
3Dプリントで唯一無二の「物理トークン」 所有権と真正性をオフラインで守る新技術
3Dプリント技術を活用して、貴重なブレスレットなどの高価値品に「唯一無二の物理トークン」を付与し、所有権や真正性を証明する取り組みが注目されています。これは「S.A.M.(Signatures Anti-Mimicry)」と呼ばれる仕組みで、物理的に複製が困難なサインを3Dプリントで生成し、所有者情報や秘密鍵を内部に埋め込めるのが特徴です。認証は完全オフラインで行われ、サーバーやデータベースを介さないため、外部からの攻撃や不正アクセスのリスクを極力抑えられるといいます。

量産と個別性を両立する3Dプリントの強み
この技術の要となるのは、3Dプリントだからこそ可能な“量産しながら一つ一つが異なる構造を持つ”という仕組みです。
内部の物理コードは人間の虹彩のように一つとして同じものがなく、表面の模様をコピーしても内部構造が一致しない限り認証は通りません。
既存の刻印やシリアル番号とは異なり、可視部分だけでなく内部の物理特性まで含めて“本物である”ことを示せるのが大きなポイントです。
必要なのは市販のFDMプリンタと専用フィラメントだけ
S.A.M.トークンの発行には、特別な産業用機械が必要というわけではありません。ダブルヘッド式のFDMプリンタと、専用の「S.A.M.コーディング素材」というフィラメント、そしてGコードを生成する専用アプリケーションを使えば、必要なトークンを短時間で出力できます。出力後は専用の物理デコーダーで読み取ることで、埋め込まれた情報をオフラインで認証します。

個人でのプリントも可能ですが、製造からカスタマイズまでをまとめて依頼することもできるため、技術に詳しくなくても導入できるのが特徴です。秘密鍵や所有情報は外部に共有されない仕組みのため、委託してもセキュリティは保たれます。
データ流出対策としての可能性にも期待
近年、3Dプリント分野では設計データの流出や模倣品の問題が指摘されることも増えています。物理トークンで真正性を保証する仕組みは、ブランド品や高級品だけでなく、工業部品や限定生産品などでも活用が期待されています。量産性と個体識別を両立できる技術として、3Dプリントの新たな役割を示す事例になりそうです。
詳細は公式サイトで
S.A.M.の仕組みや技術の詳細は、公式サイト(signaturesam.com)でも公開されています。認証や真正性の課題に興味がある人は一度チェックしてみても良さそうです。