3Dプリント技術とマイクロ波を用いた革新的サーミスタが開発
あらゆるところで使用されているサーミスタとは?
サーミスタという言葉をご存知だろうか。
サーミスタとは「温度変化に対し抵抗値が大きく変化する半導体」のこと。要するに熱を感知した際の抵抗値の変化を利用した温度センサーであり、安価で安定的に温度をコントロールすることができるという特性から、幅広い分野、用途で使用されている。
たとえば、自動車には1台につき15本程度のサーミスタが用いられているのだが、これはエンジン温度や外気温などを確認し、エンジン内の燃焼が最適になるようにコントロールするため。あるいは、エアコンにもサーミスタが使用されており、これにより室外機と室内機の温度を確認し、全体温度をコントロールしている。そしてまた、私たちが普段から使用している3Dプリンターにもサーミスタは温度測定のために使われている。
私たちの暮らしになくてはならないこのサーミスタに、実は現在、革新が起こりつつある。その革新において3Dプリンタが重要な役割を担っているらしい。
温度測定範囲も従来より広く形状も自由自在の新時代サーミスタ
革新的サーミスタを開発したのは、グラスゴー大学、サウサンプトン大学、ラフバラー大学の研究者らだ。「Nature Communications」の記事によれば、研究チームはマイクロ波と3Dプリンティング技術を利用して革新的なフレキシブル温度センサーを開発したのだという。
画像:University of Glasgow
この新しいサーミスタのユニークな点は、高周波 (RF) 対応であることで、センサー自体は、独自の電源を必要とせずに外部ユニットと通信することができ、かつ正確な温度読み取りが可能だという。温度測定の範囲は、30°Cから200°C以上と、従来のサーミスタと比較してその適用範囲が大幅に広がっている。この広い温度範囲により、複数のセンサーを1つのセンサーに置き換えたり、従来のサーミスタには通常適さない環境での利用が可能となるという。
さらに、デバイスのフォームファクターは3Dプリントで変更することもできる。研究チームは、センサーの形状をさまざまな形に変更し、電子機器やその他のデバイスへの統合の可能性を高める能力を実証してみせている。
画像:University of Glasgow
センサーの素材は、それぞれ柔軟性と耐久性で知られる材料であるポリジメチルシロキサン (PDMS) と短鎖炭素繊維。この構成により、センサーを特定の形状に適合させるだけでなく、より広い領域で利用することが可能になるそうで、たとえば携帯電話の筐体の一部となりながら温度センサーとしても機能するなど、日常の物品に組み込まれる可能性もあるとのこと。さらに、土壌区画全体の温度変化を監視するために、それをより大きなマットに織り込んだり、あるいは衣服やプラスチック部品に埋め込んだりすることもできるというのだからすごい。要するに、今まではサーミスタを搭載することが難しかった様々なデバイスに、その搭載が可能となるというわけだ。
今後、どのように活用されていくことになるのか、注目だ。