感染症を防ぐためには環境破壊を止める必要がある

ミステリーマン
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広報エリナ
今回はあらためて感染症と環境問題について考えてみたい!

ミステリーマン
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環境問題?
シャッフルたん

広報エリナ
ああ、知っての通り今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大によってパニックに陥っている。

ミステリーマン
ミステリーマン

そうだね。日本でも感染者数が増えてる…
シャッフルたん

 

 

広報エリナ
こうした事態になると、どうしても「ウイルス」=「悪」という図式で考えられがちで、それを死滅させさえすれば問題は解決するという話になりがちだ。しかし、そもそもこうした感染症のパンデミックはなぜ起こるのかということも同時に考える必要があると思うんだ。

ミステリーマン
ミステリーマン

この前の記事でも話していたことだね。パンデミックが起こっているのは、人間と動物との距離が近くなりすぎたり、グローバル化で世界中を人々が行き交うようになったからって話だったよね?
シャッフルたん

広報エリナ
その通りだ。そもそも感染症が人類にとって脅威となるようになったのは、農業や牧畜の発明によって人々が定住化し、過密な集落が発達し、人と人、あるいは人と家畜が密接に暮らすようになって以降のことなんだ。ペストもコレラも結核もインフルエンザもSARSも新型コロナも、これなしには考えられない。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

20世紀の頭に流行した「スペイン風邪」とかも人々の行き交いが原因でパンデミックになったんだよね。
シャッフルたん

広報エリナ
スペイン風邪は20世紀最大の悲劇だな。当時の世界人口は18億人、そのうち約6億人がスペイン風邪に感染し、約5000万人が命を落としたんだ。当時もグローバル化と都市化が進行している最中だった。

 

 

病棟で治療を受けるスペインかぜに罹患したフォートライリーの陸軍兵士たち。
ミステリーマン
ミステリーマン

でも定住したり、過密して暮らしたりって、もう人類が何千年もしていることだよね? なんで、今になっても新しい病原体が出てくるんだろう?
シャッフルたん

広報エリナ
ポイントはそこなんだ。一番の原因は森林破壊だと言われている。たとえば「エコヘルス連盟」のジョナサン・エプステイン副会長は「新興感染症の75%は動物に起源があり、森林破壊によって本来の生息地を終われた動物たちが人里に押し出されて病原体を拡散させるようになった」と警告しているぞ。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

なるほど! 森林がなくなって、動物たちの住処がなくなったことで、動物がウイルスと一緒に人里にやってきてしまうってことか!
シャッフルたん

広報エリナ
うむ。つまり、ウイルスや感染症のことを真剣に考えるなら、環境問題についても真剣に考えなきゃいけないってことなんだよ。

ミステリーマン
ミステリーマン

単に「動物がかわいそう」とか「自然は美しいから」とか、そういうことだけじゃなく、自分たちの安全のためにも環境バランスが大事なんだね。
シャッフルたん

 

 

パンデミックは森林破壊の後に起こってきた

広報エリナ
もう少し具体例を挙げよう。たとえばエボラ出血熱はこれまで幾度か流行を繰り返している危険な感染症だが、大規模な自然破壊の直後に発生することが多いんだ。2001年にアフリカ・ガボンでエボラ出血熱が流行した際にも、直前に大規模な鉱山開発で森林が破壊された直後だったんだよ。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

なんで森林が破壊されてエボラに?
シャッフルたん

広報エリナ
森林が破壊されると動物たちが生息できるエリアの密度が高くなるだろう? たとえば、エボラに関してはコウモリ→ゴリラ→人という感染経路を辿ったとも言われてる。つまり、エボラを持ったコウモリが食べ残した果実をゴリラが食べ、そのゴリラを人が食べたことで人に感染したってわけだ。この「コウモリ→ゴリラ」という感染経路が、まさに生息エリアが狭くなったことによって生じてしまったということだな。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

なるほど。それまで接点のなかった動物同士の接触が、最終的に人にまで影響を与えてるってことなんだね。
シャッフルたん

広報エリナ
ああ。他にも東南アジアで猛威を振るったニパウイルスの事例もある。シンガポールで畜産公害が問題になったとき、シンガポールでは養豚が禁じられたんだ。すると、シンガポールは豚肉を輸入するしかない。そうすると、隣国マレーシアのボルネオ島でシンガポールに輸出するための畜産がブームとなったんだ。森林の奥深くへと畜舎が拡大していた結果、そこに生息するオオコウモリの持っていたニパウイルスに豚が感染し、その豚肉から人に感染し、結局はシンガポールでもニパウイルスの感染が拡大したんだ。

ミステリーマン
ミステリーマン

公害対策が最終的に疫病に繋がるだなんて……とんだブーメランだね。
シャッフルたん

 

ニパウイルス
ニパウイルス

 

