
伝統の「組子」を3Dプリントで再現!樹脂だからできる新しい挑戦
木の伝統技術をプラスチックで
組子(くみこ)は、日本の伝統的な木工技法のひとつ。小さな木片を切り出して組み合わせ、繊細で美しい幾何学模様をつくる職人技です。本物の組子を作るには、材料の木目を読む力も、精密な手仕事も、何より“気の遠くなるような忍耐”も必要。でも現代人、なかなかそんな時間は取れません。
そこで登場したのが、3Dプリンタで“それっぽい”組子を作ってしまおうという挑戦です。今回取り上げるのは、YouTubeチャンネル[Paper View]さんによるプロジェクト。木ではなく樹脂フィラメントを使い、プリンタで細かいパーツを連続出力して組み合わせ、伝統の組子風デザインを大判パネルに仕立てています。
ポイントは“つなぎ目をどう隠すか”
大きな組子パネルを3Dプリンタで作ると、必ず出てくる問題が「分割のつなぎ目」。プリンタの造形サイズには限界があるので、何枚かのタイルに分けてプリントし、それを後でつなぎ合わせるしかありません。でも、せっかく繊細な幾何学模様がつなぎ目で台無しになるのは避けたいもの。
[Paper View]さんの面白い工夫は、このつなぎ目をカバーするために上に被せる“フタパーツ”をデザインしているところです。これで余計な後処理を極力減らし、きれいな仕上がりを実現しています。これも、木の組子ではなかなかできない3Dプリントならではの方法です。

自分だけの組子パネルが誰でも作れる
さらに嬉しいのは、この組子風パネルを誰でも作れるように、[Paper View]さんはパラメトリックな「組子パネルジェネレーター」を公開していること。フレームサイズや模様の種類を自分好みに設定して、1枚ものとしてプリントするもよし、分割して組み立てるもよし。
ちなみに、このジェネレーターはMakerWorldのパラメトリックモデル機能をフル活用しているそうです(時々タイムアウトするほどの凝りっぷり)。OpenSCADをベースにしているので、もし要望が集まれば、今後よりオープンな形でSCADファイルが公開されるかもしれません。
伝統を知っているからこその“遊び心”
本物の組子はもちろん釘を使いませんが、これまでにも木とエポキシで作った組子模様のギターや、なんと釘で作ったメタル組子まで登場しているとか。伝統の技術を知っているからこそ、ちょっとした“皮肉”や“アレンジ”が生まれるのも面白いところです。
3Dプリントで組子を再現する試みは、職人技の本物には及ばないかもしれませんが、手軽に「和」のデザインを楽しむ入り口としては十分魅力的。組子の世界にちょっと触れてみたい人は、ぜひ挑戦してみては?