金属3Dプリントを刷新する「ナノ粒子ジェッティング(NPJ)」とは?
急成長を続ける金属AM業界のゲームチェンジャー
金属の3Dプリントは、近年急激に成長しており、あるレポートによると、世界の金属3Dプリント市場規模は 2023年に推定49億ドルに達し、2030年まで22.85%の割合で成長し続けていくだろうと予想されている。
多くの注目すべき企業がある中で、現在、その躍進が期待されている企業の一つにイスラエルのXJetがある。XJetは画期的な材料噴射技術「ナノ粒子ジェッティング(NPJ)」を開発した企業として知られており、高品質の最終用途部品の金属およびセラミックによる3Dプリントの限界を押し広げている。
NPJの特徴はビルドトレイ上に噴射される金属またはセラミックの固体ナノ粒子を含むインクを使用する点にある。粉末は使用せず水溶性のサポート材料を使用することから廃棄物がほとんど発生せず、環境にもより優しく、また使用面でも安全性が高いと言われている。そして、NPJによる出力は、特に表面粗さと完成部品の特性の点で、より高品質になることも確認されている。
NPJのAMソリューション(画像/XJet)
その精巧さゆえ、XJetのNPJは主にハイファッションアクセサリーや、高級時計、スマートウォッチといったウェアラブルな製品の製造に用いられている。複雑な表面部品を非常に高い品質で出力する上でNPJは抜群の力を発揮するのだ。
(画像/XJet)
一般的にファッション性の高いアクセサリーなどの装身具はデザインに対する高い要求を満たすためにも伝統的な製造手法によって製作される場合が多い。しかし、そうした伝統的手法は製造に多くの時間を要する。また、従来の技術の中にはそのプロセスに環境汚染が伴われる場合もある。
NPJは、そうした手作業によるプロセスのコストを削減しつつ、さらにクオリティを損なうことのない製造テクノロジーとして注目されている。NPJによって達成される表面仕上げと解像度の高さは、高級品市場にとって極めて重要であり、他のAMテクノロジーが提供できるものよりも明らかに一歩進んでいる。
XJet社は自社の技術が時計からジュエリーに到るまであらゆるものに変革をもたらすことを期待しているという。
さらに、XJetのNPJはセラミック分野においても注目されている。セラミック部品は生体適合性が高いため、特に医療分野での使用に適しており、その点、XJetが医療用途向けに提供しているXJet Carmel 1400C積層造形システムは、大手セラミックメーカーからも大きく期待されている。
果たしてNPJは金属3Dプリント業界の真のゲームチェンジャーになりうるのだろうか。今後の展開から目が離せない。