香りも楽しめるエコな新フィラメント登場 – Kexcelled「K5™ Eco-Aesthetic Series」
3Dプリンターが稼働中にコーヒーや紅茶の香りが漂ってきたら——、そんなこと想像したことさえない方が多いと思います。
視覚だけでなく嗅覚にも訴えるユニークなフィラメント、この「突飛」なアイディアを実際に実現したのが、素材メーカー大手Kexcelled社。
商品名は、「K5™ Eco-Aesthetic Series」。コーヒー・紅茶・竹由来の成分を取り入れたPLAフィラメントで、見た目の美しさだけでなく印刷中に広がる香りまで楽しめる、これまでにない画期的な新型フィラメントを紹介します。
K5™ Eco-Aesthetic Seriesとは?
K5™ Eco-Aesthetic Seriesは、持続可能性とデザイン性を兼ね備えたPLA樹脂系の3Dプリンタ用フィラメントのシリーズ。その最大の特徴は、コーヒー豆かすや茶葉残渣、竹繊維といった天然素材の廃棄物を再利用している点です。
各フィラメントにはそれぞれ約10%のリサイクル由来成分が配合されており、それによって原料の一部を置き換えることで資源の循環利用とカーボンフットプリント削減を両立しています。さらにコーヒーと紅茶のフィラメントでは、印刷時にほんのりと自然なアロマが立ち上り、従来の加熱プラスチック特有のにおいとは一味違う癒やしの香りを楽しめるという仕様になっています。

コーヒー由来PLAフィラメント:香ばしいアロマと暖色のトーン
PLA Coffeeは、その名の通りコーヒー由来の成分を含むフィラメントです。原料のPLA樹脂に約10%のリサイクルコーヒー豆かすが配合されており、印刷中にはほのかなコーヒーの香りが作業空間に広がる、とのこと。
なお、微細なコーヒー粒子が材料に混ざることで、出力されたオブジェクトの表面には木粉が入ったフィラメントのような繊細な粒子感と暖かなブラウン系の色合いが現れるようです。
カラー展開は3種類で、コーヒーの焙煎度合いになぞらえた「ライトロースト」(淡い浅煎り色)、「ミディアムロースト」(中間的な茶色)、「ダークロースト」(濃い深煎り色)から選べます。コーヒーの風合いと香ばしい香りを併せ持つこのフィラメントは、まさにサステナビリティと創造性の融合。何よりそれを実現しようと考えた開発チームに拍手です。
紅茶由来PLAフィラメント:茶葉の再生と癒やしの香り
一方のPLA Teaは、紅茶の茶葉残さを活用したフィラメント。中国の大手飲料メーカーMaster Kong(康師傅)と提携し、紅茶生産で出る茶葉残渣をPLAに約10%混合したそうです。
そのため印刷時には、ティータイムを思わせる穏やかな紅茶の香りが漂い、出力物の表面には紙や木の繊維を含んだような自然で滑らかな質感が現れます。
カラーは2色展開で、例えば緑茶を連想させる淡いトーンと、紅茶のように深みのあるブラウントーンなど、茶葉由来ならではのナチュラルカラーが用意されています。使われている茶葉成分は廃棄予定だったものを再利用しており、まさに「捨てられる素材に第二の人生を与える」取り組みとなっています。
竹繊維PLAフィラメント:自然な木質感と高い強度
PLA Bambooは、竹由来の繊維を配合したフィラメント。
竹の繊維質を約10%含んだPLA材で、印刷時に特別な香りはありませんが、その組成によって落ち着いた木質調の外観と優れた表面仕上がりを実現するそうです。細かな竹繊維が充填されていることで造形物の強度が増し、実用的なパーツにも適したしっかりとした質感に仕上がります。
カラーは自然な竹色の1色のみですが、素材そのものが持つ淡い生成り色がどんなプリントにも合わせやすく、ナチュラル志向のデザインにマッチするでしょう。

五感に響くプリント体験
これら3種類のフィラメントがもたらすのは、単に見た目が美しいプリントだけではありません。通常、3DプリンターでPLAを溶融するときには独特のプラスチック臭が立ち込めますが、コーヒーや紅茶のPLAでは代わりにやさしい天然の香りが作業空間を包み込みます。
朝の淹れたてコーヒーの香りやリラックスできるお茶の香りが漂う中でのプリント作業となれば、クリエイターの五感を刺激し、発想も豊かにしてくれるかも。
また、出来上がった造形物の表面には有機素材ならではの温もりある風合いが宿ります。コーヒーや紅茶の粒子が生む微細な模様や、竹繊維が醸し出す木目調のテクスチャにより、視覚的にも触覚的にも自然素材に近い印象を与える仕上がりです。香りと質感で訴えるこのシリーズは、3Dプリント体験そのものを豊かにし、従来のフィラメントにはない楽しさを提供してくれそうです。

展示情報と発売スケジュール
K5™ Eco-Aesthetic Seriesは2025年11月のFormnext(フォルムネクスト)国際見本市で初披露されました。ドイツ・フランクフルトで開催されたこの展示会では、Kexcelled社のブース(ホール12.1、スタンドC22)にて実際にコーヒーや紅茶の香りを確かめながらフィラメントやそのプリント品に触れることができ、多くの来場者の関心を集めたそう。
製品の市場投入は2026年初頭が予定されており、現在クリエイターや教育機関、企業の間で期待が高まっています。正式リリースにより、デザイナーやエコ志向のユーザーは、より持続可能で感性豊かな3Dプリントを楽しめるようになるでしょう。Kexcelled社の挑戦がもたらす新たな創造の形に、ぜひご注目ください。
画像:Kexcelled
