最終更新:2026年6月3日/価格はすべて税込・SK本舗販売価格(2026年6月3日時点)
「AMS 2 Pro・AMS HT・AMS lite、どれを選べばいいの?」——Bambu Lab の自動マテリアルシステム(AMS)には目的の違う3種類があり、名前が似ているせいで混同されがちです。本記事は役割・乾燥温度・対応素材・対応機種・価格を実務目線で1本に整理した詳細ガイドです。短い結論だけ知りたい方は次の「30秒の結論」へ。すでに「2 Pro と HT どっち?」だけ確認したい方は2 Pro vs HT の早見FAQもどうぞ。
多色プリントを楽しみたいなら AMS 2 Pro(4色・乾燥最大65℃)。ABS/ASA/PA/PC など高吸湿エンプラを本格的に乾かしたい、あるいは TPU をAMS経由で扱いたいなら AMS HT(1スプール・乾燥最大85℃)。A1/A1 mini ユーザーは付属の AMS lite(4色・乾燥なし)が基本。理想は 2 Pro + HT の併用で、多色も本格乾燥も両取りできます。

まずは3機種を30秒で早見
AMS は「Automatic Material System(自動マテリアルシステム)」の略で、複数のフィラメントを自動で切り替えたり、湿気から守って乾燥保管したりするための周辺機器です。現行で押さえるべきは次の3種類。狙いがまったく違うので、まず役割の違いを掴みましょう。
名前が似ているため「上位・下位の関係(liteが下位、HTが上位)」と誤解されがちですが、3機種はそもそも目的が別です。AMS 2 Pro は「色数(多色)」を担う装置、AMS HT は「乾燥(素材の乾かし込み)」を担う装置、AMS lite は「A1シリーズで多色を始めるための入口」。つまり“どれが一番すごいか”ではなく、“自分のやりたいことに合うのはどれか”で選ぶのが正解です。多色をやりたい人が HT を1台だけ買っても色数は増えませんし、エンプラを乾かしたい人が 2 Pro を選んでも到達温度は65℃まで。この前提を最初に押さえておくと、以降の比較がぐっと読みやすくなります。
AMS 2 Pro
多色プリントの主力 / 4色 / 乾燥最大65℃
4スロットで4色を自動切替。RFIDで純正フィラメントの素材・色を自動認識し設定いらず。湿気対策の乾燥(最大65℃)も内蔵。「グラデーション・ロゴ・多色フィギュア」を狙う人の中心装置。
AMS 2 Pro を見るAMS HT
本格乾燥 & TPU対応 / 1スプール / 乾燥最大85℃
1スプール単位で、170Wヒーターにより最大85℃の本格乾燥。ABS/ASA/PA/PC など高吸湿エンプラを「使う直前まで乾かし続けたい」人向け。TPU をAMSで扱えるのは HT のみ(条件あり、後述)。
AMS HT を見るそして A1/A1 mini ユーザーの起点になるのが AMS lite。4スロットのオープンフレーム型で、こちらは多色専用(乾燥機能なし)です。現在は単体販売が終了し、A1 mini Combo などへの同梱が中心になっています。
| 項目 | AMS 2 Pro | AMS HT | AMS lite |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 多色プリントの主力 | 本格乾燥・エンプラ/TPU | A1系の多色 |
| スロット数 | 4スロット(4色) | 1スプール単位 | 4スロット(4色) |
| 乾燥(最大) | 65℃ | 85℃(170Wヒーター) | 乾燥なし |
| 構造 | 4スロットのドライボックス型 | 1スプールのドライボックス型 | オープンフレーム(非密閉) |
| TPU(軟質) | 非対応 ※自動給材も不可 |
対応(手動給材・条件あり) | 非対応 |
| SK本舗 価格 (税込・2026/6/3) |
¥59,800(単体) ¥62,440(電源Bundle) |
¥25,800 | 参考 ¥39,800 ※現在は同梱が中心 |
価格は2026年6月3日時点のSK本舗販売価格(税込)です。キャンペーンや在庫状況で変動する場合があるため、最新価格は各商品ページでご確認ください。
AMS 2 Pro を深掘り:多色プリントの主力

役割:4色の自動切替で「多色」を主役に
