紫外線から近赤外線へ? 光造形3Dプリンターに迫る大転換
近赤外線を使用することは紫外線を使用する場合と比較して様々な利点がある
光造形ユーザーにとっては寝耳に水かもしれない。
ご存知のように、光造形3Dプリンターとは、液体レジンに紫外線を当てることによって硬化し、オブジェクトを造形する3Dプリンターのことである。光で造形するから光造形。そして、その光とは他でもない紫外線のことだ。
これまで様々な光造形3Dプリンターが生産されてきたが、この基本設定に関してはいずれのマシンも共有していた。しかし、もしかすると、近い将来、その基本の部分が変わってしまうかもしれない。
現在、テキサス大学オースティン校の研究者たちはある研究を進めている。その研究とは、近赤外線(NIR)を使用した光学3Dプリントの研究だ。研究チームによれば、近赤外線を使用することは紫外線を使用する場合と比較して様々な利点があるという。一体どういうことだろうか。
研究チームいわく、紫外線にはある欠陥があるという。それは紫外線には特定の材料を劣化させ、媒体を傷つけてしまうという性質があるという点だ。また、光の波長を短くすると、解像度が低下し、硬化速度が遅くなるという問題もある。
彼らによれば、近赤外線を用いた場合、その問題は克服されるという。彼らが提唱しているのは、急速な光硬化を可能にするNIR吸収シアニン色素という光を、ナノ粒子を注入したレジンに照射する3Dプリントのようだ。実際、それがどの程度変わるのかといえば、いわく一層あたり60秒という速度と、300マイクロメートルの解像度が今すぐにでも実現可能とのこと。これは確かにすごい。
上がデジタルファイル、下がNIRとカスタムレジンを用いた実験プリント。(テキサス大学オースティン校)
ただし、現状でこのデータはあくまでも概念実証に基づくものだともいう。まだ具体的な近赤外線3Dプリンターの開発が行われているわけではなく、その事前段階における実験ということだ。
しかし、これが光造形の世界を根底から揺るがす可能性を秘めた研究であることは間違いないだろう。光造形推しのSK本舗としては、今後の研究の発展に注視し続けたい。