
水路のマイクロプラスチックを掃除する3Dプリント魚型ロボット「ギルバート」|データは無料でダウンロード可能
世界を救うための最もかわいい方法
これまでも本ブログ欄で取り上げてきたように、プラスチックによる環境汚染が叫ばれる昨今、合成樹脂を素材とする3Dプリンターにもなんらかの対応が求められている。
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もちろん、プラスチックという素材そのものが問題なのではない。問題なのはその過剰な消費、そして廃棄されたプラスチックの行方だ。特にいま問題とされているのはマイクロプラスチックだろう。現状でマイクロプラスチックが環境や生態系にどの程度作用するのかはまだ未知数の部分も多いが、少なからず環境に否定的な影響を及ぼしていることはすでに確認されている。
そんな中、3Dプリンターで作られたあるユニークなロボットが話題を呼んでいる。そのロボットの名前は「ギルバート」。これは2022年のナチュラルロボティクスコンテストの優勝作品で、設計したのは米国サリー大学の学生エレノア・マッキントッシュ。「世界を救うための最もかわいい方法だ」と絶賛されている。
果たして、そのロボットとはどんなロボットだろうか。
プラスチックを吸引する魚型ロボット「ギルバート」
さて、ご覧の通り、ギルバートは魚型のロボットだ。確かに一見したところ、なんともチャーミングである。ただ、このチャーミングな造形だけを理由に優勝を獲得したわけではもちろんない。というのも、今回ギルバートが出品されたコンテスト「ナチュラルロボティクスコンテスト」のテーマが生体模倣ロボットのコンペティションなのだ。
実際、コンテストにはカニ型のロボットやクマ型のロボットなど様々な生体模倣ロボットが出品されたという。そんな中、このギルバートが優勝した理由は、その機能性にある。
エレノアがギルバートに与えた機能、それは水路に投棄された膨大な量のプラスチックの掃除だ。ギルバートに付属する細かいメッシュが施されたエラは水の濾過のための装置。水路に放たれたギルバードは遊泳しながらエラから廃棄プラスチックを吸引し、それらをお腹の中にためこんでいく。さらに如才がないことに、これらギルバートが水路から抽出したマイクロプラスチックは、その後、リサイクルやサンプリングにも使用できるという。
ギルバートの3Dプリントデータが無料公開
ところで、コンテスト自体は実物ではなくデータによって行われた。つまり、これはアイディアによって審査されるコンテストなのだ。
しかし、今回は優勝作品であるギルバートのみ、コンテストを主催している科学者チームによって3Dプリンターによって具現化されることになった。
完成されたギルバートは暗闇でも光る仕様になっており、すでに遊泳実験も行われている。これまでも魚型のロボットは海洋生物の研究に使われてきたが、マイクロプラスチックを吸引する魚型ロボットはギルバートが最初だ。
ただ、研究チームによれば、今回3Dプリントされたギルバートはあくまでもプロトタイプとのこと。現在、ヒレの最適化や尾による動力供給システムを開発することでよりギルバードの性能アップを試みているそうだ。
ちなみに、このギルバートはオープンソースになっており、GrabCADというサイトより無料でデータをダウンロードすることができる。つまり、3Dプリンターといくつかのガジェットを用意すれば、あなたの家の近くの水路においてもギルバートを使ったマイクロプラスチック掃除ができるということだ(もちろん、それぞれの地区の条例などが許す限りにおいて)。
これは3Dプリンターを使った市民レベルにおける環境問題への取り組みを促すことにもなるだろう。今後プラスチック問題において3Dプリンターが「悪者」扱いされないためには、こうしたユーザーたちの工夫とセンスが欠かせないのかもしれない。