廃棄ペットボトルをPETフィラメントに変換するPetalotプロジェクトとは?|今以上に3Dプリンターを気持ちよく使うために
プラスチックの一人あたり消費量において日本は世界第二位
3Dプリント技術の浸透は既存のサプライチェーンを見直し、また製造業における原材料の無駄遣いを減らすことを可能にするといわれている。これは製造業がもたらす環境負荷を減らすための取り組みに大いに資するとされているポイントだ。
ただし、その一方で環境問題への取り組みという観点においては、3Dプリント技術には大きな弱点もある。それは3Dプリンターが3Dプリントを行う際の主要な原材料の一つであるプラスチックの問題だ。
プラスチックによる海洋汚染は深刻である。通常の素材と異なり、プラスチックはそう簡単に自然分解されない。一般的にその分解には450年の月日を要するとされており、それゆえ海洋に廃棄されたプラスチックはかなりの長期間、海中を彷徨い続けることになる。さらに、その分解の過程においては有害なマイクロプラスチックも発生する。
とりわけ2014年の調査によれば日本は国民一人あたりのプラスチックの消費量、廃棄量が米国に次いで世界で2番目に多いと言われる。これはちょっと他人事では済まされない問題なのだ。
とはいえ、プラスチックという素材それ自体に罪はない。プラスチックは人間がかつて発明してきた様々なものの中でも非常に優れた発明品の一つだ。私たちが享受している現代的な暮らしは、プラスチックなしでは決して実現しなかった。だから、これは0か100かの議論ではない。重要なことは、プラスチックの増えすぎてしまった総消費量を減らすこと、そして、そのためのリサイクル方法の確立だ。
ペットボトルからフィラメントを|Petalotの試み
そうした背景を受け、3Dプリントの世界においても、現在、プラスチックを上手にリサイクルするためのプロジェクトを実践する人たちも現れている。たとえばPetalotと呼ばれるプロジェクトもその一つだ。このプロジェクトでは、プラスチックの総消費量の中でも単独で15%近くを占める使用済みペットボトルを3Dプリント用のフィラメントへとリサイクルするためのツールを提供している。
画像/Petalot
Petalotがそのリサイクルにいて用いている方法は通常の3Dプリント用フィラメントを製造する方法とほとんど変わらない。一般的にフィラメントは溶融プラスチックをダイスと呼ばれる開口部から押し出し、それを冷却してスプールに巻き取ることによって作られる。
Petalotの場合は、古い3Dプリンターのホッドエンドを改造した金型の両サイドにペットボトルカッターとフィラメントワインダーを配置し、それによってペットボトルを螺旋状のストリップにカット。その先端が3Dプリンターのホットエンドを介してスプールに巻き取られることで3Dプリント用フィラメントとしてリサイクルされる。
画像/Petalot
こうして作られたPET素材のフィラメントは弊社でも扱いのあるCreality Ender3で使用することができるという。ただ、PET素材はフィラメントとしては反りやすいという特質もあり扱いが難しい部類の材料でもある。ただ、一方で剛性の高いオブジェクトを出力できるという利点もあり、適切に使用すれば十分に使える素材となる。
開発者はこのPetalotの製造方法をオープンにしている。基本的には古い3DプリンターやPCのハードウェア、木製パレットなどの素材があれば自作することができるようだが、それなりに手間がかかるという点は否めない。これはあくまでも3Dプリンターユーザーの立場からプラスチック問題にアプローチするための一つの実践例であり、より多くの人がリサイクルフィラメントを当たり前に使用するようになるためには、さらなる試行錯誤が必要だろう。
画像/Petalot
いずれにしても、せっかくの素晴らしいテクノロジーなのだ。今以上に気持ちよく3Dプリンターを使うことができるようになるのなら、それに越したことはない。プラスチックをただの憎まれ役にしないためにも、さらなる技術の発展を願うばかりだ。
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