クリックだけでドローンを出力? 複雑な機械をまるっと3Dプリントする「Laser Factory」が爆誕
複雑な構造の機械を「完成」した状態で出力!?
3Dプリンターはこれまでに様々なものを出力してきた。特に工業分野においては、自動車をはじめ様々な精密機械の製造プロセスに、いまや3Dプリンターはなくてはならない存在となっている。
ただ、そうとはいえ、3Dプリンターにはまだ課題がある。3Dプリンターは電子機器のパーツを出力することはできても、それらを最終的な完成品へと至らせるためには、結局、その後自らの手で組み立てる必要があるのだ。
シンプルな構造の模型品などであればいざ知れず、精密機器などに関してはこの組み立てにも専門的な知識と技術を要する。すると結局、いかに「ものつくり革命」と言ってみても、そうした複雑な構造を有する対象に関していえば、既製の完成品を購入するほかなくなってしまうのだ。
しかし、その3Dプリンターの限界がついに破られようとしている。2021年2月、アメリカはMITの研究チームが、複雑な構造の機械を完成した状態で出力する、夢のような3Dプリントマシンを開発、公開したのだ。
レーザーファクトリーは次世代の「ものつくり」マシンとなるか
2月8日、MITのコンピューター科学・人工知能研究所が公開した最新のマシンは、その名をレーザーファクトリー(Laser Factory)という。一体、このレーザーファクトリーとはいかなるマシンなのか。百聞は一見にしかず。まずは以下の動画をご覧いただきたい。
お分かりだろうか。このレーザーファクトリーにおいては、ユーザーの指示に従って、構造品の造形だけでなく部品の組み立ても行うことができるのだ。システムは、ソフトウェアツールキットと、ハードウェアプラットフォームの二つの部分からなり、ユーザーは1つのステップでそれらを同期的に動作させることで、たとえばドローンのような機械を出力することができる。
映像では出力と同時にドローンが飛び立っていく様子を確認できたはずだ。出力までの流れとしては、まずユーザーがパーツライブラリから部品を選択して配置することでデバイスを設計、そしてPCB上の電子部品間の電気の流れを可能にする回路トレース上に描画、その後、2Dエディタを使って、バッテリーやプロペラを追加したり、電気的接続を形成するためにそれらを配線したり、ドローンの形状を設定するための周囲の描画を行ったりしていくことで、ドローンの形状を完成させていく。
開発チームによれば、このレーザーファクトリーとは「3Dプリンターやレーザーカッターのような広く利用可能な製造プラットフォームを活用することで、これらの機能を統合し、機能的なデバイスを1つのシステムで製造するためのパイプラインを自動化した初めてのシステム」であり、今回公開された情報は5月に開催されるACM Conference on Human Factors in Computing Systemsの予告編的な位置付けであるとのこと。
要するに、レーザーファクトリーとは、これまでそれぞれバラバラに進化していた3Dプリント技術を統合させ、より広範囲の3D形状を作成することを目指したシステムであるというわけだ。
画像引用:Massachusetts Institute of Technology
現在ではシステムを組むためには専門的な知識が必要になるが、開発チームは「将来的には、ソフトウェアをインストールするためにロボット工学の学位は不要になるだろう」とも語っており、今後この技術を一般ユーザーに向けて展開していくための開発研究を進めていくという。
こうなるとモデリングの概念はもはやエンジニアリングと同等の意味を持つようになってくる。そして、3Dプリンターもまた今後は「3Dファクトリー」として進化していくのかもしれない。