
水洗いレジン完全ガイド 2025|特徴・注意点とおすすめ製品
家庭用光造形3Dプリンターの普及に伴い、注目を集めているのが「水洗いレジン」です。
その名の通り水だけで造形物の洗浄ができるレジンで、IPA(イソプロピルアルコール)など有機溶剤を使わず後処理できる手軽さが魅力です。
ここでは、水洗いレジンとは何か、その利点と欠点、従来のレジンとの違い、水洗い時の注意点(排水問題・乾燥・ベタつきなど)、安全・環境面での取扱い注意、そしてよくあるトラブルと対処法について初心者にもわかりやすく解説したいと思います。
記事後半では、用途別におすすめの水洗いレジン製品も紹介します。
水洗いレジンとは?従来レジンとの違い
水洗いレジンとは、光造形3Dプリンター用のUVレジン(光硬化樹脂)の一種で、造形後の洗浄をIPAやエタノールではなく水(主に水道水)で行えるように開発されたレジンのことです。
通常のレジンはプリント後に有機溶剤で未硬化樹脂を洗い流す必要がありましたが、水洗いレジンでは約40℃程度のぬるま湯で造形物を洗浄すれば表面の余分なレジンを落とすことができます。そのため、IPAを常備したり火気に気を配ったりする手間が不要で、後処理が格段に手軽になりました。
従来レジンとの大きな違いはまず後処理の手軽さと安全性にあります。IPAは揮発性が高く引火性もある強い溶剤で、取り扱いには保護メガネや防毒マスクが必要になるほど人体への刺激も強いものです。
また廃液も産業廃棄物扱いとなり、捨てるには専門業者への依頼など手間がかかりました。一方、水洗いレジンなら水で洗えるため有機溶剤のリスクがなく、3Dプリンター初心者でも扱いやすいとされています。実際に水洗いレジンの登場によって、家庭や教育現場などでも光造形3Dプリントを始めやすくなったという声もあります。
安全面でも水洗いレジンは有利です。近年の製品は刺激臭が抑えられているものが多く、室内で使っても匂いが気になりにくいです。また皮膚への刺激も従来品より軽減されている傾向があります。
ただし水洗いレジンであっても基本的な安全対策(手袋・マスク・十分な換気)は必要です。水洗いできるからといって未硬化の樹脂が無害になるわけではなく、樹脂自体の成分は依然有害性を持つため、直接肌に触れない・吸い込まない配慮が欠かせません。
環境面でも、水洗いレジンは比較的優しい選択肢です。IPA洗浄では使い終わった溶剤を勝手に下水に流すことはできず、産廃として処理する必要がありました。しかし水洗いレジンの洗浄水は日光(UV)に当てて未硬化レジンを硬化・沈殿させた上でフィルターで固形分を分離すれば、自治体のルールに従って家庭ごみに出すことも可能です。この安全に廃棄できるという点は、家庭利用において大きなメリットと言えます(具体的な廃液処理方法については後述します)。
一方で、水洗いレジンにはいくつか留意すべき点もあります。まず、造形物の機械的性質に関して、初期の水洗いレジンは硬化後に脆くなりやすい(割れやすい)との指摘もありました。ただ近年は各社の改良で強度も向上していて、後述する「高靭性タイプ」のように強度面を補った製品も登場しています。
そのほか、水洗いレジンは吸水しやすい傾向があり、長時間水に浸けっぱなしにすると造形物がもろくなる可能性があります。そのため、後処理時に長く水浴させすぎないよう注意が必要です。また吸湿性ゆえに未塗装のまま長期間放置すると経年劣化しやすいとも言われます。しかし、この点に関してもSK本舗の「高性能水洗いレジン」のように従来品より吸水率を抑えて劣化しにくくした高機能品があります。とはいえ、基本的には仕上がった造形物は早めに塗装やトップコートで表面を保護するといった工夫が長持ちのコツです。
最後にコスト面では、水洗いレジンは一般に通常のレジンより価格が若干割高なことが多いです。しかしIPAを頻繁に購入する費用や廃液処理の手間を考慮すると、総合的なコストや手間は水洗いレジンの方が抑えられるといえます。IPAは再利用もできますが管理が面倒な側面もあるため、多少値段が高くても手軽さを取るかはユーザーの好みになりそうです。
水洗いレジンのメリット
さて、水洗いレジンの主なメリットを改めて整理してみます。
IPA不要で後処理が簡単:溶剤を買い足したり火気に神経質になる必要がなく、初心者でも扱いやすい。水道水で洗える手軽さは大きな利点です。
刺激臭が少ない:レジン特有のツンとした臭いを抑えた製品が多く、室内での作業でも換気の負担が軽減されます。
