月のレゴリスを模したフィラメントで自宅に宇宙空間を3Dプリント
玄武岩ムーンダストフィラメントで月面のレゴリスを再現
3Dプリンターが私たちの暮らしを未来へと運んでくれる。そんな3Dプリンターの初期衝動を思い出させてくれるニュースが届いた。なんでも夜空に浮かぶ月の塵、通称レゴリスをモデルにしたフィラメントがこの度登場するというのだ。
このムーンダストフィラメントを開発したのは、アストロポート・スペース・テクノロジーとヴァーチャル・ファウンダリーという二つの企業。ヴァーチャル・ファウンダリーは元々フィラメントの製造会社。一方のアストロポート・スペース・テクノロジーは宇宙ベースの建設を専門とする建築会社だ。
すでにNASAは月面における3Dプリント技術の使用可能性について研究を進めてきた。その際に注目されたのが月の塵であるレゴリス。3Dプリント素材を月から採取することで、より効率的な月面基地建設を可能にしようというわけだ。
残念ながら本物の月のレゴリスを自宅で広く使用できるようにすることは現状難しい。ただ、二社が開発した玄武岩ムーンダストフィラメントは、レゴリスの代用となるべく、レゴリスの構成を完全に模倣した設計となっている。
ムーンダストフィラメントで印刷されたオブジェクト。(画像/The Virtual Foundry)
その構成素はシリコン、鉄、マグネシウム、カリウム、アルミニウム、チタン、カルシウム。その全てをPLAで結合したこのフィラメントには一つの特徴があり、それは完全に焼結が可能であるということ。焼結炉を通すことで、このフィラメントで印刷されたオブジェクトは純粋な玄武岩に変換される。月のレゴリスとはこの玄武岩の上に宇宙線が当たることで、砂状に変換されたものだ。
果たして、この素材を地球上で使う意義とはなんだろうか。現在、宇宙における3Dプリンティング技術開発の課題は、微小重力環境に適応したFDMプリンタを開発することにある。すでに多くのハードルがクリアされており、実際に2台の3Dプリンターが宇宙に向かっている。次なる課題は、この素材で一体どのようなものが3Dプリント可能であるかということだろう。
ムーンダストフィラメントで印刷された惑星生息地モデル。(画像/The Virtual Foundry)
その上でも地球のユーザーたちが玄武岩ムーンダストフィラメントを使用し、それぞれの発想によってさまざまな3Dプリントに挑戦すること、そしてその成果が集積されていくことは、今後の宇宙空間における3Dプリントの可能性を押し広げることに繋がるかもしれないのだ。
とにかく、興味がある方はまず試してみてほしい。玄武岩ムーンダストフィラメントはすでにヴァーチャル・ファウンダリーのウェブサイトにおいてオンライン販売されている。月面開発の未来にコミットしてみませんか?
https://shop.thevirtualfoundry.com/en-mx/products/basalt-filamet?variant=43866121666805