
2021年に最も注目された3Dプリンター関連イノベーション|ガラス、ナノ、医療まで
2021年に最も輝いたイノベーションとは?
ドイツのFormnext Start-up Challengeは、世界中のスタートアップ企業を対象に、その年、アディティブ・マニュファクチュアリングの世界で著しい革新性を見せた企業を表彰するアワードだ。
その7回目となる今大会が昨月10月に行われた。今回、受賞したイノベーションは、ナノ印刷やガラスの3Dプリント、脊椎患者向けの医療ソリューションなど様々。すでにこの記事欄においても紹介したことがある技術も含まれているが、あらためて今回の受賞企業を見てみたいと思う。
出典:Formnext
ナノ、医療、ガラスなど先端技術が目白押し
まず一つ目の受賞企業は、デンマークのスタートアップ「Atlant 3D Nanosystems」だ。同社は複数の材料を用いた原子制度におけるプロトタイピング、製造を専門としており、その高度な製造システムが今回、受賞対象となった。同社が提示するNanofabricatorプラットフォームは、異なる形態で最大300mmのサイズの基板上で最大6つの材料を同時に処理することができる。今後、NASAとも提携して研究開発を進めていくそうだ。
Atlant 3D Nanosystems
二つ目の受賞企業は、米国のAzul3Dだ。こちらは以前、記事でも紹介したことがある。同社が開発した、HARPと呼ばれる3Dプリンターは、いまだかつてない高速度の3Dプリントを可能にした。詳しくは別記事に譲るが、来年より市場にも流通し、段階的にヴァージョンをアップしていく予定らしい。
出展:Azul3D
三つ目は脊椎の奇形を治療する新しいソリューションを開発したFitedだ。同社は、歯科用ブレースに適用されているものと同じ原理を利用して、脊柱側弯症ブレースの自動設計を行うことを可能にしたという。これによって72%の症例で手術の必要性を防ぐことが期待されている。世界の100人に4人がこの脊柱側弯症によって苦しんでいると言われており、そうした点からも非常に注目を集めた技術革新となった。
出展:Fited
四つ目は米国のスタートアップ「Print Parts」が開発したデジタル署名技術だ。同社はナノ粒子を利用して、3Dプリントされた部品にデジタル署名を埋め込む技術をつくり出した。これにより3Dプリントされた部品をスキャンするだけで管理や認証をスムーズに行うことができるようになると目されている。実用性の高い注目の技術だ。
出展:Print Parts
五つ目はスウェーデンのスタートアップ「Nobula」が開発したデスクトップのガラス3Dプリンターだ。これまでガラスを素材とする3Dプリントは非常に限られた形でしか実現してこなかった。同社は既存のソリューションよりも低コストで用途の広い印刷技術を開発し、その技術に関して特許を申請した。これによりNobulaは今後、独自にガラス3Dプリンターを提供できるようになった。
出展:Nobula
3Dプリント技術はいまだ成長期
いかがだっただろうか。
一望してみると、今年はナノ3Dプリント技術を用いたイノベーションが目立っていたように思う。またNobulaのデスクトップガラス3Dプリンターは、ようやく特許段階を経たところであり、今後の実用化が大いに期待される注目の技術だろう。
少なからず分かることは、3Dプリント技術はいまだ成長期にあるということだ。日々、新たな技術が開発され、それによって市場も大きく変わり続けている。果たして来年はどのような技術革新が起こるのだろうか。引き続き、注目していきたい。