美しすぎる金属3Dプリントのアート作品「Les Armeuses」
まるでレースのように精密な金属製の装飾
いまや航空技術、自動車産業、医療産業などにおいて欠かせない技術となっている金属粉末のレーザー3Dプリンティング。一般的には機械部品や工業パーツなどの出力に用いられている印象の強いこの技術を用いて、最近、ある驚きのオブジェクトが出力された。
フランスの地方現代芸術基金であるFRACオーヴェルニュコレクションの展示会場において発表されたそのオブジェは「Les Armeuses」と名付けられた美しい金属製の首輪だ。
画像/AddUp
制作したのはアーティストのアニエス・ジェフリー。彼女が2021年から2023年にかけてオーヴェルニュでのアーーティストレジデンスを経て制作したこの精巧な首輪のデザインは19世紀のファッションからインスパイアされたものだという。今回出力された一連の金属彫刻は、今後、4つのエディションで生産される予定だという。
アニエス・ジェフリーはしかし、この作品を単に美しい女性のための装飾品として制作したわけではない。かつてレース生地だった装飾品を金属でリメイクした背景にあるのは女性ジェンダーが歴史的に被ってきた抑圧や拘束への批判的意識だ。美は人々を魅惑するがまた一方で抑圧もする。現代美術らしいアイロニーの込められた作品なのだ。
画像/AddUp
今回、アニエスと技術提携したのはフランスのクレルモンフェランに拠点を置くAddUpというスタートアップ。同社は レーザーパウダーベッドフュージョン(LPBF)や指向性エネルギー蒸着(DED)などの高度な3Dプリンティングテクノロジーを提供している。
その高い技術は作品を見れば一目瞭然。風を纏うような柔らかなシルエット、精密な織り模様は、とても金属オブジェクトには見えない。今後、この技術がどのような形で活用されていくのか楽しみだ。
画像/AddUp