
光造形3Dプリントの弱点である「脆さ」を克服する鍵は「熱」にある|精密で、速く、頑丈な、次世代の光造形3Dプリンターへ向かって
レジン3Dプリントの最後の欠点を改善する驚きの実験
レジンを用いた光造形3Dプリントの弱点として語られがちなことの一つにその造形物の相対的な脆さがある。もちろん、光造形はその精密さ、造形速度などにおいて、他の造形方式を凌ぐ利点を備えているわけだが、この脆さという弱点を嫌って、光造形を選ばないという人もいるのではないかと思う。
果たして光造形方式にとって、造形物の相対的な脆さは決して克服できない宿痾なのだろうか。
実はここに関して、3DプリントYouTuber「CNC KITCHEN」が画期的な研究を示している。あるいはこの研究によって、「光造形=脆い」というイメージが払拭されるかもしれない。
一般的に知られているように光造形においてはUVライトのもと、回転する硬化ステーションにオブジェクトを置くことによって、造形=硬化を行う。ここで重要だとされているのは、UV、つまり光だが、実はそこには熱要素も関係しているようなのだ。
このことを実証するために、動画ではUV硬化プロセス中の温度の影響をテストすべく、テスト部品をUVランプと一緒にオーブンに入れている。その結果、高温度を加えながら硬化したオブジェクトが、そうではないオブジェクトに対して、引張強度が大幅に向上することが分かったのだ。
以下はその実験のグラフである。80度と26度の環境変化によって、引張強度が明らかに変化しているのが分かるはずだ。
画像/CNC KITCHEN
どうやら熱を加えることで衝撃強度の方は多少低下する可能性があるようだが、引張強度の大幅な向上と比較すると、その低下はわずかだ。これは光造形3Dプリント特有の脆さを改善しうる可能性を示す実験結果であると言える。
もちろん、まだ実験データは限られている。実験対象となるレジンの種類を増やし、より精密な検証が行われる必要もあるだろう。
ただ、光造形3Dプリントの最大の弱点が克服されうる一筋の可能性は示された。精密で、速く、頑丈な、次世代の光造形3Dプリンターが開発される日も、そう遠くはないかもしれない。