AMS 2 Pro は4スロット構成で、最大4色を1回のプリント内で自動的に切り替えます。グラデーション、2〜4色のロゴ、配色フィギュアなど「色を主役にしたい」造形の中心になる装置です。多色プリントを始めたい人が最初に手に取るのがこのモデル、と考えてよいでしょう。
「4色」と聞くと物足りなく感じるかもしれませんが、実用上の表現力はかなり広がります。たとえばロゴ入りの小物なら本体・文字・縁取り・差し色で4色、フィギュアなら肌・髪・服・小物で4色、といった具合に、4色あれば“それらしく見える”配色のほとんどはカバーできます。手で何度もフィラメントを差し替える「手動の色替え」と比べると、途中で色がズレる・入れ替えを忘れる・夜間に止まる、といったストレスがなくなるのが大きな価値です。「色を増やす」よりも「色替えの手間と失敗をなくす」装置、と捉えると 2 Pro の良さがイメージしやすくなります。
乾燥:最大65℃の湿気対策
2 Pro は乾燥機能を内蔵し、最大65℃まで対応します。ここで1点、誤解しやすいポイントを正確に。最大65℃に到達するのは周囲温度が25℃以上のときで、周囲が25℃未満だと65℃まで届かないことがありますが、これは不具合ではなく仕様です。寒い時期や冷えた部屋では到達温度が下がりうる、と理解しておきましょう。
なぜ周囲温度で到達温度が変わるのか——乾燥は「ヒーターで庫内を温めて湿気を逃がす」仕組みなので、外気が冷えていると庫内が温まりにくく、設定上の上限まで届きにくくなるためです。これは 2 Pro の乾燥が「保管しているフィラメントを湿気から守る・軽い吸湿を抜く」ことを主眼にした設計であることの裏返しでもあります。冬場に到達温度が伸びないと感じたら、まずは室温そのものを確認するのが正しい切り分けです。設置場所を玄関や窓際のような冷えやすい場所から、暖房の効いた室内へ移すだけで挙動が変わることもあります。なお、PLA/PETG といった標準素材であれば65℃クラスの乾燥で実用上は十分なことが多く、2 Pro の温度帯は「多色運用しながら湿気もケアする」という日常使いに合っています。
対応素材:PLA/PETG など標準素材が中心
2 Pro は標準的な素材の多色運用に向いています。一方で軟質TPU は非対応です。重要な区別として、2 Pro はTPUの自動給材には対応せず、乾燥保管のみ可という点があります(軟質TPUを使う場合は外部スプールから直送するのが基本)。
- 軟質TPUの自動給材(非対応/乾燥保管のみ可)
- 85℃級の本格乾燥が要る高吸湿エンプラ(PA・PC等)の「直前まで乾かし続ける」運用 → HT の領域
- 周囲が冷えていると乾燥到達温度が下がりうる(仕様)
向いている人
「とにかく多色プリントを楽しみたい」「ロゴやグラデの作品を量産したい」「PLA/PETG の湿気対策も一台でまとめたい」——こうした方には 2 Pro が中心装置になります。
AMS HT を深掘り:本格乾燥と高吸湿エンプラ

役割:1スプールを「使う直前まで乾かし続ける」
AMS HT は2 Pro とは設計思想が違い、1スプール単位で運用します。色数で勝負する装置ではなく、1本のフィラメントを高温で本格的に乾かしながら供給するための装置です。
乾燥:170Wヒーターで最大85℃
HT の核心は乾燥性能。170Wヒーターを搭載し、周囲が10〜25℃でも最大85℃を維持します。2 Pro の65℃と比べてより高温で、しかも寒い環境でも温度を保てる点が、エンプラ運用での決定的な差になります。
この「寒くても85℃を維持できる」という一文は、実務ではかなり大きな意味を持ちます。2 Pro の項で触れたとおり、乾燥は外気温の影響を受けやすく、周囲が冷えると到達温度が伸び悩むことがあります。HT は170Wというヒーター出力を背景に、周囲10〜25℃という現実的な室温レンジでも85℃をキープできる設計です。つまり「冬の作業部屋でも、設計どおりの高温乾燥が当てにできる」。ABS や PA、PC のように“湿気を吸うと如実に品質が落ちる”素材を年間通して安定運用したいなら、この温度の余裕と維持力が効いてきます。逆に言えば、HT は1スプールに集中して高温で乾かし込むことに特化しているため、色数(多色)の役割は 2 Pro に任せる、という分担が自然な形になります。
| AMS 2 Pro | AMS HT | |
|---|---|---|
