民主化に向けて|Meltioの取り組み
いまだ一般人には手が届かない金属3Dプリンター
金属3Dプリンターは一般に工業用3Dプリンターとして認識されている。
金属という重厚な素材を扱う3Dプリンターであるから、ということも一つの理由だが、それ以上に金属3Dプリンター本体、及び関連ソフトウェアの高価さが、一般ユーザーを遠ざけている。
出力方式によっても違いはあるが、おおまかな価格帯としては依然として数千万円以上。FDM方式の金属3Dプリンターであれば比較的安価ではあるものの、バインダー除去や焼結を行う費用を考えれば、やはり一般ユーザーには簡単に手が出せるものではない。
知られざる金属3Dプリンターの世界~現状と基礎知識~
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実際、3Dプリンターの通販事業を行なっている弊社においても、現状で金属3Dプリンターは取り扱っていない。本来なら様々な素材を用いた3Dプリントの機会がより広い層に提供されるべきではある。しかし、価格帯を考えると難しいのだ。
また、高価であるだけでなく、金属3Dプリンターはオペレーションも非常に難しいと言われている。そのため、一般ユーザーどころか中小企業にとっても、その導入は簡単なことではない。専門のオペレーターも一緒に雇用しなければならないとなれば、二の足を踏むのも無理はないだろう。
せっかく素晴らしい技術があるのに、そのポテンシャルが発揮されうる場が、ある一部に限られてしまっているというのは、端的にもったいない。果たして、金属3Dプリンターは今後も手の届かない高嶺の花であり続けるしかないのだろうか。
金属3Dプリンターを民主化するために
こうした状況を打破し、金属3Dプリンターを民主化したい、つまりより広いユーザーへと開放したい。そうした目標を掲げて研究開発を進めている企業も存在する。
たとえば、2019年に設立されたスペインの多国籍レーザー金属堆積メーカーMeltioだ。これまで同社は、安全で信頼性の高い、手頃な価格の金属3Dプリンターの開発に熱心に取り組んできた。とりわけ、同社が目下注力しているのは、高価で操作が難しい金属3Dプリンター用ソフトウェアの改革だ。
「金属付加製造は、歴史的に複雑で高価なソフトウェアと関連付けられており、非常に専門的であるため、ごく少数の人々の使用に限定されていたことに注意する必要があります。Meltioでは、新しいソフトウェアの発売により、金属3D印刷を民主化するための学習時間を促進および短縮し、企業内のさまざまなプロファイルでソフトウェアにアクセスして簡単に使用できるようにします」
そう語るのはMeltioのCEOであるÁngel Llavero氏だ。
画像:Meltio
これまで同社の金属3DプリンターであるMeltio M450のユーザーは、ツールパスを作成するためにサードパーティのFFFスライサーを使用しなければならなかった。これは操作が非常に専門的で、習得するためには非常に時間がかかる。その障壁を突破しようと、同社が行なったのは独自のソフトウェアMeltio Horizonの開発だ。これによって同社は、ユーザーにとってより簡単に、カスタムプリントおよび材料プロファイルと独自の機能を提供することを試みている。
この新しいソフトウェアソリューションでは、印刷速度、サポート材料、線幅、層の高さなど、他のFFFソフトウェアで使用される従来のスライスパラメータに加えて、レーザー出力やホットおよびデュアルワイヤ設定などの材料固有のパラメータを提供しているそうだ。操作の説明も充実した形で提供されるため、特別な学習を経ることなく簡単に使用を開始できる形になっているらしい。
おそらくは、このソフトウェアの登場によって、導入、運用にかかるオペレーションコストは大幅に下がる。本体の価格革命には至っていないものの、金属3Dプリンターの民主化に向けて一歩前進であることは間違いない。
果たして、金属3Dプリンターを一般向けユーザーが気軽に使える日が訪れるのは、まだしばし先のようだ。ただ少しずつ着実に、金属3Dプリンターは私たちの元へと降りてきている。