
3Dプリントされたスキンパッドが人間のような触覚のロボットを一般に普及する
さまざまなロボットシステムに簡単にカスタマイズ可能な3Dプリントスキンパッド
ロボットに人間のような触覚を装備する。そのための費用対効果の高いソリューションを発表して話題を呼んでいるのはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームだ。彼らが3Dプリント技術の力を活用して開発した革新的なソフトスキンパッドは、ロボットに穏やかなタッチを行うことを可能にするのみならず、機械的な圧力センサーとしても機能し、ロボット工学の分野における新しい可能性を示唆している。
伝統的に、ロボット用の触覚センサーは複雑なメカニズムからなり、それゆに極めて高価だ。そのため広範囲での活用が難しく、なかなか一般化してこなかった。しかし、キム・ジュヒョン教授が率いる研究チームは、既製の3Dプリンターを使用して機能的で耐久性のある代替品を安価に生産できることを実証することで、これらの障壁を打ち破ろうとしている。
キム教授によれば「この3Dプリントソフトスキンパッドは、さまざまなロボットシステムに簡単にカスタマイズできる」とのこと。一般にロボットハードウェアは大きな力を持つため、人間と直接対話したり接触する場合には、その安全性に深く留意する必要がある。その点、今回チームが開発した3Dプリントソフトスキンパッドはマシンの安全におけるコンプライアンスを満たし、かつ触覚センシングにも使用できる。3Dプリントされた柔らかな肌が次世代のロボットの新たな皮膚として注目されているのだ。
先端技術を今まで以上に安価で提供するために
この柔らかな肌、つまりスキンパッドは、高度な素材と最先端のデザインの組み合わせにより、その機能を実現している。チームは一般的に入手可能な「Raise3D E2 3Dプリンター」を使用し、熱可塑性ウレタンを素材にこのパッドを3Dプリントしている。特徴は中空のインフィルセクションを包み込む柔らかい外層だ。圧縮によってパッド内の空気圧が変化し、接続された圧力センサーにより、振動、タッチの強さ、圧力の検出が可能になる。
3Dプリント技術はこうした先端技術を今まで以上に安価で提供するために大いに役立つ。たとえばキム教授は「病院で柔らかい肌をもつロボットを使用したい場合について想像してみてください」と例を出している。「そのためには定期的に消毒する必要があるか、皮膚を定期的に交換する必要があります。いずれにせよ、莫大なコストがかかる。しかし、3Dプリントは非常にスケーラブルなプロセスであるため、交換可能な部品を安価に作成し、ロボット本体のオンとオフに簡単にスナップできるんです」。
すでに開発されているにもかかわらず、またそれが人々にとって有用なものであることがわかっているにもかかわらず。コストの問題によって一般に普及していない最新技術は多くある。製造プロセスにおける3Dプリンターの活用は、そうした技術のコスト面での敷居を下げ、プロセスを合理化することに大いに資する。ひいてはそれは私たちの暮らしをより良くすることにつながる。
3Dプリント技術とロボット工学の更なる発展に期待したい。