| 乾燥 最大温度 | 65℃ | 85℃ |
| ヒーター | — | 170W |
| 到達条件 | 周囲25℃以上で65℃ (25℃未満は未到達あり・仕様) |
周囲10〜25℃でも85℃維持 |
| 単位 | 4色(4スロット) | 1スプール |
| 狙い | 多色プリント | 高吸湿エンプラ/TPU |
対応素材:ABS/ASA/PA/PC など高吸湿エンプラ向き
HT は ABS・ASA・PA(ナイロン)・PC(ポリカーボネート)といった吸湿しやすいエンジニアリングプラスチックの本格乾燥に向いています。これらの素材は湿気を吸うと造形品質や強度が落ちやすいため、「乾かしながら供給する」HT の設計が活きます。
こうしたエンプラは、開封直後はきれいに造形できても、しばらく放置すると糸引きや表面の白濁、層どうしの密着不良が出てくることがあります。原因の多くは「吸湿」。一度湿気を吸ったフィラメントは、使う直前にしっかり乾かしてやらないと本来の性能が出ません。HT は使うその瞬間まで高温で乾かし続けながら供給するため、「乾燥機で乾かしてから別のドライボックスへ移す間に、また湿気を吸ってしまう」という取りこぼしを防げます。機能部品・治具・強度が問われるパーツを作る人ほど、この“供給直前まで乾いている”という安心感の価値が分かるはずです。
TPUは HT だけ——ただし条件あり(重要)
「TPU をAMS経由で扱えるのは HT のみ」は事実ですが、誤解されやすいので正確に書きます。HT でも TPU は自動給材できません。TPU を使う場合は蓋背面の専用TPU出口から手動で給材します(乾燥保管は可)。「HT に挿せばTPUが自動で回る」わけではない、という点に注意してください。TPUの扱いは後ろの専用セクションでさらに詳しく解説します。
- 多色プリント(1スプール単位なので色数では 2 Pro が主役)
- TPUの「自動」給材(手動給材が必要)
向いている人
「ABS/ASA/PA/PC を本格的に使う」「機能部品・強度部品を作る」「TPU を乾燥保管しつつ使いたい」——こうした実用・エンプラ志向の方に HT が刺さります。
AMS lite を深掘り:A1シリーズの多色

役割:A1/A1 mini のための多色ユニット
AMS lite は A1/A1 mini(A1シリーズ)専用の多色ユニットです。4スロットのオープンフレーム型(非密閉)で、A1系で多色プリントを楽しむための入口になります。
乾燥:機能なし(多色専用)
lite は乾燥機能を持ちません。あくまで多色のための装置で、湿気対策の乾燥が必要なら別途フィラメントドライヤー等を併用する考え方になります。
対応素材:標準素材中心、CF/GFは原則非推奨
lite は標準素材の多色運用が中心です。軟質TPU は非対応。またCF/GF(カーボン・ガラス繊維入り)は原則非推奨で、PLA-CF/PETG-CF など一部の強化材のみ扱える、という位置づけです。研磨性の高い繊維材を無理に流すのは避けましょう。
CF/GF が原則非推奨なのは、カーボンやガラスの繊維が研磨剤のように経路を削ってしまうため。lite はオープンフレームのシンプルな構造なので、研磨性の高い繊維材を常用すると送り経路が摩耗しやすくなります。どうしても繊維強化材を扱いたい場合は、PLA-CF/PETG-CF のような“扱える範囲”にとどめるのが無難です。本格的に CF/GF やエンプラを使い込みたいなら、それは lite の役割ではなく 2 Pro や HT が対応する機種側で考えるべきテーマになります。lite はあくまで「A1シリーズで標準素材の多色を気軽に楽しむ入口」と割り切るのが、いちばん気持ちよく使えるポジションです。
- 乾燥(機能なし)
- 軟質TPU(非対応)
- CF/GF全般(原則非推奨。PLA-CF/PETG-CF など一部の強化材のみ)
向いている人・購入時の注意
A1/A1 mini で多色を始めたい方が対象です。ただし現在 lite は単体販売が終了しており、A1 mini Combo などへの同梱が中心です。これから A1系を買うなら Combo 構成を確認するのが現実的、と覚えておきましょう。
3機種 機能比較表(早見)
ここまでの内容を1枚にまとめます。迷ったらこの表に戻ってください。
| 比較軸 | AMS 2 Pro | AMS HT | AMS lite |
