
ジュエリー業界を刷新する3Dプリンター|“悟り”をイメージした光るアクセサリーが「美しい」と話題に
多様化する3Dプリントアクセサリー
以前にも紹介したように3Dプリンターはアクセサリーやジュエリー制作においても大いにプレゼンスを高めている。たとえば、3Dプリントファッション界のZOZOTOWNを目指す「SEPTEM」では、3Dプリンターだからこそ可能となった複雑な形状のエッジィで独創的なアクセサリーが取り揃えられており、サイトを覗くだけでもとても楽しい気分にさせてくれる。
今後、ますますの多様化が期待されるところだが、そんな中、英国より3Dプリンターを用いた先鋭的デザインのアクセサリーが登場したとのニュースが届いた。
そのアクセサリー制作に用いられたのは、英国を拠点とする3Dプリンティングの新興企業であるSatoriが昨年10月に発表したばかりのST1600 Masked Stereolithographyという3Dプリンター。こちら、デスクトップ型のMSLA(Masked Stereolithography)プラットフォームで、主に歯科業界やその他の産業市場でのアプリケーションに適していると言われている。
ST1600 Masked Stereolithography
このST1600に目をつけたのがファッションデザイナーのガニット・ ゴールドスタインだ。彼女はロンドンを拠点に3Dファッションとスマートテキスタイルの開発を行うデザイナーで、3Dスキャンを取り入れた斬新な3Dテキスタイルを工芸品とテクノロジーの交差点にて制作する次代のクリエイター。そのゴールドスタインが、ST1600を用い、Satori社との全面コラボレーションのもと、今までにはなかった先進的なデザインのネックレスのコレクションを生産したのである。
LEDネオンカラーに輝く3Dプリントジュエリー
さて、先端技術を用いて制作されたそのネックレスとはこちらである。
ゴールドスタインは、Satoriチームと密接に協力して、3Dプリントでしか対応できない複雑な形状のネックレスのデザインを設計、ST1600プラットフォームを利用して出力した。各ネックレスにはWiFi制御のLEDライトが埋め込まれており、印刷後すぐに身に着けることができるようになっている。
いわゆる宝石の瀟洒な輝きとはまた異なるLEDネオンカラーの極彩色の光は、近未来的であり、実にファッショナブルだ。Satoriとゴールドスタインはパンデミックの間、遠隔地でビデオ会議プラットフォームを介して会話をしながら、デザインについてのアイディアを練り続けたという。最終的にゴールドスタインがイメージしたのはSatori社の社名の由来である日本語の「悟り」だった。
「私は『悟り』という言葉にインスパイアされ、アートとテクノロジーを結びつけながら、その未来のポジティブさと(LEDの)光を反映させることを試みました」
ゴールドスタインによれば、「Satoriとの最新のコラボレーションは、3Dプリントされたネックレスの革新だけではなく、3Dプリントがジュエリー業界をどのように変革していくかという大きな挑戦の始まり」でもあるそうだ。また、ゴールドスタインは金や宝石がその流通において抱えている闇についても指摘している。エドワード・ズウィック監督の映画『ブラッド・ダイヤモンド』などでも描かれているように、ジュエリーのきらびやかな輝きの舞台裏には犯罪まがいの黒いサプライチェーンが存在しているからだ。
「ジュエリーはサプライチェーンが謎に包まれている金やダイヤモンドに必ずしも限定されたものではないはず。自宅の机の上で、あなたの創造性と想像力によって、美しくカスタマイズされたダイヤモンドを製造することだってできるんです」
今回のパンデミックは世界規模で張り巡らされたサプライチェーンに大打撃を与えている。物流が滞る一方で、この一時的な停滞はこれまでに存在した黒いサプライチェーンを見直す契機にもなっているのかもしれない。3Dプリント技術の発展が、そうした不正の除去に資するのであれば、喜ばしいかぎりだ。
参照記事:https://www.tctmagazine.com/additive-manufacturing-3d-printing-news/ganit-goldstein-satori-3d-print-new-necklace-collection/