3Dプリントスニーカーの新作ラッシュが止まらない! 見たこともない最先端シューズとその製造技術
加速する3Dプリントスニーカー製造
環境コンサルティング会社 Quantis によると、スニーカーの製造は世界の温室効果ガス排出量の 1.4% を占めている。これは靴全体ではなく、スニーカーの製造のみの数値だ。
現在、多くの大手スポーツウェアブランドがスニーカーをより持続可能な形で製造する方法を模索している。その上で3Dプリンターが大いに役立っているということは、これまでも幾度か記事にしてまとめてきた。
HERON01がスニーカーを刷新する? 最先端3Dプリンターシューズに業界が大混乱
https://skhonpo.com/blogs/blog/heron3d?_pos=1&_sid=db5ff5897&_ss=r
ドイツが生んだUMAのような3Dプリントスニーカー|その斬新すぎるデザインが話題に
https://skhonpo.com/blogs/blog/3duma?_pos=2&_sid=db5ff5897&_ss=r
あのイッセイミヤケが3Dプリントフットウェアを発表|日本の「草履」をモチーフに伝統と革新を融合させた名作
https://skhonpo.com/blogs/blog/3dissey?_pos=3&_sid=db5ff5897&_ss=r
バクテリアを用いた生体素材を3Dプリントすることでファッション産業による環境汚染を防ぐ
https://skhonpo.com/blogs/blog/3dbacterium?_pos=4&_sid=2c11ce202&_ss=r
どうやら、その取り組みは昨今ますます加速しているようで、ここ数週間だけでも、最新の3Dプリントスニーカーに関連するニュースが続々と届いている。以下にその一部についてまとめてみたい。
Pangaiaの「作り直されるように作る」最新スニーカー
まず取り上げるのは英国のPangaia(パンゲア)というブランドが発表した次世代の3Dプリントスニーカー「アブソリュートスニーカー」だ。Pangaiaはすでにファッシニスタたちにのあいだではよく知られたブランドであり、あのジャスティン・ビーバーが愛用していることでも知られ、スタイリッシュかつサステナブルであることをテーマに掲げた新鋭ブランドだ。
Pangaiaは今回、3Dプリントシューズの製造技術を持つZellerfeldと提携し、この新しいスニーカー「アブソリュートスニーカー」の製造に着手した。コンセプトは「作り直されるように作る」こと。つまりは再生可能性を重視したスニーカーということだ。
その上で素材として選ばれたのは熱可塑性ポリウレタン (TPU)である。 TPUは何度でも溶かすことができるため、スニーカーの製造後、不要な在庫を抱えることなく、余ったら溶かして最新モデルに切り替えることができる。
現在、購入可能なアブソリュートスニーカーは2つのカラーウェイがあり、価格は約200ポンドとなっている。スニーカーを使用後にリサイクルのためブランドに変装する予定がある場合、他のPangaia製品の25ポンド分のバウチャーが提供されるなど、販売方法の上で画期的な手法が取られている。
デザインはミニマルに洗練されており、カジュアルにもモードにも重用しそうなフォルムとなっている。
PUMAとポルシェデザインの3D MTRX TRAINERS
次に取り上げるのは有名スポーツブランドPUMAの最新スニーカーだ。
今回、PUMAはあのポルシェデザインと協力して3D MTRX TRAINERSという新しいスニーカー作成した。
このスニーカーは、軽量で安定したクッション性のある3Dプリントソールと、カーボンファイバーのディテールが施されたレザー製のアッパーが特徴の高級スニーカーだ。
3Dプリントされたミッドソールは、ポルシェデザインのロゴにインスパイアされたもので、格子構造に加えて、キューブ構造を備えている。さらにエネルギーリターンシステムと呼ばれるものを使用し、垂直方向のエネルギーの83%を前方の動きに変換して伝達する機能を有しているという。
なんでも実験室でのテストでは100万回を超える圧縮サイクルに耐えたとか。Puma自身、「3D MTRX スニーカーは、耐久性、機械的弾力性、引き裂き抵抗、および柔軟性の点でも最高の結果を達成している」と自信をのぞかせている。
価格は430ドルとハイエンドに設定されているが、先端技術を使用した先端機能を備えた、スタイリッシュなスニーカーとくれば、無理もないのだろうか。
Rainsの空気90%のスニーカー「Puffer」
デンマークのレインウェアブランドRainsもまた、最近、Zellerfeldとの提携によって製造した3Dプリントスニーカー「Puffer」を発売した。
目を見張るのは、その独特なデザインだろう。コンセプトは「石の彫刻」。なんでもZellerfeldによればPufferの90%は空気で構成されているという。履き心地も実に良さそうだ。
同社によれば、今回の「Puffer」は、3Dプリントフットウェアの優位性を見事に示しているとのことで、「従来は製造が複雑だった、独自の特大サイズやふくらみのあるエレメントを製造できただけではなく、ボタンを1回押すだけでそれを実現したのです」と、この技術の今後の可能性にも期待を高めている。
現在260ドルで購入可能とのこと。製造方法もさることながら、シンプルにデザインが美しい。是非とも試してみたい。
3Dプリントスニーカーの今後と課題
立て続けに紹介したが、いずれもここ最近のニュース。今後次々とこれまで見たことのないような3Dプリントスニーカーが登場してくることは間違いない。
もちろん、まだまだ課題もある。製造方法はサステナブルなものになりつつあるが、たとえば大手スニーカーブランドのスニーカー製造の現場は相変わらずアジアに集中しており、従来の搾取構造から脱しているとは言い難い。
また、こうした一連の動きに対してグリーンウォッシュであるという指摘もなされている。グリーンウォッシュとは、環境に配慮したイメージを思わせる「グリーン」と、ごまかしや上辺だけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語であり、エコロジーへの意識の高まりを企業が販売戦略に利用することを批判する際に用いられるものだ。
もちろん、そうした矛盾を解消することは簡単ではないだろう。それでも3Dプリント技術を含む先端技術が以前よりも無駄のない製造方法を着実に実現していっている事実は変わらない。3Dプリントスニーカーの今後の展開が楽しみだ。