LiDARとは? 3Dプリントやスキャニングの精度と効率を革新する技術に迫る
LiDAR(ライダー)という技術をご存知でしょうか?
LiDARはレーザーパルスを使って対象物との距離を測定し、3Dモデルを再構築するリモートセンシング技術のこと。主に、レーザースキャナー、LiDARセンサー、そして取得データを処理するプロセッサから構成されています。
特定の波長のレーザー光を照射することで、LiDARは毎秒数百万回もの光パルスを対象表面に送信します。これらの光が反射すると、センサーがその情報を受信し、「点群」として記録します。この点群が、スキャンによって取得されたデータの3次元的な座標情報(XYZ)を表しています。
プロセッサは、光パルスが対象に到達して戻ってくるまでの時間(ToF:Time of Flight)を測定し、そのデータとレーザーの発射角度を使って、1点ずつ3D座標を計算します。こうして、高密度かつ高精度な点群データが生成され、対象物や空間を非常に詳細に3Dで再現できるのです。
フォトグラメトリとはどう違う?
LiDARとフォトグラメトリは、いずれも物体や場所を三次元的に記録・マッピングするという点で共通していますが、そのアプローチは異なります。
フォトグラメトリは、異なる角度から撮影した2D画像をもとに3Dモデルを生成する手法で、画像内の2D情報から3次元的な形状を再構成します。これに対してLiDARは、レーザーを使って環境をスキャンし、点群を直接取得することで3Dモデルを作成します。この点で、LiDARは構造化ライト型3Dスキャナーに近い技術です。

フォトグラメトリはカメラと自然光を使用しますが、光の反射や透明素材など、条件によっては精度が落ちることがあります。また、画像の解像度や撮影角度の数によって、最終的なモデルの品質が左右されるという弱点もあります。
一方、LiDARは照明条件に依存せず、複雑な形状の表面でも高い精度でスキャンできるのが強みです。特に夜間や視界が悪い状況でも機能するのが特徴です。コスト面では、フォトグラメトリの方がカメラを用いる分、初期費用が抑えられます。ただし、取得したデータの処理には手間がかかるため、正確性という点ではLiDARに軍配が上がります。
LiDARスキャナーの種類と用途
LiDARスキャナーは大きく2つに分類されます。
- 地上型(TLS):固定式または車両などに搭載する移動式があり、建物や遺跡などの高精度な記録に使われます。ロボット掃除機などに搭載されている回転式のLiDARもこの一種です。
- 航空型(ALS):航空機やドローンに搭載され、空中から地形や地表の高低差などを測定します。Google Earthの地図情報もこの手法で得られたデータを活用しています。
日常の応用例としては、ロボット掃除機の部屋マッピング、自動運転車の障害物検知、iPhoneでのAR表現強化などがあります。また、Polycamなどのアプリを用いれば、iPhoneやiPadを使って室内の3Dスキャンを簡単に行うことも可能です。

