
小型射出成形機「SALTGATOR」登場──3Dプリントと組み合わせて広がるDIYの世界
アメリカ・テキサス州ディキンソンに拠点を置く新興企業 SALTGATOR Tech Inc. が、DIYメイカー向けのデスクトップ射出成形機「SALTGATOR」を発表しました。射出成形といえば、大型で高価な産業用機械を思い浮かべる方が多いはず。実際、従来は工場レベルでしか扱えなかったこの技術なんですが、今やガレージや教室、オフィスの机の上で手軽に扱えるようになっているんです。
この小型機はソフトで柔軟なプラスチックパーツを成形でき、3Dプリンターと組み合わせることでユーザー自身がオリジナルの金型をデザイン&プリントし、多彩なカスタム作品を生み出すことができます。3Dプリントの可能性をグッと広げる「SALTGATOR」に迫ります。
SALTGATOR誕生の背景には「釣りバカ」が?
この小型射出成形機のアイデアの源は意外にも釣り好きのホビーユーザーだったそうです。市販ルアーの代わりに、もっと手軽に自分好みのソフトベイト(柔らかい釣り餌)を作れないか――そんな思いから開発が始まったとのこと。社名の「SALTGATOR」も、釣行中に見かけたワニに由来します。塩水にも淡水にも適応するワニの姿が「柔軟性とタフさ」の象徴となり、製品コンセプトに結びついたんだそうです。
もちろん現在は釣り具だけでなく、スマホケースやキーボードのキーキャップ、トイやプロトタイプ部品まで、柔らかい素材を使ったものなら幅広く製作可能。身近な関心から新たな技術が生み出されるのは技術進歩の常とはいえ、まさか「釣りバカ」が背景にいたとはちょっと驚きです。

仕組みと操作性
以下は発表されているSALTGATORの特徴です。
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オールインワン設計:ソフトウェアや特別な調整は不要。箱から出してすぐ使える。
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材料容量:最大120ml(約4oz)のSoftGelを投入可能。
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加熱方式:気密チャンバー内で加熱し、においや煙を閉じ込める設計。
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温度調整:80℃〜210℃(176°F〜410°F)までタッチ操作で制御可能。
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成形時間:材料注入から固化まで約3分。
初心者でも扱いやすく、10〜15分で最初のパーツを完成できるシンプルさが売りとのことで、さらに残った材料は再加熱して再利用できるため、無駄も最小限に抑えられるそう。
対応する材料と金型
SALTGATORは自社製のSoftGel素材を用意しており、硬さの異なる3種類から選ぶことができいます。
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0A:超ソフト(ゼリーのような柔らかさ)
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20A:中間(シリコンラバーに近い)
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40A:やや硬め(消しゴム程度の硬さ)
これらは単体で使うことも、配合を変えてオリジナルの硬度を作り出すことも可能です。また、PLAやABSといった一般的な3Dプリント素材で作った金型にも対応。さらにPEEKやアルミ、銅、高耐熱シリコンやエポキシ樹脂など、多様な素材の金型と組み合わせることができるというんだから便利。
安全性と環境への配慮
家庭での利用を想定しているため、低温で扱える安全な材料を前提に設計されています。筐体は外側が熱くならないよう断熱され、万が一のやけどや漏れを防ぐための熱保護・密閉チャンバー構造も搭載。DIY愛好家だけでなく、教育現場やワークショップでも安心して使える点が大きなメリットになりそうです。

価格とコミュニティ
さて、気になる価格は約399ドル(Kickstarterの早期支援者は249ドル)と、日本円で約6万円前後と考えると産業用の射出成形機に比べて圧倒的に手頃です。追加の金型や材料パックも提供予定で、導入コストを抑えつつ幅広い実験ができます。
さらに、開発チームは専用Discordコミュニティを開設。ユーザー同士が金型デザインを共有したり、ノウハウを交換したり、作品を披露したりできる場を整えています。公式ライブラリとして無料のSTLデータも配布予定で、ユーザーはすぐに試作を始められます。
3Dプリンターの隣に置きたい一台
SALTGATORは、3Dプリントと並んで個人製造の可能性を広げる新しいツールといえるでしょう。釣りルアーからオリジナルガジェット、教育教材やアート作品まで、使い方は無限大。「自分のアイデアをすぐ形にしてみたい」――そんなDIYラバーにとって、SALTGATORはまさに3Dプリンターの好き相棒になりうる存在かもしれません。
SALTGATORのキックスターターページ
https://www.kickstarter.com/projects/saltgator/saltgator-the-1st-desktop-softgel-injection-molding-machine?ref=d8wqkr