安全リスクの低減:IPAのような有機溶剤を使わないため、引火や揮発による健康被害のリスクが低く、家庭や学校でも導入しやすいです。
環境に優しい廃液処理:洗浄水は紫外線硬化させればフィルターで固形物を分離して処分可能なので、IPA廃液のような厳重な産廃処理が不要になります。
初心者に最適:溶剤の取り扱いに不安がある人や、家庭内で安全に3Dプリントを楽しみたい人にとって、水洗いレジンはハードルを大きく下げてくれる材料です。
このように水洗いレジンは「面倒」「危険」「後処理が大変」といった光造形のハードルを下げてくれる現代的なレジンだと言えます。
水洗いレジンの注意点
一方、利用にあたって知っておきたい水洗いレジンのデメリットや注意点もあります。以下に代表的なものを挙げ、その対処法とともに解説します。
① 洗浄水の扱い(排水問題)
水洗いレジンといえど、洗浄に使った水をそのまま下水に流すのは厳禁です。洗浄水にはレジン成分が溶け込んでおり、そのまま流すと環境汚染や配管への悪影響があります。必ず洗浄後の水は日光やUVライトに当てて残留レジンを完全硬化させ、沈殿した固形物をフィルターやキッチンペーパー等でこし取ってから捨てましょう。
硬化させたレジン滓は可燃ごみ(プラスチック扱い)として捨て、水分は蒸発させるか適切に処理してください。自治体によっては処分方法が異なる場合もあるため、心配な場合は自治体の指示に従いましょう。決して「水洗いできるから」とそのまま排水口に流さないよう注意が必要です。
② 洗浄後のベタつき
水だけで洗った場合、造形物の表面に未硬化レジンが少し残ってベタつくことがあります。実は水洗いレジンといえど適度に洗剤や石鹸を併用しないと完全にはベタつきが取れないケースが多いです。
対処法として、洗浄時に中性洗剤(台所用洗剤)を数滴混ぜて洗うと未硬化樹脂が落ちやすくなり、ベタつき残りが軽減します。また超音波洗浄機を使うのも効果的です。超音波洗浄なら短時間で細部のレジンも剥離しやすくなります(※ただし20~30分以上の過度な超音波洗浄は造形物の劣化を招く可能性があるため注意)。
洗浄後は造形物をしっかり乾燥させてから二次硬化すれば、表面はサラサラに仕上がります。実際、SK本舗の高靭性水洗いレジンの商品説明でも「しっかり洗浄して二次硬化を行えばベタつきは残らない」とあります。もし硬化後も表面がベタつく場合は、再度水洗い・乾燥・追加硬化を試みてください。
③ 造形物の乾燥と二次硬化
水洗い後の造形物には表面や内部に水分が残留しています。この状態で直ちにUVランプに当てて二次硬化すると、水分がレジン内で急激に熱せられて造形物が白化したりひび割れたりする場合があります。そのため、洗浄後はエアブローや自然乾燥でしっかり水分を飛ばし、場合によっては数時間~1日程度放置して完全に乾燥させてから二次硬化を行うのがおすすめです。
一般的に「水洗い後にすぐ硬化せず、数時間~1日置いて水分を完全に抜いてから二次硬化する」ことが推奨されています。十分乾燥させてから硬化することで、造形物の変形や割れを防ぎ、表面の白濁(白く粉を吹いたようになる現象)も防止できます。
④ 吸水・経年劣化
前述の通り水洗いレジンは吸水性があるため、長時間水中に放置すると強度低下や割れを招くことがあります。洗浄は必要最小限の時間で済ませ、浸けっぱなしにしないようにしましょう。
また湿度の高い場所に造形品を長期間放置すると、吸湿によって脆くなる可能性があります。対策として、完成品には塗装やコーティング剤を施して水分を遮断すると良いでしょう。特にフィギュアなど長期保存したいものはトップコート(つや消しクリア等)で保護しておくと安心です。
⑤ その他のトラブル
水洗いレジン使用時によくあるトラブルとして、造形後に細かなひび割れが発生するケースが報告されることがあります。原因の多くは内側に残留した未硬化レジンや不十分な後処理です。中空モデルを作る際は必ずドレインホール(穴)を設け、内部に液体が溜まらないようにしましょう。
造形後に内部の未硬化レジンをしっかり洗い流し、可能であれば透明な容器に水を張って沈めた状態で日光に当て内部まで硬化させるのが効果的です。内部に固まりきっていないレジンがあると、数ヶ月~数年後に収縮や亀裂の原因になるため注意してください。
また、造形物が急激な温度変化(例えば真冬の屋外など)に晒されると割れやすくなる場合もあるので、極端な環境下での取り扱いにも気を配りましょう。
以上の点に注意すれば、水洗いレジンをより安心・快適に利用できます。特に「洗浄→乾燥→硬化」の手順を丁寧に行うことが、水洗いレジンで失敗しないコツと言えます。
