
BambuLabなど最新3Dプリンターの実践的活用術|現場で使える効率化テクニック集
最新の3Dプリンター、特にBambuLabなどの高機能マシンは、従来とは全く異なるアプローチで活用することで、その真価を発揮します。ここでは、実際の現場で培われた実践的なテクニックを厳選してご紹介します。
1. 地盤づくりはしっかりと|初期層はのんびりと
3Dプリンティングにおいて最も重要なのは「地盤づくり」です。どんなに高度な設定をしても、初期層がしっかりしていなければ、造形は必ず失敗します。
定着改善の具体的手法
温度調整による定着力向上
定着が悪い場合の最も効果的な対策は、初期層のベッド温度を上げることです。標準設定より5-10℃上げることで、定着力が大幅に向上します。
速度調整の重要性
多くのユーザーが見落としがちなのが、初期層の速度設定です。一般的な初期設定では:
- 初期層外周速度:50mm/s程度
- 初期層インフィル:100mm/s程度
しかし、定着を重視する場合は:
- 初期層外周速度:30-40mm/s
- 初期層インフィル:40-60mm/s
このバランス調整により、確実な地盤づくりが可能になります。
2. 最新ビルドプレート技術の活用
用途別プレート選択
フラットPEI vs Textured PEI
- フラットPEI:鏡面のような滑らかな底面
- Textured PEI:シボ加工風の質感
特殊効果プレート
- 通称夢かわビルドプレート:キラキラ転写効果でアクセサリー製作に最適
- カーボン柄プレート:工業製品風の高級感演出
カスタムオーダープレート:特定パターンやロゴの転写が可能に。Emeber Prototypesなど。レーザー刻印でカスタムを試すという方法も。
3. 補助冷却ファンが強すぎる?!
BambuLabなど最新マシンの補助冷却ファンは非常に強力ですが、使い方を間違えると逆効果になることがあります。
大きなものや板ものを印刷する際、補助冷却ファンが局所的に冷却してしまい、温度差による反りが発生することがあります。
対策
- 冷却ファン出力を落とす
- 補助冷却ファンから位置を離せるなら離す。
4. 密閉型プリンターでのABS/ASA印刷術
予熱による環境温度管理
ABS/ASA印刷では、環境温度が印刷品質に大きく影響します。
効果的な予熱手順
. 印刷開始前にベッド温度を100℃に設定
. 20分以上の予熱で庫内温度を上げる
. 庫内全体が均一に温まった状態で印刷開始
この予熱により、印刷中の温度変動を最小限に抑え、より安定した印刷が可能になります。
5. マルチカラー印刷の効率化戦略
設計段階での判断基準
マルチカラー印刷は便利ですが、時間効率を重視する場合は部品分割設計の方が望ましいケースが多くあります。
部品分割設計のメリット
- 印刷時間の大幅短縮(パージ時間の排除)
- 材料の無駄削減(パージ材不要)
- 失敗時のリスク分散(一部だけ再印刷可能)
- 色変更の自由度向上
- 並列印刷による更なる時短効果
マルチカラーが適している場面
- 一体性が重要な機能部品
- 分割が困難な複雑形状
- 少量生産での見た目重視
複数同時印刷による効率化
マルチカラー印刷で最も効果的な材料節約テクニックは、複数の造形物を一気に印刷することです。同じパージタワーを複数の造形物で共有できるため、パージ材の相対的な割合を大幅に削減できます。
高度な印刷順序最適化
複数の色構成が異なる部品を同時印刷する場合、スライス方法を「レイヤーごと」から「造形物ごと」に変更することで、劇的な効率化が可能です。
設定手順
. Bambu Studioで複数の部品を配置
. 自動配置機能で効率的なレイアウトを生成
. スライス設定で「Print by object」を選択
. 同色の部品をグループ化して印刷順序を最適化
6. 異種材料サポートの高度活用
PLA/PETG組み合わせテクニック
シングルヘッドマルチカラーマシンでは、材料特性の違いを活かした高度なサポート戦略が可能です。
PLAメイン + PETGサポートの利点
- 材料間の接着性の違いによる除去しやすさ
- PETGの柔軟性を活かした剥離性向上
PETGメイン + PLAサポートの利点
- PLAの剛性を活かした安定したサポート
- 温度差を利用した選択的除去
重要な注意点
PLAとPETGは材料相性が良くないため、通常より150-200%程度のパージ量が必要です。ノズル温度は両材料の中間値(220-230℃程度)に設定することが重要です。
超上級テクニック:積み重ね造形
材料特性の違いを利用した積み重ね造形という革新的手法があります。
積み重ね造形の原理
- 下層:分離用材料(PETG等)で薄い分離層を形成
