塗装なしで、ここまで出る。3Dプリントが"作品"になる素材の話

塗装なしで、ここまで出る。
3Dプリントが"作品"になる素材の話

EasyWood Filament 4色で出力した狐モデル比較(Hinoki / Keyaki / Walnut / Rosewood)

同じデータを、4色の木目で出した。
同じ狐のはずなのに、別の作品が4体できた。
──素材を変えるとは、こういうことだ。

PLAで「色」を選ぶことに慣れた人でも、「質感そのものを変える」素材を使ったことのある人は意外と少ない。

今回は SK本舗オリジナルの EasyWood Filament(4色)Stone Filament を組み合わせて作った検証作品を例に、フィラメントの世界が思っているより広いことをお伝えします。

1. 同じデータ、別の作品 ─ EasyWoodの4色

EasyWood 4色(Hinoki / Keyaki / Walnut / Rosewood)の狐モデル詳細比較

冒頭の4体は、すべて同じSTLデータから生まれた狐です。違うのは素材の色だけ。

3Dプリントを始めたとき、ほとんどの人は最初にPLAを使う。乳白色、黒、赤、青──色は変わっても、表面の質感は同じ「プラスチックの艶」のままです。

EasyWood Filament は、おがくずをPLAに練り込んだ複合素材。木粉が出力面に繊維感を生み、光の当たり方によって木目が浮かびます。同じモデルでも、色によって受ける印象が劇的に変わる──それが冒頭の4体で起きていることです。

Hinoki(ヒノキ) 白に近い淡黄。清潔感のある白木。北欧雑貨、ディスプレイ小物、清潔感のあるインテリアに
Keyaki(ケヤキ) 中間ベージュ。穏やかな和の趣。茶器、和モダン雑貨、伝統工芸を思わせる置物に
Walnut(ウォールナット) 深い茶。家具のような重厚感。建築模型、家具のミニチュア、男性向けインテリアに
Rosewood(ローズウッド) 赤茶の深紅。アンティーク調。楽器パーツ風モデル、ヴィンテージ調置物、装飾品に
EasyWood Rosewoodで出力したベアの置物 EasyWood Walnutで出力した龍骨フレキシブルチェーン

ベアの置物は Rosewood の深紅、龍骨は Walnut の重厚。塗装なしで、ここまで雰囲気が変わるということが、写真の中ですでに語られています。

EasyWood Filament
¥2,475 / 1kg・PLAベース+木粉・フィラメント径 1.75mm・4色(Hinoki / Keyaki / Walnut / Rosewood)

2. 木を出したら、石を試したくなった

EasyWoodで木の温かみを覚えた目で、次に試したのが Stone Filament でした。

Stone Filamentで出力したティラノサウルス頭蓋骨(クローズアップ)

これはStone Filamentで出力したティラノサウルスの頭蓋骨です。表面に細かなザラつきと、マットな反射。PLAでは絶対に出ない、無機質で重い質感がそこにあります。

不思議なことに、人は「木目」を見ると温かさを感じ、「石の粒子感」を見ると重みと冷たさを感じる。素材が変わるだけで、見る人の感情まで変わるのだと、T-Rexを手に取って気付かされました。

Stone Filamentは、PLAに鉱物粒子を練り込んだフィラメント。出力直後から塗装不要で「石材のような質感と重厚感」が出ます。色はLight Gray 1色のみ。骨、岩、石像、コンクリート風の建築模型などに化けます。

Stone Filament
¥2,490 / 1kg・PLAベース+鉱物粒子・フィラメント径 1.75mm・Light Gray 1色

正直にお伝えします。

このフィラメントは現在、再入荷待ちです。
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3. そして、寺院ジオラマができるまで

ここからは、EasyWoodとStone Filamentと、通常のPLAを混ぜて作った1つの作品の話です。

EasyWood Walnut+Stone Filament+通常PLAで構成した寺院ジオラマ完成形

直径20cmほどの円形フレームの中に、中国風の寺院、燃えるような紅葉の樹、白い岩石、青い流水を組み込んだジオラマ。

塗装は一切していません。

色も、質感も、すべてフィラメントの違いから出ています。設計の段階で考えたのは、「素材ごとの強みを使い分ければ、塗装ゼロでどこまで世界観を作れるか」でした。各パーツに割り当てた素材はこうです。

