0.6秒で立体完成?|中国チームが発表した超高速3Dプリント「DISH」とは

「3Dプリントは速いけど粗い」
「高精細にすると時間がかかる」
3Dプリントにはどうしても速度と精度のトレードオフがつきまとうもの、そう言われてきました。しかし、中国の研究チームが発表した新しい技術は、その常識を本格的に覆す可能性があります。
先日、清華大学・Imaging and Intelligent Technology Laboratoryの研究チームが、「DISH」と呼ばれる新しい3Dプリントプロセスを公開。この技術では、ミリメートルスケールの複雑な立体物をわずか0.6秒で造形し、しかも非常に高い解像度を維持できることが報告されています。
DISHとは何か?
DISHは「Digital Incoherent Synthesis of Holographic Light Fields(デジタル非干渉ホログラフィック光場合成)」の略称です。
名前は少し難しく聞こえますが、ポイントは「光を高度に制御して、立体を一瞬で作る」という点にあります。
従来の3Dプリンターは、点を積み重ねるか、層を一枚ずつ積み上げるという方式でした。しかしDISHは違います。構造全体を同時に形成する“体積造形(ボリュメトリックプリント)”方式を採用しています。
高次元のホログラフィック光場を計算光学によって制御し、レジン内部に一気に立体構造を生成します。つまり、部分ごとに作るのではなく、「一瞬で全体を固める」イメージです。
実はこの技術、数年前より各国で開発が進められてきました。ただ今回、清華大学の研究チームはこれまでにない解像度における体積造形を成功させたのです。

驚異的なスピードと解像度、さらに
研究チームによると、DISHでは最小12マイクロメートルの微細構造を再現できたとのこと。これは非常に高い解像度です。
さらに、体積あたりの造形速度は最大333立方ミリメートル/秒。研究メンバーのウー・ジアミン准教授は、「これまでで最速の3Dプリント速度になる可能性がある」と述べています。

0.6秒で立体が完成するというのは、従来の積層型プリンターとは桁違いのスピードですが、実はもう一つの注目点は、装置構成のシンプルさです。
DISHでは、従来の光造形で必要だった大きなレジンタンクや可動式プラットフォームが不要とされています。必要なのは平坦な光学面のみで、その面は造形中も動きません。
これは装置の小型化や高い安定性につながる可能性があります。可動部が減ることで振動やズレの影響も抑えられます。
どんな分野に使われるのか?
まだ研究段階ではあるものの、DISHは特にマイクロスケール部品の量産に向いていると考えられています。
例えば、カメラモジュール、フォトニックコンピューティング部品、マイクロロボット、フレキシブルエレクトロニクスといった分野です。
これらは非常に微細な構造が求められる領域であり、従来は時間とコストが大きな課題でした。もしDISHが実用化されれば、これらの製造方法を大きく変える可能性があります。
まだ課題はあるが、可能性は大きい
もちろん、現時点では研究段階であり、材料の制限や安定性、量産体制への展開など、解決すべき課題は残っています。
しかし、速度・解像度・装置構成の三つを同時に改善する方向性を示した点は非常に重要です。
3Dプリントはこれまで、「ゆっくり積み上げる技術」でした。しかしDISHは、その考え方を根本から変えています。
もしこの方式が成熟すれば、将来的には“瞬間的に立体を生成する”時代が本当にやってくるかもしれません。
画像引用:清華大学