- 上層:メイン材料(PLA等)で実際の造形物を印刷
- 繰り返し:この組み合わせを垂直に積み重ね
板状造形物での応用
板状部品を垂直に積み重ねることで、ビルドプレートの面積制約を突破し、通常1枚しか印刷できない大型プレートを5-10枚同時印刷することが可能になります。
7. サポート面仕上げの精密調整
Top Z距離の微調整
サポートを外した面をより美しく仕上げたい場合、サポートのTop Z距離(上面間隔)を微調整することが効果的です。
具体的な調整例
- 0.2mm積層の場合:Top Z距離を0.16mm程度に設定
- 0.15mm積層の場合:Top Z距離を0.12mm程度に設定
調整のメリット・デメリット
- メリット:サポート跡の大幅な改善、表面品質の向上
- デメリット:サポート除去作業が困難になる可能性
この調整は個人差があるため、テストモデルを作成して自分に適した「いい塩梅」を探すことが重要です。
8. 造形安定性向上テクニック|倒れやすい形状への対策
倒れやすいものや設置面積の少ない造形物は、印刷途中で転倒や剥がれが発生しやすく、失敗の原因となります。これらの問題を解決する効果的な手法があります。
ブリム活用による接地面積拡大
ブリムの効果
- 接地面積の大幅拡大
- ベッドとの密着力向上
- 反りや剥がれの防止
- 細長い造形物の安定化
最適なブリム設定
- 幅:5-15mm(造形物サイズに応じて調整)
- 層数:1-2層(通常は1層で十分)
- ライン間隔:0.2-0.3mm
疑似サポート生成による転倒防止
設置面積が極端に少ない造形物では、意図的に疑似サポートを生成することで転倒を防止できます。
形状別対策選択指針
ブリムが適している場合
- 設置面積の少ない造形物
- 反りが発生しやすい材料
疑似サポートが適している場合
- 重心が上にあり不安定なもの
- 円柱など細長いもの
- 複雑な形状で部分的に不安定
9. インフィルパターンと表面仕上げの最適化
海外YouTuberの参考動画
インフィルパターンの強度や速度については、海外YouTuberの実証テスト動画が非常に参考になります。実際どれがいいかは用途によって異なるため、以下の動画で実際のテスト結果を確認することをお勧めします。
参考になる動画
- CNC Kitchen - TESTING 3D printed INFILL PATTERNS for their STRENGTH
https://www.youtube.com/watch?v=AmEaNAwFSfI
- Teaching Tech - 3D Print Infill Comparison
https://www.youtube.com/watch?v=upELI0HmzHc
- The BEST Infill Patterns for 3D Printing (And When to Use Them)
https://www.youtube.com/watch?v=2H4iOpEfsEs
表面仕上げの美観向上テクニック
外周1ラインのみ設定
外周を1ラインのみに設定することで、表面の継ぎ目を最小化し、非常に滑らかな仕上がりを実現できます。
装飾的パターンの活用
- ヒルベルトカーブ:数学的な美しさと実用性を兼ね備えた人気パターン
- アルキメデススパイラル:渦巻き状の優雅な仕上がり
- オクトグラムスパイラル:幾何学的な美しさを演出
まとめ:継続的最適化の重要性
これらのテクニックは、最新マシンの特性を活かした実践的な手法ですが、あくまで出発点に過ぎません。真の高品質印刷を実現するには、スライサーに搭載されている豊富な調整オプションを活用して、材料や積層高さ、速度などに合わせて設定を継続的に突き詰めていくことが不可欠です。
総合最適化のアプローチ
- 材料固有の特性を理解し、温度・速度・流量を細かく調整
- 積層高さに応じた冷却・サポート・インフィル設定の最適化
- 造形物の用途に応じた強度・美観・時間のバランス調整
- 環境条件との相関関係を考慮した設定変更
- 印刷結果の記録・分析による継続的改善
最新のスライサーソフトウェアには数百に及ぶ調整パラメータが搭載されており、これらを体系的に理解し、自分の環境・材料・用途に合わせて最適化していくことで、従来では不可能だった高品質・高効率な3Dプリンティングが実現できます。
*この記事は実際の使用経験に基づく実践的テクニックをまとめたものです。設定値は参考値であり、使用環境や材料によって最適値は異なります。必ずテスト印刷を行い、自分の環境に最適な設定を見つけることをお勧めします。*
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