|---|---|---|---|
| キャラクター | 多色の主力 | 本格乾燥・エンプラ | A1系の多色 |
| 色数 | 4色 | 1スプール | 4色 |
| 乾燥 最大 | 65℃ | 85℃ | なし |
| 構造 | 4スロットのドライボックス型 | 1スプールのドライボックス型 | オープンフレーム(非密閉) |
| RFID自動認識 | 対応(純正) | — | — |
| 軟質TPU | 非対応 | 対応(手動給材) | 非対応 |
| CF/GF | — | — | 原則非推奨 (一部強化材のみ) |
| 対応機種 | X1/P1/A1系・P2S・H2系・X2D (接続条件は機種依存) |
X1/P1/A1系・P2S・H2系・X2D (接続条件は機種依存) |
A1/A1 mini 専用 |
| SK本舗価格 (税込) |
¥59,800 Bundle ¥62,440 |
¥25,800 | 参考 ¥39,800 (同梱中心) |
RFIDの自動認識は純正フィラメントの素材・色を読み取り、設定を自動化する機能です。サードパーティ製フィラメントでは自動認識の対象外となります(手動設定で利用は可能)。
乾燥温度「65℃/85℃」の意味と素材別ガイド

なぜ乾燥が重要なのか
多くのフィラメントは大気中の水分を吸う「吸湿性」を持ちます。湿気を吸ったフィラメントを使うと、糸引き・表面の荒れ・気泡・層間強度の低下といったトラブルが出やすくなります。AMS の乾燥機能は、この湿気をコントロールするための仕組みです。
イメージしやすいように仕組みを噛み砕くと、こうです。フィラメントが吸い込んだ水分は、ノズルの高温で一気に蒸発して「水蒸気」になります。この水蒸気が溶けた樹脂の中で小さな気泡をつくり、それが造形物の表面に出ると“荒れ”や“ぷつぷつ”として見え、内部に残ると層どうしの密着を弱めて強度を落とします。さらに、樹脂が出る瞬間に水蒸気が暴れることで、余計な“ひげ”(糸引き)も出やすくなります。「乾いたフィラメントできれいに早くプリントする」ための土台が乾燥、というわけです。だからこそ、湿気を吸いやすい素材ほど“使う直前まで乾いている状態”を保てるかどうかが品質を左右します。
65℃と85℃で何が変わるのか
AMS 2 Pro は最大65℃、AMS HT は最大85℃。素材ごとに「適した乾燥温度の目安」が異なり、PLA のような低温素材は65℃クラスで十分なことが多い一方、ABS/PA/PC などの高吸湿エンプラはより高温・長時間の乾燥が効きやすい、という違いがあります。HT が85℃を「寒い環境でも維持できる」点は、エンプラ運用で効いてきます。
| 素材タイプ | 吸湿の傾向 | 相性のよいAMS | ひとことメモ |
|---|---|---|---|
| PLA/PLA系 | 低〜中 | 2 Pro(65℃)/ lite+別ドライヤー | 標準素材。多色運用が中心 |
| PETG | 中 | 2 Pro(65℃) | 湿気対策で品質が安定しやすい |
| ABS/ASA | 中〜高 | HT(85℃) | 本格乾燥が活きる高吸湿系 |
| PA(ナイロン) | 高 | HT(85℃) | とくに吸湿しやすい。乾燥前提 |
| PC(ポリカ) | 高 | HT(85℃) | 強度部品向け。乾燥が効く |
| TPU(軟質) | — | HT(乾燥保管・手動給材) | AMSで扱えるのはHTのみ・条件あり |
本表の温度はAMS 2 Pro/HT の最大乾燥温度(それぞれ65℃・85℃)に基づく「相性の目安」です。実際の乾燥温度・時間はフィラメントメーカーの推奨に従ってください。素材ごとの最適値はメーカー公式の指定が一次情報です。
TPU(軟質フィラメント)の扱い 完全解説
大原則:AMSでTPUを扱えるのは HT だけ
軟らかいTPUは送り経路で詰まりやすく、AMSとの相性に注意が必要な素材です。AMS 2 Pro・AMS lite・標準AMSは軟質TPU非対応で、AMSでTPUを扱えるのは HT のみです。
ただし「HTでも自動給材は不可」——ここが最重要
誤解が最も多いポイントなので強調します。HT に対応とはいえ、HTでもTPUは自動給材できません。TPUを使うときは蓋背面にある専用TPU出口から手動で給材します。乾燥保管はHTで可能なので、「HTでTPUを乾かしながら、給材は手動で行う」というのが正しい運用イメージです。
