3Dプリンターで造られた移動式建築「Desert Ark」が内モンゴルの砂漠に登場
中国の建築スタジオdesignRESERVEが、内モンゴル自治区テンゲル砂漠において3Dプリント建築プロジェクト「Desert Ark(デザート・アーク)」を完成させました。
この小さなシェルター群は乾燥した砂漠地帯で植林活動を行うボランティアのために設計されたもので、砂漠という過酷な環境下でも活用できる休憩・生活空間を提供するものとのこと。なお、Desert Arkは中国初の砂漠環境における3Dプリントコンクリート建築でもあり、極限環境での建築の可能性を示す象徴的なプロジェクトとなっています。
3Dプリント技術で生まれた砂漠のシェルター
Desert Arkの各モジュールは3Dプリント技術によって製造されています。素材にはセメントと砂の混合物が用いられ、ロボットアームで材料を層状に積み上げる手法でユニットを成形。砂漠の過酷な気候条件では現地での印刷は困難なため、印刷(造形)工程は専用工場で行われています。
こうして工場で完成したモジュールを現地に輸送し、現地組み立てはわずか2日間で完了。モジュール群はジョイントで連結されており、必要に応じて移動・再配置が可能な設計になっています。まさに3Dプリント技術とプレハブ工法を組み合わせた、機動性の高い砂漠シェルターと言えるでしょう。
9つのユニットから成るモジュール建築
Desert Arkのテラスと、それに面して配置されたシャワーユニット(手前)とキッチンユニット(奥)。Desert Arkは9つの独立したモジュール(寝室、リビングルーム、キッチン、トイレ、シャワー室など)で構成されており、合計の延べ床面積は約150㎡に達します。
各ユニットはそれぞれ用途が分けられており、中央の共有テラス(中庭)を囲むように配置されています。テラスを介してすべてのモジュールがつながるレイアウトにより、強風や砂嵐から内部空間を守りつつ、居住者同士の交流も可能にしています。

過酷な砂漠環境に耐える設計
砂漠という過酷な環境に対応するための工夫も随所に凝らされています。外壁は波打つような縞状(層状)のデザインになっており、これは強烈な砂漠の風にも耐えやすくするため。また壁体内部には断熱のための空洞が設けられており、断熱材を充填することで内部を快適な温度に保てるようになっています。その結果、-30℃の極寒から+45℃の猛暑まで耐えられる高い断熱性能が実現しました。
現地での設置に際しては、深い基礎工事を必要としない点も特徴です。モジュールは砂の上に直接設置でき、地面への固定を最小限に抑えつつ安定した構造を実現しています。必要に応じてユニットごとに移設・再配置が容易にできるため、砂漠での植林作業の進捗に合わせて拠点の場所を動かすことも可能です。テラス上には開閉式のオーニング(日除け)も取り付けられ、強い日差しを遮ったり開放したりできるようになっています。
さらに各ユニットには太陽光パネルが搭載されており、外部電源に頼らず必要な電力をまかなえるオフグリッド仕様となっています。砂漠という電気や水が得がたい土地でも、自給自足で快適性を維持できるよう工夫されています。
植林ボランティアの拠点、未来への展開
現在、このDesert Arkは内モンゴルの砂漠地帯で植林活動に携わるボランティアたちの休憩・生活拠点として活用されているとのこと。日中の過酷な作業後に涼を取ったり、夜間の宿泊を可能にすることで、ボランティアの安全と活動効率を支えています。
建設を手がけたdesignRESERVEは、将来的にはこのモジュール建築を砂漠のような過酷な環境下や遠隔地での恒久的な住居として展開できる可能性も示唆。今後さらに幅広い用途で活躍することが期待できそうです。
Alll Photo: Rangers of Edge-locking Forest, Huaer Lin