安全面・環境面での取り扱いポイント
水洗いレジンを扱う上での安全面・環境面のポイントを整理します。従来レジンと基本は同じですが、「水で洗える」という手軽さゆえに気が緩みがちなので、改めて確認しておきましょう。
個人防護具(PPE)の着用:水洗いレジンでも未硬化状態の樹脂は有害です。作業時は必ずニトリル手袋を着用し、皮膚への直接接触を防いでください。できれば保護メガネやマスクも着用し、万一液が飛んだり臭気を吸い込んだりしないようにしましょう。レジンは皮膚につくとかぶれを起こす恐れがあり、硬化前の液体は揮発成分も含むため吸入にも注意が必要です。
換気の徹底:水洗いレジンは低臭気とはいえ、全く無臭ではありません。樹脂の臭いに敏感な方や密閉空間で長時間作業する場合は、必ず換気を行いましょう。特に大量にプリントする際は部屋に換気扇や空気清浄機を設置するのがおすすめです。臭いが少ない分つい油断しがちですが、レジン成分は揮発して空気中に拡散しますので、吸い込み続けると気分が悪くなることもあります。
火気厳禁:IPAほどではありませんが、レジンに含まれるアルコール分(洗浄用ではなくレジン液中の成分)は引火のリスクがあります。また水洗い後に使用するUV硬化機も発熱しますので、可燃物のそばや直射日光下で放置しないよう注意してください。作業場には火気を持ち込まず、安全な場所で取り扱いましょう。
廃液・廃棄物の処理:先述した通り、水洗いレジンの洗浄廃液は適切に処理する必要があります。日光消毒で樹脂を固めた上で、沈殿物は新聞紙などに包んで可燃ごみに捨てます。液体部分は蒸発させるか、キッチンペーパー等に染み込ませて乾かしてから捨ててください。ボトル容器が空になった場合も、中を水でよくすすいで残留レジンを硬化させた後に廃棄します。使用済み手袋や汚れた紙ウエスなども紫外線に当てて硬化処理してから捨てると安心です。
保管方法:レジン液のボトルは直射日光を避け、冷暗所に保管します。光が当たるとボトル内で硬化が進み劣化してしまいます。高温多湿も避け、しっかり蓋を閉めて倒れないよう安定した場所に置きましょう。子どもやペットの手の届かない所に保管するのも大切です。
以上を守れば、水洗いレジンは通常のレジンと遜色なく安全に使うことができます。水で洗えるからといって「扱いが簡単=安全」と思い込まず、基本は有機溶剤を使う場合と同程度の注意を払うことを心掛けましょう。
おすすめ水洗いレジン製品の紹介
最後に、国内で水洗いレジンを展開する弊社SK本舗のオリジナル製品ラインナップを用途別に紹介します。SK本舗は初心者向けから業務用まで幅広い光造形3Dプリンター関連商品を扱っており、水洗いレジンも複数の種類を販売しています。以下では代表的な4種類について、それぞれの特徴とおすすめ用途を解説します。公式販売ページへのリンクも併記しますので、興味があれば詳細をチェックしてみてください。
SK水洗いレジン(スタンダード) – 高精細で扱いやすい万能タイプ
SK本舗オリジナルの標準的な水洗いレジンです。造形の精細さ・安定性に優れ、クセのない扱いやすさが特長のオールラウンドなレジンです。硬化前の粘度は低めでサラサラしており、プリンターの造形安定性が高いです。造形後の硬度はやや硬めに仕上がり、エッジの出力もシャープで細部まで再現性良好と評判です。「ひび割れなども起きづらく扱いやすい」ので、初心者にも安心して勧められるベーシックな水洗いレジンです。
おすすめ用途は、ミニチュアや模型、フィギュア、小型部品など幅広い一般造形です。豊富なカラー展開があり、塗装せずそのまま使いたい用途にも適しています。初めて水洗いレジンを使う方にはまずこのスタンダードが最適でしょう。
「IPA不要なのが本当に楽。造形も綺麗で気に入りました」といったユーザーレビューもあり、初体験の水洗いレジンにぴったりとの声が寄せられています。
販売ページ:SK水洗いレジン 1000g(~16K対応) skhonpo.com
SK高靭性水洗いレジン – 割れにくく実用向きのタフなレジン
機械特性と耐久性を高めた上位モデルが、この高靭性(水洗い)レジンです。硬化後の造形物が非常に頑丈で、うっかり落としても割れにくい高強度が特長です。「高靭性」と名乗るだけあり、通常の水洗いレジンよりも曲げや衝撃に対する耐性が大幅に向上しています。
実際のユーザーからも「かなりの強度があり、少々落としても壊れませんでした。二次硬化も短時間で表面がサラサラになります」と高評価を得ています。
