3Dプリントされたバイオミックウォールが都市を緑化する?|街を森へと変える新しい技術
地面に余裕がないのなら壁面に緑を増やそう
緑がたくさんある街に住みたい。そう思ってみても、都市においては緑の居場所は限定的だ。道の並木、あるいは公園などには緑があるが、オフィスビルが立ち並ぶエリアにおいてはどうしても緑の気配は薄れてしまう。
実は最近、そうした都市の緑化に関わる新しい技術が生まれつつある。その名もバイオミックウォール。これは斬新なセラミック3Dプリンティングとエコロジカルなデザインを組み合わせた最先端のファサードプロトタイプだ。
. (Image Credit: JanContala / designboom)
この水耕栽培が可能な全く新しい壁面は、進化し続ける環境景観に動的に対応するために、ceraLABとexarch.hochabuの協力のもと、インスブルック大学の修士課程プログラムの一環として開発されたものだという。目指しているのは、空気の質を改善し、都市の気候を調整し、騒音を軽減するために、密集した都市空間の緑化に貢献することと、そしてそこをさまざまな動植物の生息地とすることだ。
開発されたプロトタイプは、生態学の文脈における建築の限界に挑戦するものである。都市に緑が少ないのは、まず端的にスペースが少ないから。土地には余すところなく建物が立ち並び、道路には人や自動車がひしめいている。しかし、これまで無視されてきたデッドスペースも存在する。そう、建築の壁面である。
そこでインスブルック大学の設計チームが取り組んだのは、3Dプリンティングを活用し、従来の工法では達成できなかった、植物が着生可能な複雑で有機的な形状の壁面の形成だ。その研究はバイオミックウォールの美しい多孔質表面として結実した。
. (Image Credit: JanContala / designboom)
写真をご覧いただければ分かるように、バイオミックウォールにおいてはセラミックと植物が複雑に絡まりあって共存している。下地となっているのは金属製の基礎構造。それゆえ一段ごとの組み立てが可能となっていて、増設もしやすい。
もちろん、こちらはまだ普及していない。しかし、こうした新技術の登場は都市か田舎かという単純な二項対立に待ったをかけるだろう。あるいはこうした試みが広がっていった先には、森のように緑豊かで生物多様性に溢れる都市空間も誕生するかもしれない。
世界中で異常気象が生じている今だからこそ、目の前の暮らしの空間から、まずは見直していきたいものだ。
. (Image Credit: JanContala / designboom)
(参照記事)