3Dプリンターにさらなる“価格革命”の予感!――光で動くチップがものづくりを変える?
「3Dプリンターの仕組み自体が、まるごとチップの中に入るかもしれない」
そんな未来が、現実味を帯びてきています。
その鍵を握るのが、いま急速に進化しているフォトニック・チップ(Photonic Chip)――
つまり“光で動く半導体”です。
電子の次は光の時代へ
フォトニクス(Photonics)は、光を制御して通信・演算・計測などを行う技術。従来の電子回路が電子を動かして処理するのに対し、フォトニックチップは光(フォトン)を使うため、スピードが速く、消費電力が少なく、そしてより小型にできるという利点があります。
この“光チップ革命”は、すでにAIやデータセンター、通信分野で大きな注目を集めていますが、実は――3Dプリンターにも巨大な影響を与えそうだと話題になっているんです。
MIT×UTオースティン研究チームが示した「光の3Dプリンター」
2024年に発表されたMITとUTオースティンの研究では、シリコンフォトニクスチップを使ったチップベースの3Dプリンターが実験的に開発されました。
この仕組みでは、通常の3Dプリンターにある光源やミラー、モーターといった可動部が一切不要。
チップそのものが光を発し、樹脂を硬化させ、造形をコントロールするのです。
つまり――「レーザー+光制御+造形機構」が、1枚のチップに全部入ってしまう。
この発想が実現すれば、3Dプリンターは「機械」ではなく、「スマホ部品のようなデバイス」へと変わるかもしれません。控えめにいってもとんでもない技術です。
仕組みはシンプル、影響は絶大
チップの中では、液晶ベースの導波路が光を操り、レジンを硬化させる仕組み(“光位相アレイ”と呼ばれる技術)を採用しています。
試作段階では、わずか60ミクロン(0.06mm)の微細パーツを出力することに成功。今後は3D構造の造形へと発展させる予定とのことです。
この方式のすごいところは、
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可動部がないので壊れにくい
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製造コストが激減する
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超小型化できる(手のひらサイズの3Dプリンターも夢じゃない)
という点。
つまり、“安く・速く・小さく”の三拍子がそろうのです。もちろん、大型サイズの出力をする上ではまた別の考えが必要ですが、いずれにせよ現在の3Dプリンターの限界を超越しています。
「3Dプリンター=高価な機械」という常識が変わる?
もしフォトニックチップによる3Dプリンターが量産化されれば、現在のように大型の光学ユニットを必ずしも使う必要がなくなります。
その結果、メーカー価格が大幅に下がり、家庭用3Dプリンターがさらに身近になり、企業が独自の“オンチップ製造装置”を自作できるといった価格革命・構造革命が起こる可能性も。
「プリンター」というより、もはや“造形チップ”をパソコンにつなぐだけ。この技術が一般化する時代が本当に来るのかもしれません。
投資家も注目、“光チップバブル”到来?
ちなみに、この分野にはすでに世界中のスタートアップが続々と参入中です。たとえLightMatter社はAI向けフォトニック通信で4億ドル調達し、Scintil社は光チップ開発で5800万ドル調達、OpenLight社は誰でも設計できる“光チップ設計環境”を構築しています。
こんな具合に、AI・通信・クラウドを超えて光チップは「ものづくり」の世界全体へ広がりを見せています。
実際、研究者たちは、「3Dプリンター用チップが作られるのは時間の問題」と予測。遠くない将来、汎用チップを転用するだけで、既存の3Dプリンターより桁違いに安い装置が生まれるかもしれません。
参照記事:https://3dprint.com/321144/photonic-chip-3d-printing-opportunity/
