
3Dスカルプトとモデリングのハイブリッド「3DCoat」の特徴
3Dプリント用のモデリングソフトを探している人に、ぜひ一度チェックしてほしいのが「3DCoat(スリーディーコート)」です。
「ZBrush」や「Blender」ほどの知名度はないかもしれませんが、実は世界の有名ゲームスタジオや150以上の大学で導入されている実力派ソフト。開発しているのはウクライナのスタジオ「Pilgway」。アメリカやアルゼンチンのエンジニアもチームに加わっており、2007年のリリース以来、進化を重ねています。
以下では、この3DCoatの特徴について解説してみます。
ざっくり言うと「3Dスカルプトとモデリングのハイブリッド」
3DCoatの特徴は、直感的な操作で“デジタル粘土”のようにモデリングできること。公式サイトにはチュートリアルや入門講座も用意されていて、宇宙船の翼のモデリングからUV展開まで、初心者でも順を追って学べます。
公式サイト:https://3dcoat.com
フォーラムでユーザー同士がアイデアを交換したり、質問したりできるのも嬉しいポイント。3DCoat本体のほか、「3DTextura」や「3DCoat Print」といった派生ツールも用意されています(下部で解説します)。
3DCoatの主な特徴
有機的な造形と高速な操作感
3DCoatは「ボクセル技術」を使ったスカルプトを得意としています。これは、3D空間をブロック状の“体積データ”として扱うもので、複雑なブーリアン演算(オブジェクト同士の合体・切削など)もサクサクこなせます。
また、リアルタイムでのブーリアン処理にも対応しており、パーツ同士の結合作業もストレスなし。もちろん、従来型のポリゴンモデリングや、スプライン・ジョイントなどの細かい設計ツールも搭載しています。
AIアシスタントやベクターブラシも搭載
2024年初頭の大型アップデートでは、AIアシスタントが登場。モデル制作のヒントをくれたり、工程を自動化してくれたりと、制作フローがさらにスムーズになりました。ベクターブラシもサポートし、より自然な造形が可能になっています。
3DTextura:テクスチャー特化のプロ仕様
「3DTextura」は、3DCoatのテクスチャリング・ペインティング専用版です。
手描きのPBRテクスチャ(物理ベースレンダリング)に対応しており、WacomやSurface Penなどのペンタブにも最適化。最大16Kの高解像度で塗装・レンダリングが可能です。
500種類以上のPBR素材ライブラリが無料で利用でき、動画チュートリアルも充実。ピクセルペイント、Ptex、マイクロバーテックスといった手法にも対応しているので、初心者からプロまで幅広く活用できます。
3DCoat Print:3Dプリント向けの“粘土モデラー”
「3DCoat Print」は、3Dプリント用のモデル制作に特化した軽量版。
デジタル粘土のような操作感で、切削・加筆・マスク加工などを直感的に行えます。ボクセル技術のおかげで、形を削っても追加しても自由自在。特性として、「モデルのエクスポートは最大4万ポリゴンに最適化」、「STLやWRL形式での出力、DICOMファイルの読み込みも可能」、「プリントサイズのカスタマイズや専用スムージング機能付き」などが挙げられます。
さらに、非商用利用や画像出力用なら無料で使えるのも魅力。ちょっとしたアイデアの試作や、プレゼン用のモックアップにもぴったりでしょう。
こんな人におすすめ!
3DCoatは、たとえば「ZBrushは機能が多すぎて難しい…」という人、造形からテクスチャ、プリント用データ出力まで一つのツールで完結させたいという人、有機的なモデリングとエンジニアリング的な設計の両方をやりたいという人、そういう人たちにこそおすすめのソフトウェアです。
いわば「手軽」、それなのに「プロ品質」。3DCoatはその二つを両立している珍しいソフト。ゲーム制作やアート作品はもちろん、3Dプリント用の試作・製品デザインにも幅広く使えるので、モデリングの幅を広げたい人は一度触ってみる価値があると思います。