| 機種 | 軟質TPU 対応 | 給材方式 | 乾燥保管 |
|---|---|---|---|
| AMS HT | 対応 | 手動(蓋背面の専用TPU出口) | 可 |
| AMS 2 Pro | 非対応 | —(外部スプール直送) | — |
| AMS lite | 非対応 | —(外部スプール直送) | — |
| 標準AMS | 非対応 | —(外部スプール直送) | — |
2 Pro/lite/標準AMSで軟質TPUを使いたい場合は、AMSを経由せず外部スプールから直接プリンターへ送る(直送)のが基本になります。
なぜTPUはAMSの自動給材と相性が悪いのか
TPUは“ゴムのように軟らかい”素材です。硬いPLAなどと違って、送り経路の中で曲がったり潰れたりしやすく、AMSのように何度も曲げて自動で送る経路では詰まりや座屈(折れ曲がり)を起こしやすいという性質があります。だからこそ、HTでも自動給材ではなく蓋背面の専用TPU出口からまっすぐ手動で送り込む方式が取られています。「軟らかい素材ほど経路はシンプルに・短く」が基本、と覚えておくと納得しやすいはずです。HT を選ぶ価値は、TPUを“自動で回す”ことではなく、TPUを良い状態(乾いた状態)で保管しながら、必要なときに手動で使える点にあります。
多色プリントの仕組み(RFID・パージ・色数)
RFID自動認識:純正なら設定いらず
AMS 2 Pro はRFIDで純正フィラメントの素材・色を自動認識し、スライサー側の設定を自動化してくれます。純正フィラメントを使えば「何を挿したか」を手入力する手間が省け、ミスも減らせます。
地味な機能に見えて、多色運用では効きます。4スロットすべてに別の色・別の素材を挿していると、「2番スロットは何色の何だったか」を取り違えがちです。RFIDが素材・色を読み取って設定に反映してくれると、“挿し間違いに気づかないまま誤った温度で印刷してしまう”といったミスを未然に防げます。一方で、サードパーティ製(純正以外)のフィラメントは自動認識の対象外です。使えないわけではなく、その場合は素材・色を手動で設定すれば問題なく利用できます。「純正なら自動でラク、他社製なら手動でひと手間」と覚えておけば十分です。
色の切り替えと「パージ」
多色プリントでは色を切り替えるたびに、ノズル内に残った前の色を吐き出して掃除する「パージ(フラッシュ)」が発生するのが一般的です。色数が増えるほどパージの回数・廃材も増える、という関係を頭に入れておくと、デザイン段階での配色判断がしやすくなります。
なぜパージが必要かというと、1本のノズルで複数の色を扱う以上、前の色が少しでも残っていると次の色に混ざってしまうからです。きれいな色境界を出すには、いったん前の色を“出し切って”からでないといけません。これは多色プリントの宿命のようなもので、装置の不良ではありません。実用的なコツとしては、色の切り替え回数そのものを減らす設計が効きます。たとえば「層ごとにコロコロ色を変える」より「ある程度まとまった面を同じ色で塗る」ほうが切り替えが減り、結果として廃材も時間も節約できます。配色を考える段階から“切り替えの少なさ”を意識すると、仕上がりと効率の両方が良くなります。
「最大7色までパージなし」はどの機構の話か
ここで機種固有の話を1つ正確に。フラッグシップ機 H2C の多色機構「Vortek」は、交換式6ホットエンド+固定1の構成で最大7色に対応し、7色まではパージなしで多色プリントできます。
補足:ここでの「7」は色数を指します。「最大7ホットエンド」という表現は誤りで、正しくは「交換式6+固定1」のホットエンド構成です。なおH2C本体の詳細・価格は本記事の範囲外のため、製品ページをご確認ください。
機種別の対応と増設(接続条件は機種依存)
後方互換:旧機種でも使える
AMS 2 Pro・AMS HT は後方互換性を持ちます。X1/P1(ファーム更新が必要)、A1シリーズに後方互換で、P2S・H2系・X2D にも対応します。同時接続・素材の混在も可能で、用途に応じて複数台を組み合わせられます。
「最大何台つなげるか」は機種で変わる
ここは間違えやすいので明確に。接続できる最大台数・合計色数はプリンター機種に依存します。「全機種一律で最大4台」ではありません。
