3Dプリントに“模様”を描く?選択的アイロニングという新しい仕上げテクニック

FDM方式の3Dプリンターには「アイロニング(Ironing)」という機能があります。
これは、プリントの最後にノズルをもう一度トップ面の上でゆっくり動かし、少量のフィラメントを押し出しながら表面を均すことで、より滑らかな仕上がりを作るテクニックです。
しかし、この機能を少し変わった使い方をすると、単に表面を綺麗にするだけではなく、模様やロゴを描くことができるんです。
その方法が「選択的アイロニング」です。
アイロニングを“模様描き”に使う
通常のアイロニングは、トップ面全体に均一に適用されます。つまり、表面全体をならして滑らかにするための処理です。
選択的アイロニングはその発想を少し変えます。表面の一部だけにアイロニングを適用するのです。
これにより、光沢のある部分と通常の積層ラインが残る部分のコントラストが生まれ、結果として模様が浮かび上がるようになります。
しかも面白いのは、この方法ではモデルの高さを一切変えずにデザインを追加できることです。
つまり、「色を変える必要なし」「追加のパーツなし」「形状変更なし」で、ロゴやパターンを入れることができます。

実装方法はちょっとトリッキー
このアイデアを考えたのは、Julius Curtというクリエイターです。
コンセプトはシンプルですが、実際に実装するのは少し工夫が必要でした。
基本的な流れは次のようになります。
- CADで模様を「1レイヤー分の高さ」でモデルに追加する
- スライサーでトップ面のアイロニングを有効にする
- 後処理スクリプトでそのレイヤーを削除する
するとどうなるか。
スライサーは「ここがトップ面だ」と認識してアイロニングを生成します。しかし後処理でそのレイヤーを削除すると、アイロニングだけが残るのです。
結果として、トップ層の表面にだけ模様が現れます。

追加の高さゼロでデザインを入れられる
この方法の面白いポイントは、パーツの形状が変わらないことです。
例えば、製品ロゴやパーツ番号、模様やテクスチャなどを入れたい場合、普通はモデルを彫刻したり別パーツを貼ったり、色を変えりしなければなりませんでした。
しかし選択的アイロニングなら、表面の質感だけで模様を作るので、厚みを増やさずにデザインを追加できます。
実験的だけど面白いアイデア
現時点では、この方法はまだ実験的なハックです。スライサーに正式機能として搭載されているわけではありません。
ただし、最近の3Dプリントコミュニティではアイロニングを応用した研究や実験が増えています。
つまり、「表面をならす機能」が「デザインツール」に変わりつつあるのです。
本来は「仕上げのための機能」だったものが、まったく違う用途に使われ始める。今回の選択的アイロニングもその典型例です。
もしかするとそのうちスライサーには、「表面テクスチャを描くツール」が標準で入るようになるかもしれません。
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