
オルトミートに続くか? 3Dプリント「シーフード」に注目が集まる理由
オルトシーフードが到来する?
これまでSK本舗メディアにおいては、3Dプリント技術を使ったオルトミート(代替肉)の最新情報を多く紹介してきた。
もっとも代表的な企業としてはnova meatが存在している。同社が開発する3Dプリント・ステーキは、人口問題に伴う食糧不足という危機を抱えた未来の食生活を支える技術になりうるとして、いまや世界中からの注目を集めている。
しかし一方で、食料問題は何も牛肉や豚肉に限った話ではない。近年では漁業の乱獲などによる生態系の破壊も問題視されており、シーフード大国である日本にとってもまた、サンマやクロマグロなどの漁獲量を制限されるなど、他人事とは言えない問題となっている。
安くて美味しい魚を気軽に食べられる時代は、もう終わってしまうのだろうか。そんな不安が脳裏をもたげる中、3Dプリント技術がまたも「ソリューション」の手掛かりを打ち出してくれているのだ。
Revo Foodsの3Dプリントサーモン
バイオ3Dプリント技術を駆使して、3Dプリントシーフードの開発を進めているのがRevo Foodsだ。こちらはオーストリアのスタートアップ企業で、元はLegendary Vishという社名だった。
このRevo Foodsは主に植物性サーモンの開発を行っており、すでに先月(3月)、オーストリアにおいて、世界初となる3Dプリンター製サーモンの試食会を開催している。当日の会場の状況はいかがだったんだろうか。インスタグラムには実際に提供された3Dプリントサーモンの写真が投稿されている。
ポイントは植物性という点である。現在、欧米では急速に菜食主義者が増え始めている。日本でも徐々にその人口は拡大しており、実際、筆者の身の回りでも特に女性を中心に「ヴィーガン始めました」と語る人がチラホラ。今の所、日本ではそうした菜食主義の方のためのメニューはまだまだ拡充しているとは言えないが、今後、需要が伸びてくることは間違いない。そうした点からも、植物性のシーフードは注目されているというわけなのだ。
代表の一人であるRobin Simasは動画で「代替肉は非常に普及しているものの代替シーフードはまだまだ。それはこれらの製品が常識から外れているからだ」と語り、そして、それが「3Dプリント技術によって可能になった」と語っている。
材料はエンドウ豆から抽出されるタンパク質と、植物繊維、植物油など。いずれも天然成分からなり、消化にも優しい健康を意識した作りとなっているそうだ。
今後は3Dプリント技術を用いた自動生産ラインを構築し、またオーストリアのみならず海外への展開も目指している。今年の夏にはまず3Dプリンター製ではないスプレッドサーモンやスモークサーモンを販売予定とのこと。
同社は3Dプリントサーモンで握ったサーモン寿司の写真もアップしているが、日本人もまたサーモン愛好度合いは非常に高い。果たして日本人の舌を納得させる出来栄えとなっているのか、早く試食してみたいところだ。
One Nigiri Sushi is conventional, the other one 3D-printed. Can you tell the difference? 🍣😎#startup #legendaryvish #sushi #3Dprinting #sustainable #seafood pic.twitter.com/ybWvEnMSpP
— Revo Foods (@RevoFoods) June 24, 2020
幹細胞を使った「より本物のシーフード」
もちろん、植物性ではなく、より本物のシーフードをやっぱり食べたいという人もいるだろう。たとえば米国サンディエゴに拠点を持つBlueNaluは、そうした人々の期待に応える代替シーフードを開発している。
彼らが使用しているのはips細胞に関わる技術だ。実際の魚から筋肉組織を抽出し、そのサンプルを幹細胞と酵素による処理を行ったのち、バイオリアクターに投入。そうすることで代替シーフードを生成し、バイオインクと組み合わせることで3Dプリンターによってフィレの形に成形するのだという。
こちらは言ってしまえば成分としては本物の魚と変わらない。そのため、あらゆる調理に耐えうる強度があり、かつ調理者にとっては捌く必要もなく、普及すればシーフード業界を大きく変えることは間違いない。
Photo by BlueNalu
美味しい魚は食べたい。だけど、生態系にも配慮したい。そんな矛盾した欲求を持つ私たちにとって、オルトシーフード技術が一筋の希望となっている。果たして「ちょっとザギンで3Dプリント寿司でも食いますか?」「いいですね、僕はヴェジなんで植物性にしようかな」なんて言葉が交わされる日は到来するのだろうか。
あくまでも個人的な心情としては早急な3Dプリント・ウニの開発を大いに期待している。