VRモデリングの魅力と難点──近い将来、VRモデリングがスタンダードに?
近い将来、VRモデリングがスタンダードに?
3Dモデルのモデリングに関しては様々な方法、様々なモデリングソフトがある。そんな中、今後もっとも注目のモデリングと言えば、VRモデリングだろう。もちろん、3Dプリンター愛好者にとってもこれは例外ではない。
VRモデリングとは文字通り「VR空間内でモデリング作業を行う」こと。つまり、VRヘッドマウントディスプレイを装着し、自分自身がVR空間に入りながら、そのVR空間にて造形作業を行うという方法のことで、まだ広く普及しているとは言い難いが、おそらく近い将来にはこれが最もスタンンダードな方法になるのではないかとも言われている。
そこで今回はVRモデリングの魅力、その特徴についてを、簡単に紹介してみたいと思う。
VRモデリングの魅力
まず、VRモデリングの魅力とはどういうところだろうか。もちろん、使用者それぞれに色々な意見があると思うが、代表的なところでは以下の4点になる。
・実在感
・習得しやすさ
・モデリング速度
・楽しさ
順番に見ていこう。
・実在感
VRモデリングで一番期待されていることは「実在感」だろう。上、横、後ろ、斜めとあらゆる角度からオブジェクトを見て、状態を確認することができる。実用面では、パースが画面上で見るよりも実際の目で見た状態に近くなるので、3Dプリントする前にゆがみに気づける、というメリットがある。
・習得しやすさ
CADにせよスカルプトにせよ、慣れない3DCGソフトを用いた作業を行うことは、どうしても使用方法の習得に手間取ってしまいがちだ。その点、VRモデリングの場合、作業はよりシンプルになる。それこそ図工の時間の粘土制作のように、目の前にあるオブジェクトを自分の手で積み上げたり削ったりしながら造形することができるVRモデリングは、頭よりも体で作業を覚えていくことができるため、習得が容易だと言われているのだ。従来のモデリングに苦手意識を持っている方は是非ともトライしてみてほしい。
・モデリング速度
VRモデリングではダイレクトな造形を行えるため、モデリング速度が非常に高速だと言われている。頭に思い浮かべたイメージをすぐに感覚的に立体化していくことができ、初心者でもあっという間にVRモデルを作成することができるのだ。手作業ならではのスピード感で「ものつくり」をしたいという方には、VRモデリングが最適解となるかもしれない。
・楽しさ
そしてなんと言っても、VRモデリングの体験者が口を揃えて語ることと言えば、「楽しい」ということだろう。そもそも、VR空間に入ること自体、ゲーム感覚があって刺激的だ。現実とは異なる空間で作業を行うVRモデリングはその意味でも非日常感があり、また、あたかも自分の手を使って「ものつくり」を行なっているような感覚を得られるため、オブジェクトとの関係がよりダイレクトになる。このことがPCモニター越しの造形とは異なる「楽しさ」をVRモデリングに与えているようだ。
VRモデリングの現状の難点
さて、このように多くの魅力と利点を持ったVRモデリングではあるが、現状においては難点もある。目立った難点としては以下の2点だ。
・ディティールの作り込みが弱い
・酔いやすい
一つは、手作業でダイレクトに造形を行うため、ディティール部分の作り込みや、細かさを要する作業などにおいては限界があるということだ。
そしてもう一つは、VR空間で長く作業をするため、VR空間が不慣れな人は酔ってしまう場合もあるということだ。
そのため、現状においてはワークフローの一環として取り入れるのが良いとも言える。基本的な造形をVRモデリングで行い、細かい部分の調整などは、通常のモデリング方法において行うという形だ。
ただし、今後はよりソフトの質も向上していくだろう。上記したような難点もやがて技術的に乗り越えられていくだろう。
VRモデリングにトライするには
では実際にどうすればVRモデリングを行えるのだろうか。最後に簡単に解説したい。
まずVRモデリングには大きく分けて2種類ある。これは通常のモデリングと同様でメッシュ操作でモデリングするタイプと、スカルプトなどの手法でモデリングするタイプだ。このうち、もとより直感的に造形を行えると言われてきたスカルプトの方が、よりVRモデリングとのは相性は良いだろう。
このことを踏まえた上で、VRモデリングを行うためには、VRヘッドマウントディスプレイとVRに対応しているモデリングソフトだ。
VRヘッドマウントディスプレイに関しては現状で様々な商品が販売されている。これは使用したいモデリングソフト、アプリの対応機種を事前に確認した上で購入すると良いだろう。
Oculus Quest
また、VRモデリングソフトについても現在、日増しに多様化が進んでいる。現在の代表的なところではOculus Mediumだ。Oculusしか対応してないのが難だが、Oculusは最近Adobeファミリーになったので、今後の展開も期待できる。同じくOculus向けのVRモデリングアプリであるMakeboxなどはボクセルモデリングによってマイクラみたいに子供も遊べる楽しいソフトだ。
あるいはGravity Sketch もかなり高機能で、プロのワークフローに耐えうる。その名の通り立体スケッチなのだが、きれいなサーフェースの面が作れるため、プロダクトデザインに向いているだろう。
いずれにせよ、まだ発展途上の段階、おそらく今後、VR機能を搭載したモデリングソフトがますます増えていくことだろう。
まとめ
いかがだっただろうか。
書いたように、VRモデリングには様々な魅力があるものの、現状では難点もあり、ワークフローの一部に取り入れることはできても、それ単体で最終形を完成させていく上では改善すべき点もある。しかし、他分野においてもVRコンテンツが拡充していく中、モデリングにおいてもVRが今後発展んしていくであろうことは間違いない。今のうちにVRモデリングに慣れておいて損はないはずだ。
今日では導入コストもずいぶん低くなっている。Oculus Quest 2 単体と数千円のソフトでできてしまうので、とりあえず始めてみるだけなら、高価なゲーミングマシンを買う必要もない。
なにより、VR空間に自らも入り込んで「ものつくり」を行い、そこでつくったものを現実世界で出力できるというのは、控えめに言っても楽しいことだし、2020年代ならではの刺激的な遊びだ。是非ともトライしてみてほしい。