
世界初のAI生成3Dプリントウェアラブルスニーカーが登場
3Dと2DのAIアプリケーションの組み合わせを使用して作成された世界初のAI生成3Dプリントウェアラブルスニーカー
3Dプリント衣料において最も進展が目覚ましいのがシューズ業界だ。
本欄でもこれまでに様々な3Dプリントシューズを紹介してきた。パーツ単位で見るならば、いまやほとんどの有名スニーカーブランドが3Dプリント技術を導入している。
HERON01がスニーカーを刷新する? 最先端3Dプリンターシューズに業界が大混乱
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ドイツが生んだUMAのような3Dプリントスニーカー|その斬新すぎるデザインが話題に
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一方で、それらの試みはあくまでも人間の設計したデザインをデータ化して3Dプリントするというプロセスによって作られてきた。当然だろう。3Dプリンターは出力マシンであり、デザインマシンではないのだ。
しかし最近、バルセロナを拠点とするフットウェア業界のイノベーションプラットフォームであり、経験豊富なフットウェアの専門家を世界中から集めて、オンライントレーニング、メンタリング、コンサルティング、R&Dサービスを提供しているFootwearologyが発表したシューズにおいては、その大原則が覆されていた。
同社が発表したのは、3Dと2DのAIアプリケーションの組み合わせを使用して作成された、世界初のAI生成3Dプリントウェアラブルスニーカーだ。
好きなキーワードを入れるだけでAIがスニーカーのデザインを生成
果たしてどのように製造されたのかというと、まず使用されたのはDalle-2と呼ばれる画像生成AIツールだった。これは、入力したフレーズから画像を生成するAIツールであり、今回実際に使用されたフレーズは、「High quality photo of a shoe composed by radolarian fossils, designed by Ernst Haeckel, 8k, digital art.(エルンスト・ヘッケルがデザインした放散虫の化石で構成された靴の高品質の写真、8k、デジタル アート)」というものだったという。ちなみに放散虫とはシリカの小さな微小骨格をもつ原生生物であり、ドイツの動物学者であるエルンスト・ヘッケルによる美しいスケッチで知られている。
Cyrtoidea(エルンスト・ヘッケル)
結果、Dalle-2からはいくつかの興味深いデザインが生まれたそうだが、それらは2D画像のみだった。そこで同社のデザイナーは同じフレーズを今度はStable Diffusion 2.0という3Dデータ生成ツールに入力し、3Dプリントで出力可能な3Dフォームとシルエットに収まる画像を生成。さらに3DCGソフトウェアであるHoudiniで靴のモデルを作成するために5つのカーブだけを描画し、それをStable Diffusion 2.0のAIによって生成されたディスプレイスメントマップをモデルにラップ。この3DモデルをArtillery Sidewinder X2という3Dプリンターで出力したものが、今回のAI生成3Dプリントウェアラブルスニーカーだ。なお、素材にはFilaflexというゴムライク・フィラメントを使用したという。
さて、画像を見てみると、なるほど放散虫の面影のようなものはある。デザイン性として優れているか、あるいは自分自身がこれを履きたいかとなると、ちょっと意見が分かれそうなところだが、これが非常に面白い試みであることは間違いない。なんせ、デザインしたのも人間でなければ、製造したのも人間ではないのだ。人間の役割は、デザインのキーワードの決定と、いくつかのプロセスの操作のみだ。
AIのデザイン力については日進月歩。自分の大好きなキーワード群から作られたオリジナル3Dプリントスニーカーに誰もが気楽に足を通せる日もそれほど先ではないかもしれない。