| プリンター系統 | AMS接続の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| X1/P1/A1系 | 合計 最大4台 | AMS lite は1台のみ・他と混在不可 |
| P2S・H2系 | さらに多く接続可 | X1/P1系より多く繋げる(上限は機種依存) |
| AMS lite | 1台のみ | A1系専用・他AMSと混在不可 |
具体的な最大台数・合計色数は使用するプリンター機種の仕様で決まるため、増設を検討する際はお使いの機種の公式仕様を必ず確認してください。
AMSハブで複数台を連結

複数のAMSを連結する際は AMSハブ(¥9,680・税込)を使います。多台運用を前提にするなら、ハブの要否もあわせて構成を考えましょう。
たとえば「多色用に 2 Pro、エンプラ用に HT」を1台のプリンターでまとめて運用したい、というように複数のAMSをつなぎたい場面で出番になります。最初から多台運用を見据えているなら、本体・AMS本体と一緒にハブも揃えておくと、あとから「つなげなかった」という手戻りを避けられます。逆に「まずは1台だけ」という人は、ハブは将来の増設時に追加すればよく、初期構成に必須というわけではありません。“今すぐ何台つなぐか”でハブの要否を判断するのが分かりやすい考え方です。
価格と構成の選び方(単体/Bundle/併用シナリオ)
SK本舗での価格(税込・2026年6月3日時点)
| 製品 | 価格(税込) | ひとこと |
|---|---|---|
| AMS 2 Pro(単体) | ¥59,800 | 多色の主力 |
| AMS 2 Pro(電源Bundle) | ¥62,440 | 電源同梱の構成 |
| AMS HT | ¥25,800 | 本格乾燥・TPU |
| AMS lite | 参考 ¥39,800 | 現在は同梱が中心 |
| AMSハブ | ¥9,680 | 複数AMS連結用 |
シナリオ別おすすめ構成
シナリオ1:多色プリントを楽しみたい
→ AMS 2 Pro 単体(¥59,800)。4色+RFID自動認識で、ロゴやグラデの作品をすぐ始められます。電源まわりを整えたいなら Bundle(¥62,440)も選択肢。
シナリオ2:エンプラ/TPUの実用部品が中心
→ AMS HT(¥25,800)。85℃の本格乾燥で ABS/ASA/PA/PC を安定供給。TPUは乾燥保管+手動給材で扱えます。
シナリオ3:多色も本格乾燥も両方やりたい(王道)
→ AMS 2 Pro + AMS HT の併用。多色は 2 Pro、エンプラ・TPUは HT、と役割分担すれば死角がありません。複数台連結が必要なら AMSハブ(¥9,680)を追加。
併用が王道:2 Pro + HT という考え方
2 Pro と HT は競合ではなく補完の関係です。色を主役にしたいときは 2 Pro、素材の性能を引き出したいときは HT。両機種は後方互換・同時接続・混在が可能なので、多色は 2 Pro/高吸湿エンプラとTPUは HTと分担するのが、最も使い勝手のよい王道構成です。
「とりあえず1台」から始めて、用途が広がったらもう1台を足す、という育て方も現実的。まず多色から入るなら 2 Pro、まず実用部品から入るなら HT、という順序で考えるとスムーズです。
併用すると「やめなくていい」のが効く
1台だけだと、どうしても「多色を取るか、乾燥を取るか」の二者択一になりがちです。たとえば 2 Pro 1台で運用していると、ABS や PA を本格的に乾かしたい場面で温度が足りず、別途ドライヤーを用意する必要が出てきます。逆に HT 1台だと、多色作品を作りたいときに色数が足りません。2 Pro + HT を併用すれば、「多色も、本格乾燥も、TPUの乾燥保管も、どれもあきらめなくていい」状態になります。どちらか一方を妥協して使い続けるよりも、それぞれの得意分野をフルに使えるぶん、結果的に作れるものの幅が大きく広がります。
役割を固定すると運用がシンプルになる
併用の実務的なメリットは「迷わなくなる」ことでもあります。2 Pro は色(PLA/PETG の多色)、HT はエンプラとTPU(ABS/ASA/PA/PC、そしてTPUの乾燥保管)、と役割を固定してしまえば、「この素材はどっちに挿す?」で悩む時間が消えます。スロットの中身も整理しやすく、挿し間違いも減ります。多色作品と機能部品を両方手がける人ほど、この“役割固定”の運用が日々の作業を軽くしてくれます。
