
3Dプリント品の締結方法完全ガイド
3Dプリントでパーツを分割して組み立てる技術は、造形サイズの限界を超えるだけでなく、強度や仕上がりのクオリティを高め、必要に応じて分解・メンテナンスできる利点もあります。
ここでは、接着剤からインサートナット、セルフタップビス、木工的な継手、熱溶着、さらにスライサーを活用した分割方法まで、幅広く解説します。
1. 接着剤での固定
特徴
最も手軽で汎用性の高い方法です。プリント後にパーツを貼り合わせるだけで済むため、工具がほとんど不要です。
適した用途
・ディスプレイモデル
・負荷のかからない造形物
・内部構造を隠す用途
メリット
・低コスト
・後加工しやすい
・曲面でも対応可能
デメリット
・繰り返し分解はできない
・力のかかる部分には不向き
材料別おすすめ接着剤
・PLA:瞬間接着剤(シアノアクリレート系)、2液エポキシ
・ABS:アセトン溶着、ABSセメント
・PETG:密着が弱いので2液エポキシが無難
設計と作業のコツ
・接着面は凹凸をつけるか、粗めにサンドペーパーをかける
・はみ出した接着剤は固まる前にきれいに拭き取る
・位置ズレを防ぐために、ダボ(位置決めピン)を設けると作業性が良い
2. インサートナット(熱圧入ナット)
特徴
繰り返しの組み立て・分解が必要な箇所に最適です。
3Dプリントの樹脂に比べて金属ナットはネジ山が潰れにくく、信頼性の高い締結が可能です。
適した用途
・筐体の固定
・可動部
・頻繁にアクセスするカバーやハッチ
メリット
・耐久性が高い
・高い締結力
・ネジを使って簡単に外せる
デメリット
・ヒートツールが必要
・圧入失敗のリスクがある
選び方のポイント
・ナットの外形に合わせた穴を設計(メーカー推奨径を参照)
・穴周辺に十分な肉厚を確保しておく
作業のコツ
・ヒートインサーター(温度調整可能なはんだごて)を使うと失敗が少ない
・押し込みすぎると樹脂が変形するので、まっすぐ垂直に圧入する
・圧入後は完全に冷めるまで動かさない
3. セルフタップビス
特徴
木ネジのように樹脂に直接ネジを切りながら固定する方法です。
シンプルな構造で強度もそれなりにあり、プロトタイプに特に便利です。
適した用途
・簡易固定
・一時的な仮組み
・小型のケース
メリット
・特別な工具が不要
・インサート不要でコスト削減
・汎用のビスで代用できる
デメリット
・何度も締め直すとネジ穴が摩耗してしまう
・割れ防止に設計調整が必要
設計のコツ
・下穴はビス径の70~80%を目安に設計
・割れを防ぐため、穴の周囲は十分な厚みを持たせる
・締め付けすぎず、樹脂のねじ切りをつぶさないようにする
4. 木工的な継手(嵌合構造)
特徴
ダボやアリ溝、スナップフィットなど、物理的な形状だけで締結する方法です。
接着剤なしでも十分な強度が得られる場合があります。
適した用途
・精密な位置合わせ
・デザイン性を重視する継手
・組立キット
メリット
・再分解可能
・接着剤不要で仕上がりがきれい
・組立工程を楽しめる
デメリット
・設計と造形精度が要求される
・嵌合がきつすぎると割れやすい
設計と作業のコツ
・クリアランスは0.1~0.3mm程度を目安にテストする
・積層方向を考慮して、割れにくい方向で力を受けるように設計する
・スナップフィットはPETGなど弾性のある素材が向いている
5. 熱溶着(はんだごてでの樹脂溶接)
特徴
溶かした樹脂を一体化させる方法です。強度が必要な箇所の補強に有効です。
適した用途
・見えない内部構造の補強
・小さなクラックの補修
・ABSパーツの一体化
メリット
・専用の接着剤を使わずに強固な接合が可能
・低コスト
・部分補強に便利
デメリット
・見た目を美しく仕上げるには技術が要る
・熱源の取り扱いに注意が必要
作業のコツ
・作業中は換気を十分にする
・盛り付ける樹脂を余分に用意しておくと補強しやすい
・溶着面をサンドペーパーで平らにしておくと密着が良くなる
6. スライサーでの分割と組立の設計
特徴
最新のスライサーでは自動で分割やダボ生成が可能です。
大型造形物を無理なく作るだけでなく、組立後の強度や位置ズレ防止にも役立ちます。
活用例
・大型フィギュアやコスプレパーツ
・筐体の内部アクセスを考慮した分割
・マルチマテリアル造形をパーツ単位で組む場合
ポイント
・分割面は積層方向に平行にすると強度が高く、ズレにくい
・ダボやスリットを設けて位置決めを簡単にする
・接着面の接触積層が荒くならないよう、積層方向を意識する
7. マグネット、ヒンジなどの応用
最近はマグネットを埋め込んだり、ヒンジをプリントインプレイス(組立不要)で作る例も増えています。
取り外し可能なフタや、開閉部のある構造物には特に有効です。
コツ
・マグネットの圧入穴はサイズを微調整し、抜けにくくする
・ヒンジ部分は積層誤差により動かないことがあるので試作で調整
・マグネット固定は接着剤を併用するのが一般的
8. 大型造形や分割造形の委託サービスを活用する
もちろん場合によって自宅のプリンターだけで行うのが難しい場合もあります。
特に、大型の造形物、高精度の分割パーツ、業務用レベルの後加工が必要な場合などは、プロのサービスに依頼する選択肢がとても有効です。
代表例:ビーフル 3DプリントMAX
https://3dprinter.be-full.jp/3dprint-max/
ビーフル 3DプリントMAXは、家庭用プリンターでは対応しきれない大サイズの造形物や複雑形状の出力を、分割設計から後加工まで丸ごと依頼できるのが特長です。
こんな方におすすめ
- コスプレの武器、小道具などを実寸サイズで作りたい
- 大型ディスプレイモデルを高精度で仕上げたい
- 強度や仕上がり重視でプロ品質にしたい
強みのポイント
- 最大造形サイズ:国内最大クラス(サービスによっては1m超も可能)
- 造形だけでなく分割設計も依頼できる
- 表面仕上げや塗装も一括で注文可能
まとめ
締結方法の選択は、3Dプリント品の機能性、強度、メンテナンス性、組立のしやすさを大きく左右します。
2025年現在、ヒートインサーターやスライサーの分割機能が進化し、誰でも高度な組立を設計しやすいようになっています。
まずは造形したいものの大きさ、使用状況、組立の手間を整理し、自分に合った方法を選んでください。