硬さと柔軟性のバランスも絶妙で、硬すぎず僅かなしなりもあるためパーツのはめ合わせなどに適しています。そのため機構部品やスナップフィット(爪やボタンのような可動接続)、実用強度を求める部品におすすめです。寸法精度も高く反りにくいため、組み立てが必要なプロトタイプ制作にも向いています。造形中の安定性も良好で、硬化も比較的早いため失敗が少ないとのデータもあります。
一点、洗浄時のベタつきが若干落としづらい傾向がありますが、しっかり洗って二次硬化すれば問題ありません。圧縮強度や耐摩耗性は同社の「高靭性レジン(非水洗い)」には及ばないものの、曲げ強度ではそれ以上という社内比較があります。総じて「いいとこ取りなレジン」。水洗いできる手軽さと高い靭性を両立した優秀な製品です。
販売ページ:SK高靭性水洗いレジン(~12K対応) skhonpo.com
SK10K水洗いレジン – 超高精細出力に対応したハイエンドレジン
8Kを超える解像度(最大10Kクラス)対応をうたった高精細モデルが、このSK10K水洗いレジンです。硬化前の粘度が低くサラサラしているため非常に造形しやすく、それでいて硬化後のモデル再現性(精細さ)は極めて高いという両立が図られています。露光反応が速いため必要な露光時間が短く、結果としてプリント時間の短縮にもつながります。メーカーによれば、通常のレジンよりも露光時間を短縮できるので出力スピード向上に寄与するとのことです。
実際、ユーザーからは「モデルの細部までシャープに出力でき、0.2mmの隙間も埋まらず綺麗に造形できた」との報告があり、高解像度プリンターの性能を存分に引き出せるレジンと言えますy。難易度も高くなく、粘度が低めで剥離抵抗(FEPからの剥がれやすさ)も弱めのため、光造形プリンタを始めたばかりの人にも使いやすいとの評価です。
一方、靭性(タフさ)は「普通」レベルで、高靭性タイプほどの強度はありません。造形品の硬さは標準的ですが、ディスプレイ用の精密フィギュアや模型、ミニチュアなど強度より精細さ重視の用途に最適です。
おすすめ用途はやはり超精密なフィギュアやホビー模型の造形です。8Kや12K対応プリンターと組み合わせれば、髪の毛のような細かいパーツや微小なテクスチャもくっきり造形できます。また露光太りが少ない=寸法精度が高いため、分割パーツを組み合わせるモデルの造形にも向いています。
公式販売ページ:SK10K水洗いレジン 500g skhonpo.com
SK高性能水洗いレジン – こだわり派向け次世代のハイグレードレジン
「高性能水洗いレジン」は2023年にSK本舗から登場したハイエンドな水洗いレジンです。「すべてを妥協しない次世代の水洗いレジン」と銘打ち、従来の水洗いレジンにありがちだった“液ダレ”や“露光太り”といった課題を大幅に改善した高機能モデルとなっています。
最大の特長は、造形後の表面に残る樹脂が少なく液ダレしにくいことです。プリント後にモデル表面を触るとき、液だれが少ないのでベタつきがほとんどなく、サポート痕の処理も格段に楽になります。さらにエッジの効いたシャープな造形が可能で、細部までくっきり再現されます。フィギュアの顔や髪、装飾品のエッジなども潰れずに表現でき、まさにディテール重視のユーザーに最適です。
また露光による膨らみ(露光太り)を抑制しているため、分割モデルを組み合わせた際の合いもぴったり合います。「合わせ目がきれいに合うので組み立てが快適」で、精密プロトタイプ制作にも威力を発揮します。
加えて低吸水率で劣化しにくい点も大きなメリットです。従来品に比べ湿気を吸い込みにくく、長期間にわたり品質を保持できます。塗装前の生素材の状態でも安定しており、時間経過で脆くなったり寸法変化したりしにくい設計です。
総合すると、高性能水洗いレジンは造形クオリティ・使いやすさ・仕上がりのすべてを追求したハイグレード品であり、造形物の精度と美しさにこだわる上級者にとって理想的な選択肢です。
販売ページ: SK高性能水洗いレジンskhonpo.com
以上、SK本舗の代表的な水洗いレジン4種を用途別にご紹介しました。
それぞれ特徴が異なり、狙った用途に適したレジンを選ぶことで3Dプリントの結果がさらに向上します。初心者の方はまずスタンダードから試し、必要に応じて高精細モデル(10K)や高強度モデル(高靭性)、ハイエンドモデル(高性能)へと使い分けてみると良いでしょう。
ぜひ自分のプリンターや作りたいものに合った水洗いレジンを選んで、手軽で高品質な光造形3Dプリントを楽しんでみてください。