購入前チェックリスト
注文前に、次の項目を上から順に確認してください。
- 目的は「多色」か「乾燥・素材性能」か? 多色→2 Pro/乾燥・エンプラ→HT
- 使う素材は? PLA/PETG中心→2 Pro/ABS・ASA・PA・PC→HT/軟質TPUを使う→HT(手動給材)
- お使いのプリンター機種は? A1/A1 mini→lite(同梱中心)/X1・P1・P2S・H2系・X2D→2 Pro・HT
- 接続台数・合計色数の上限は機種依存。増設前提なら機種の公式仕様を確認
- 複数AMSを連結するなら AMSハブ(¥9,680)が必要か確認
- RFID自動認識は純正フィラメントが対象(2 Pro)
- 2 Proの乾燥到達温度は周囲25℃未満で下がりうる(仕様)。設置環境も考慮
うまく給材できない・詰まったときは
AMSを使っていてフィラメントの送りがうまくいかない、途中で止まる、といったトラブルが起きたら、まず素材と給材方式の組み合わせ(とくにTPUの手動給材)を見直しましょう。それでも解決しない場合は、原因の切り分け手順を1本にまとめた専用ガイドが役立ちます。
→ 詰まり・給材トラブルの対処は AMSフィラメント詰まり トラブルシューティングへ。
よくある質問(FAQ)
Q1. AMS 2 Pro と AMS HT、どちらを買えばいい?
多色プリントが目的なら 2 Pro(4色・乾燥最大65℃)、ABS/ASA/PA/PC など高吸湿エンプラの本格乾燥やTPUの扱いが目的なら HT(1スプール・乾燥最大85℃)です。両方やりたいなら併用が王道です。
Q2. AMSでTPU(軟質)は使えますか?
AMSでTPUを扱えるのは HT のみです。ただしHTでもTPUは自動給材できず、蓋背面の専用TPU出口から手動で給材します(乾燥保管は可)。2 Pro・lite・標準AMSは軟質TPU非対応で、外部スプールから直送して使います。
Q3. AMS 2 Pro の乾燥が65℃まで上がりません。故障ですか?
故障とは限りません。2 Proの最大65℃に到達するのは周囲温度が25℃以上のときで、25℃未満だと65℃まで届かないことがありますが、これは仕様です。寒い環境では到達温度が下がりうる、とご理解ください。
Q4. AMS lite はどの機種で使えますか?まだ単体で買えますか?
AMS lite は A1/A1 mini(A1シリーズ)専用です。現在は単体販売が終了しており、A1 mini Combo などへの同梱が中心です。乾燥機能はなく、軟質TPUは非対応です。
Q5. AMSは何台まで接続できますか?
接続できる最大台数・合計色数はプリンター機種に依存します。X1/P1/A1系は合計最大4台(AMS lite は1台のみ・他と混在不可)、P2S・H2系はさらに多く接続可能です。「全機種一律で最大4台」ではないため、お使いの機種の公式仕様をご確認ください。
Q6. 古い機種(X1・P1)でも AMS 2 Pro/HT は使えますか?
使えます。AMS 2 Pro・HT は X1/P1(ファーム更新が必要)、A1シリーズに後方互換で、P2S・H2系・X2D にも対応します。同時接続・素材の混在も可能です。
Q7. AMS lite でカーボン入り(CF)フィラメントは使えますか?
CF/GF(カーボン・ガラス繊維入り)は原則非推奨です。PLA-CF/PETG-CF など一部の強化材のみ扱える位置づけで、研磨性の高い繊維材を無理に流すのは避けてください。
Q8. 多色プリントで「7色までパージなし」と聞きましたが、どの構成のことですか?
フラッグシップ機 H2C の多色機構「Vortek」の話です。交換式6ホットエンド+固定1の構成で最大7色に対応し、7色まではパージなしで多色プリントできます。ここでの「7」は色数で、「最大7ホットエンド」という表現は誤りです。
多色で何を作る? 3Dデータの入手先
AMSで多色プリントの環境が整ったら、次は「何を刷るか」。日本語で安心して3Dデータを探すなら、SK本舗が運営する3D Data Japanから始めるのがおすすめです。多色映えするモデルから実用的な小物まで、用途に合わせて探せます。