  • 寺院本体 → EasyWood Walnut(木造建築の重厚感をそのまま素材で)
  • 岩石・地面 → Stone Filament(マットな白さと粒子感が、自然の石にしか見えない)
  • 紅葉の樹 → 通常PLAの赤(鉱物や木目では出ない、燃え立つような葉の鮮やかさが必要だった)
  • 流水 → 通常PLAの青(光を反射する透明感のあるブルー)
Bambu Lab AMSで異素材を切り替えながら多色プリント中の俯瞰

これをBambu Lab AMSで素材を切り替えながら出力します。AMSは本来「複数色のPLAを切り替える」ためのユニットですが、ここでは 「複数の異素材を切り替える」装置として使う

各スロットの設定は、おおよそ次のレンジが目安になります。

スロット 素材 ノズル温度の目安 速度の目安
1 Stone Filament 210〜220℃ 30〜40 mm/s
2 EasyWood Walnut 200〜215℃ 40〜50 mm/s
3 PLA 赤 205〜215℃ 50 mm/s 前後
4 PLA 青 205〜215℃ 50 mm/s 前後
※ 設定値はあくまで目安です。機種・環境・フィラメントのロットで前後しますので、最終的にはご自身の環境でテスト出力して詰めてください。

Stone と EasyWoodは事前に十分乾燥させておきます(フィラメントドライヤー、または真空保管袋+シリカゲルでの保管)。湿気を含むと吐出が暴れて、せっかくの粒子感や木目がムラになるからです。

ノズルは 硬化スチールの0.6mm。鉱物粒子と木粉はノズルへの研磨性が強く、真鍮ノズルだと数十時間で穴径が広がります。0.4mmでも出力可能ですが、粒子で詰まりやすくなるため 0.6mm の方が安全です。

寺院ジオラマを手に持って撮影した別角度カット

完成したジオラマを手に取ると、岩石部分のザラつき、寺院の木目、紅葉の艶。3つの素材が 「3つの世界」を一つの作品の中に同居させていました

塗装でこれを出そうとすると、岩・木・葉のテクスチャ塗りに最低でも数日。フィラメントを変えるだけで、それが「印刷直後の現物」として出てくる──これがマルチマテリアル時代の3Dプリントの真価です。

同じデータを、すべて木目だけで出すと

EasyWoodの木目だけで出力した寺院ジオラマ単色版

ここまで読んだあなたに、もう一枚、同じデータから生まれたもう一つの姿を見てもらいたい。

これは、先ほどとまったく同じ寺院ジオラマのデータを、すべてEasyWoodの木目だけで出力したものです。フレームから岩石、紅葉の樹、寺院まで、使った素材は木目1種類。AMS切り替えも、塗装も使っていません。

3素材を組めば、前の写真のような「世界観のあるジオラマ」になる。木目だけで出せば、「彫刻のような造作物」になる。──データは一つ。選ぶ素材で、作品の語り方そのものが変わります。

これが、フィラメントを変えるという行為の、本当の意味だと思います。

4. 詰まらないために、最低限これだけは

ウッド/ストーンフィラメントを初めて使う方が、最低限押さえておきたいポイントを4つだけ。

  • ノズル 硬化スチール推奨。真鍮ノズルは数十時間で摩耗します
  •  0.6mmが無難。0.4mmでも出るが詰まりやすい
  • 温度 190〜220℃。素材ごとにテスト出力で最適点を探る
  • 乾燥対策 フィラメントドライヤー、または真空保管袋+シリカゲルでの保管必須。湿気で吐出が暴れます

より詳しい設定や失敗事例の回避策は、別記事 ウッドフィラメントの印刷テクニック で扱っています。設定値の細かい話はそちらをご覧ください。

5. 次に作るのは、何にしますか

EasyWood Walnutで出力した寺院ミニチュア

EasyWoodとStone Filamentを使った作品をいくつか並べました。

寺院のミニチュアはWalnut単体、ベアの置物はRosewood、龍骨のフレキシブルチェーンはWalnut。単体素材でも、PLAでは出ない質感と存在感が生まれます。

PLAから一歩踏み出してみようと思っている方へ。
¥2,475から始められる質感の世界が、ここにあります。

#SK本舗作例 で、あなたの作った木目・石目の作品もぜひ教えてください。