3DプリンターやスキャナーへのLiDARの活用
現時点では、ほとんどの3DプリンターにはLiDARは標準搭載されていませんが、一部の機種で革新的な活用が始まっています。
例えばCrealityの「K1 MAX」は、プリントベッド上の異常を検出するためにLiDARを使用しています。これにより初層だけでなくその後のレイヤーの品質もリアルタイムでチェックでき、安定した造形が可能になります。Bambu LabのX1シリーズでは、LiDARが押出圧やフロー率の制御に活用されています。
これらの先進モデルは、カスタムプロジェクトや産業用途での応用も視野に入れられており、価格はK1 MAXで約700ユーロ、Bambu Lab X1シリーズでは1000ユーロを超える場合もあります。
LiDARスキャナーとしては、FJD Trion P1(屋内外対応)や、Artec Ray II(最大130mのスキャン範囲を誇る)などが代表的です。価格帯は広く、安価なモデルで$45前後から、Artec Ray IIのようなプロ用では10万ドルを超えることもあります。
LiDARのメリットと課題
LiDAR最大の魅力はその精度とリアルタイム性です。スキャン中に即座にフィードバックが得られるため、作業効率を高め、出力品質の向上にもつながります。
一方で、プロ用の高性能モデルは価格が非常に高く、また取得した高密度な点群データは処理にも時間と計算リソースを要します。iPhoneやiPadなどに搭載されているコンシューマー向けLiDARもありますが、やはりTLSなど専用機には性能で劣ります。
LiDARは今後、3Dプリントやスキャニングの精度と効率を革新するポテンシャルを秘めた技術です。高価ながらも、用途と目的によってはその価値は十分に見合うものとなるでしょう。これからの3Dものづくりの現場では、LiDARの導入がより一般的になっていくかもしれません。
レーザー/赤外線スキャナーとの比較
LiDARは確かに非常に優れた技術ですが、その一方、3Dプリンターユーザーにとっては多くの場面ではレーザー/赤外線スキャナーの方が有用です。
レーザー/赤外線スキャナーは、LIDARに比べてコンパクトかつコスト効率に優れており、特定用途で非常に役立ちます。レーザースキャナーは高精度で形状や表面ディテールを細かく計測でき、建築や工業分野では部品の寸法確認やリバースエンジニアリングに重宝されます。設置や操作も比較的簡単で、現場での即時スキャンや迅速なデータ取得が可能です。
赤外線スキャナーは温度差を可視化できる点が最大の利点で、設備の異常検知や人体の非接触検温、夜間監視などに活用されています。光が届かない暗所や煙の中でも測定できるため、環境を選ばず運用できるのも強みです。
これらのスキャナーは、LIDARのような広域測量には不向きですが、狭い範囲での詳細な解析や温度・表面状態の観察においては現状で最も優れた選択肢です。価格、手軽さ、実用性を求める場面では、レーザー/赤外線スキャナーが強力なツールとなるはずです。
なお、弊社SK本舗では多くのレーザー/赤外線3Dスキャナーを取り扱い中です。
たとえばRevopoint製の3Dスキャナー『MIRACO』はPCに繋がずに使えるハンディオールインワンスキャナーであり、そのスキャン精度は最大0.02mm。小型物から大型物までオールマイティに対応可能な非常に優れた3Dスキャナーです。

販売ページ:https://skhonpo.com/products/revopoint-3dscanner-miraco
Shining3Dの3Dスキャナー『Einstar』もまた高速・高精細、さらにお手頃価格なハンディスキャナーとして注目を集めています。サポート機能も充実しているため初心者の方でも安心してお使いいただけます。

販売ページ:https://skhonpo.com/products/einstar-3d-scanner
iPhoneで使えるLiDARアプリ
現在は、iPhoneでも使えるLiDARスキャンアプリもあります。ここでは代表的なLiDARスキャンアプリを2つ紹介します。
Scaniverse
Appleに買収されたことでも話題になったLiDARスキャンアプリです。iPhoneやiPadのLiDARを使って、空間や物体を高精度に3Dスキャンできます。
用途:建築現場の記録、部屋のレイアウト保存、美術品の記録など、プロ用途にも対応。
ポイント:スキャン後の編集機能が充実(トリミング、スムージング、サイズ調整など)/iCloudやARKitとの連携もスムーズ/usdz、.obj、.glb 形式での書き出しに対応/完全無料で、機能制限なし(Apple傘下になった影響も)
Polycam
iPhoneのLiDARやカメラを使って高速かつ高精度に3Dスキャンできるアプリです。部屋や家具、オブジェクトを手軽にスキャンし、3Dモデル(.objや.glbなど)として書き出し可能。
用途:建築測量、AR設計、3Dプリント用のモデリングにも最適。
ポイント:自動メッシュ生成や寸法計測機能も優秀/無料でも基本機能は使えますが、Pro版で書き出しや高精度スキャンが強化されます。
