
生徒たちがクラスメイトのために3Dプリント義手を制作|オーストラリア・ポートマッコーリーの取り組み
オーストラリア・ポートマッコーリーにある「The Nature School」の生徒たちが、クラスメイトである ロイス・アニェロ(Lois Agnello)さん のために、3Dプリンターで義手を制作しました。
このプロジェクトでは、オーストラリアの慈善団体 Free 3D Hands が公開しているオープンソース設計データを活用。生徒たちは数か月にわたり、3Dプリンターの使い方を学び、さまざまな素材を試しながら、最終的に機能的な義手を完成させています。
プロジェクトのきっかけは、生まれつき左手の一部がないロイスさんが、「自分の義手を作ってみたい」と理科・技術の先生に相談したことから始まったそうです。
試行錯誤を重ねたプロトタイプ制作
生徒たちは昼休みの時間を利用し、3か月にわたって活動。異なる繊維素材をテストしながら技術を磨き、最初のプロトタイプを完成させました。
この義手は上腕の動きで作動し、物をつかむことができます。ロイスさんは「最初は本当に動くのか信じられなかった」と驚きを語っています。多くの生徒にとって3Dプリントは初めての経験であり、担当教師の ロイド・ゴッドソン(Lloyd Godson)氏 は「創造性とチームワークを育む貴重な学びの場だった」と話しています。
継続する改良と協働
初期モデルの完成後も、生徒たちはFree 3D Handsと協力しながら改良を続けました。
これまでにさらに3つのバージョンを製作し、回を重ねるごとにより快適で高機能な義手へと進化しています。
Free 3D Handsの創設者 マット・ボウテル(Mat Bowtell)氏 は、生徒たちの熱意と新しいデザイン案への積極的な関わりを高く評価しています。チームは今後も、日常生活でより実用的な義手を目指して開発を続ける予定です。
他の子どもたちへ広がる支援の輪
このプロジェクトは、単に1本の義手を作るだけの活動を超え、「他の子どもたちにも3Dプリント義手を届けたい」という新たな目標へと発展しました。
生徒の レン・マクドウェル(Wren McDowell)さん は「いろんなスタイルの義手をデザインできるのが楽しい」と話し、ジョエル・バンウェル(Joel Banwell)さん も「ロイスが義手を使う姿を見て、次はもっと良いものを作りたいと思った」と語っています。
国際的な評価と次なる挑戦
彼らの取り組みは国内外で高く評価され、今年後半に東京で開催される “Be the Change Youth Summit” にオーストラリア代表チームとして招待されました。
ロイスさんは世界各国の若いイノベーターたちに自らの体験を紹介し、「他の子たちも『すごい!私もやってみたい!』と思ってくれたらうれしい」と語っています。
この事例は、教育現場での3Dプリント技術の力を象徴するものとも言えます。生徒たちが技術を学びながら、現実的な課題解決に挑戦する姿は、「3Dプリントが人の生活を変える力」を改めて実感させてくれます。
写真: The Australian Broadcasting Corporation