壊れづらいスナップフィット設計を出力するためのコツとは?|パラメーター、素材、出力の向き

壊れづらいスナップフィット設計を出力するためのコツとは?|パラメーター、素材、出力の向き

プラスチックの弾性を利用したスナップフィット設計

 

プラスチック素材の優れた点の一つに(他の素材と比較した際の)高い弾性がある。

この柔軟性を利用した設計がスナップフィットだ。

スナップフィットとは二つのパーツを接合するための方法の一種で、材料の弾性を利用して、相互の凹部と凸部を引っ掛けることで固定する方法のことだ。プラモデルなどではよく見かける構造で、一般にスナップフィットモデル、スナップフィットキットと呼ばれている。

スナップフィットは接着剤などを用いることなく、複数パーツを接合できるため非常に便利な設計なのだが、実は3Dプリントの出力物でスナップフィットデザインを見かけることは少ない。スナップフィットは仕組みとしてはシンプルだが、綿密に設計しないと引っ掛ける際にプラスチックが破損してしまう可能性があり、そのバランス調整にはなかなかコツがいるのだ。

では、そのコツとはどんなものだろうか。

エンジニアリング系YouTubeチャンネル[Engineers Grow]がアップしている3つの映像が、そのコツを分かりやすく伝授してくれているので覗いてみたい。

 

 

 

破損を防ぐための三つの重要なパロメーター

 

まず一つ目の動画を見てみよう。

 

 




こちらでは、スナップフィット造形をする上で役に立つ三つのパロメーターについて説明してくれている。

一つ目はスナップフックの長さだ。この長さを長めにとることでスナップ要素にかかる負荷が低減する。

 

 



二つ目はアンダーカットのサイズだ。アンダーカットのサイズが大きいと、そのぶんスナップフックがしなることになり破損の可能性が上がる。動画では4mmのアンダーカットから1mmのアンダーカットに縮小することでスナップを成功させている。

 

 



三つ目はスナップフックの薄さだ。スナップフックが厚すぎるのも破損の原因になる。ただ薄くしすぎるのも問題だ。動画でも可能な限りスナップフックを薄くしてみたところ、負荷に耐えきれず破損が起きてしまっている。

 

 

 

素材選びで重要なのは「破断伸び率」


続いて二つ目の動画を見てみよう。

 

 

 



こちらの動画では、使用する素材を変更することが提案されている。

素材選びで重要なポイントとなるのは破断伸び率(伸長破断率)というパラメーターだ。破断伸び率とは物質を引っ張り始めてから、破断するまでどれだけ伸びたか示す値で、スナップフック設計に関してはこれが高い方がありがたい。

たとえばPLAの場合、典型的な値は8%になる。ABSだと10%、PETGだと24%、あるいはナイロンなら100%だ。では、PETGがスナップフィット設計に最適かといえば、そう簡単な話でもない。破断伸び率が高すぎると、破損はしづらいものの負荷によって変形する可能性も高まるからだ。

では、どれくらいの破断伸び率がちょうどいいのだろうか。映像では、破断伸び率10〜15%の素材を使用することが推奨されている。


出力の向きを間違えないように

 

最後に三つ目の映像も見てみよう。

 

 

 



この映像では出力の際の向きにも注意するように提案されている。たとえばビルドプレートからフックを離してしまうと、フックはどうしても弱くなってしまう。出力の際は動画にあるようにスナップフックが横に寝た形で出力されるよう向きを設定した方がいいだろう。

 

 


さて、三つの動画のレクチャーを追ってきたが、いずれもシンプルながら役立つ指摘ばかりだった。スナップフィット設計を適切に使いこなすことで、ものつくりの幅はきっと広がるはず、皆さんもぜひマスターしてほしい。