
音楽を凍結して3Dプリント彫刻に|スウェーデン発の「フローズンミュージックプロジェクト」とは?
大好きなあの曲を彫刻にして永久保存
美しい音楽を聴けば感動する。だが、その感動的体験は形に残るがことがない。音楽には形状がなく、それは音楽の一つの重要な魅力でもあるのだが、もしその美しい音に形があったならばと夢想してしまうことはある。
そんな夢想を実現しようというプロジェクトがスウェーデンで行われた。中心となったのはイェヴェレ交響楽団とデザイナーのジュリア・ケルナー、そしてアートキュレーターのアンドレアス・ヴィエルツィガーだ。
彼らがそのコラボレーションにおいて行ったのは通称「フローズンミュージックプロジェクト」。その名の通り音楽を一つの形状へと凍結させてしまおうというユニークなプロジェクトだ。
そのプロセスは複雑だが、基本的なコンセプトとしては、52人のオーケストラが演奏する3つの楽曲を計算アルゴリズムに入力、そのデータを物理的な3Dデータに翻訳した上で彫刻作品として3Dプリントするというもの。曰く「音の物理的な表現と芸術的ビジョンと技術スキルのバランスのとれた組み合わせ」とのことだ。
果たして生み出されたのが以下の3Dプリント彫刻。
画像/JK3D
一見すると抽象的で、どことなく天然鉱物のようでもあるが、なんとも目を離せない奇妙な美しさを称えている。これはボー・リンデの組曲ブローニュの第三楽章を「フローズン」したものとのことで、以下の動画のように音色に合わせてアルゴリズムを通じて一つの形状が作り出されている。
造形デザインの基礎を作ったジュリア・ケルナーはMARVELの映画『ブラックパンサー』の3D衣装をデザインしたことでも知られる、世界でも指折りの人気デザイナーであり、また3Dプリントファッションの次世代ブランドJK3Dのクリエイティブディレクターも務めている。つまり、新時代を彩る先端デザイン界の寵児ということだ。
今回のアイディアは、音楽体験をより具体的でリアルなものにすることで、体験をさらに強化するというコンセプトのもとに生まれたという。以下のJK3Dのオフィシャルサイトでは、3つの楽章それぞれの作品が掲載されているが、いずれも個性が際立っている。
JK3Dオフィシャルサイト
https://jk3d.com/pages/frozen-music
こうなると、自分のお気に入りの曲もまた「フローズン」してみたくなるというもの。かつてはレコードやCDのジャケットが音楽の一つの物質的痕跡として機能していたが、現在は音楽鑑賞の中心がストリーム配信に移行し、物理的形状からますます離れていっている。だからこそ、こうした新しい物質化の試みは興味深い。
お気に入りのCDの代わりに3Dフローズン彫刻を部屋に飾る日もやってくるかもしれない。