ウクライナではすでに277校もの学校が破壊|3Dプリント建築技術は戦地の暮らしを建て直すことができるか
ウクライナ国内においては2000校もの学校が戦争の被害を受けている
2022年2月に始まったロシアとウクライナの戦争は、開戦から1年半近くが経過したものの休戦の機会を逃し続け、その出口を見失っている。
なにより心配されるのは戦地に暮らす人々たちの疲弊だ。空襲の不安が常にある中では心穏やかな暮らしは行えない。加えて街中には多くの戦争の爪痕が生々しく残されている。たとえば、子供達が通う学校もまた今回の戦争で多くの被害を受けている。
これまでにウクライナ国内においては2000校もの学校が戦争の被害を受けており、およそ277校が破壊されてしまった。学校を失うことは、子供達にとって学ぶ場を失うことに等しく、ウクライナのその世代の子供達にとって、その損失はあまりにも大きいと言わざるを得ない。
COBODが3Dプリント建築によってリヴィウに学校を建設
こうした状況に対して諸外国による3Dプリント建築技術を用いた支援がすでに始まっている。
たとえば先日、建設3Dプリント会社COBODは、ウクライナのリヴィウにある学校を3Dプリントするプロジェクトへの参加を発表した。建設される学校は平屋建てで表面積は370平方メートル。Team4UAとCOBODの BOD2プリンターの支援により、戦禍から逃れる難民に向けてサービスを提供するとのことだ。
なお、3Dプリント材料の99%は地元で調達され、すべての建設資材の90%も同様に地元で調達されるという。建築素材の出力はデンマークの会社3DCP GroupのCOBODマシンで行われることになっている。
この野心的なプロジェクトは、紛争が続く中、非営利のテクノロジーおよび人道支援の新興企業 TEAM4UA によって開始され、資金提供を受け、市当局や現場で 3D テクノロジーを導入している他の企業と協力して行われているものだ。今回のCOBODの参加は、このプロジェクトのさらなる展開を助長するものになるだろう。
普通の生活を取り戻すために3Dプリント技術を役立てる
とはいえ、先述した通り、すでにウクライナでは277校もの学校が破壊されており、まだまだ多くの3Dプリント建築が行なわれる必要がある。Team4UAの創設者であるジャン・クリストフ・ボニスは今後の展開について次のように語っている。
「3Dプリンティング技術を用いた学校建設プロジェクトは、ウクライナでの全面戦争の影響を受けた子供たちに教育へのアクセスを提供するとともに、リヴィウの国内避難民の子供たちに包括的な空間を作り出すことを目的としています。学校やその他の教育機関の破壊は、若い世代から質の高い教育を受ける機会を奪い、彼らの将来と国家の将来に悪影響を与える可能性があります。革新的なソリューションは、この問題をより効率的に、より迅速に克服するのに役立ちます。わずか3~4日間の印刷でどれだけの作業が行われたかを見てください。事実上、印刷の半分はすでに完了しています」
Balbek Bureauのチームいよるイメージ
現状で多くの3Dプリンティング企業はウクライナ支援にはあまり貢献できていない。その中でCOBODの取り組みは、実際に状況に変化をもたらせるために人材と設備を用意している。これまでウクライナにおいては積層造形技術が全く発展していなかった。そこに技術と知識を送り届けることで、学校に限定されていないインフラの修復や医療支援などにも役立てることができるはずだとCOBODは考えている。
もちろん、願うべきは戦争の一日も早い終結である。ただ、復興に取り掛かるにあたって戦中の今から始めることは決して早くない。ウクライナに暮らす人々が少しでも普通の生活を取り戻すことができる一助に3Dプリント技術が役立つならばこんなに幸いなことはないだろう。