広報エリナ
ああ。必ずしも最初の感染地に責任があるわけじゃないんだ。特にグローバル経済下の現在では、物事の因果関係は複雑に絡まりあってる。

ミステリーマン
ミステリーマン

そうだよね。格安商品を日本で買えるのは、他の国に低賃金労働を押し付けてるからだもんね…。
シャッフルたん

広報エリナ
それがサプライチェーンのトリックなんだな。あるいは中世に流行ったペストにしたってそうだぞ。中世に農業革命が起こり、生産性が向上したことで人口が急増。それに伴う食糧不足を補うために森林を削って農地拡大した結果、オオカミやワシ、キツネなどが激減し、するとそうした肉食獣を天敵とするネズミが大繁殖。さらに人口増加が都市の過密化を招き、そうした都市にはゴミが溢れていたから餌を求めてネズミが大挙した。ネズミはもともとペストの主要な媒介だったものだから、一気に人々の間でパンデミックが起こったってわけだ。

ミステリーマン
ミステリーマン

ペストではたった4年で2億人近くの人が亡くなったんだよね…。そう考えると感染症の拡大は人々の都合で伐採された森の怒りなのかも。
シャッフルたん

 

オランダの画家であるピーテル・ブリューゲルがペスト禍の人々の惨状を描いた『死の勝利』。

 

広報エリナ
そう考えることもできるかもな。実際、疫病は「呪い」や「たたり」とも考えられてきたしな。その頃は、ウイルスを見るための電子顕微鏡も発明されていなかったし、人々にとっては恐怖でしかなかった。それは完全に目に見えない存在だったんだ。

ミステリーマン
ミステリーマン

今だって誰がどこで感染しているか分からないから、みんな疑心暗鬼になってるよね。
シャッフルたん

広報エリナ
ああ、目に見えないものへの恐怖に人は弱いものだからな。

ミステリーマン
ミステリーマン

でも実際にウイルスは怖いよ~。
シャッフルたん

広報エリナ
ウイルスにとってみれば、人類なんてここ最近に現れた生意気な新参者に過ぎないからな。なんせウイルス40億年もの時間をこの惑星で生き抜いてきた強者、一方のこちらはといえばせいぜい20万年程度の歴史しか持たない若輩なんだから。

ミステリーマン
ミステリーマン

大先輩…どころの話じゃないね。
シャッフルたん

広報エリナ
うむ。それに人とウイルスの戦いにおいてはウイルスに圧倒的に分があると言われてる。遺伝子変異によって耐性を獲得するにも、人間の世代交代には30年かかる。一方、ウイルスはその100万倍の速度で遺伝子変異を続け進化している。だからこそ「ウイルスとの戦争」みたいな無謀な戦いに挑むのはアイディアとしてもよくないんだ。まず、そもそも感染症を引き起こさないために環境問題を考え直す必要があるってことなんだよ。

 

『ウイルス・プラネット』(著・カール・ジンマー/訳・今西康子/ポピュラーサイエンス)

 

永久凍土に眠る未知のウイルスの拡散危機

広報エリナ
ちなみに森林破壊が引き起こすのは動物の移動による感染症拡大リスクだけじゃないぞ。

ミステリーマン
ミステリーマン

ええ!? 他にもリスクがあるの!?
シャッフルたん

広報エリナ
たとえば森林の減少による温暖化もまた新しいパンデミックを引き起こす原因となりかねないんだ。シャッフルたん、永久凍土って知ってるか?

ミステリーマン
ミステリーマン

永久凍土? 知らないなぁ。
シャッフルたん

広報エリナ
永久凍土とはシベリアやアラスカにある凍った大地のことで、実は地球の地表の約20%はこの永久凍土だと言われているんだ。その凍土の中にはマンモスなどの古代生物や、未知の資源などが眠っているとされている。この永久凍土が、いま温暖化によって溶け始めているんだよ。

ミステリーマン
ミステリーマン

大変だ!
シャッフルたん

広報エリナ
この永久凍土の溶解によって危惧されているのが、古代の病原体のパンデミックなんだよ。氷の中に眠る、未知のウイルスが温暖化によって地上に現れ、人々に感染してしまうかもしれない。実際、永久凍土付近に生息するトナカイを媒介として古代の炭疽菌が人に感染して死亡したという事例もある。専門家の間では永久凍土は「時限爆弾のようなものだ」と言われているぞ。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

時限爆弾…!
シャッフルたん

広報エリナ
すでに永久凍土からはパンドラウイルスなどのこれまでになかった超巨大ウイルスも発見されている。これらは人に感染しないタイプのウイルスだから問題はないが、凍土の中にはまだまだ未知の存在が多く眠っているということは間違いない。

 

 

パンドラウイルス。これまでで知られている最大のウイルスで、その存在によって従来のウイルス学は大きく覆されることになった。
ミステリーマン
ミステリーマン

怖い~! 新たなるパンデミックを防ぐためにはどうすればいいんだろう!
シャッフルたん

広報エリナ
ウイルスは人や動物の密度が低いところでは生き長らえられない。だから、まずは「social distancing」、人と人、人と動物、人と他生との距離を考え直すこと。そして、森林破壊は主にハイコストな暮らしのために引き起こされてるから、そうした暮らしそのものを見直すことだな。

ミステリーマン
ミステリーマン

必要なものを必要なぶんだけ消費する暮らしにしていかなきゃならないんだね。はっ! そこで3Dプリンターなのか
シャッフルたん

 

《PZSONICMINI》Phrozen Sonic Mini

 

広報エリナ
ああ、3Dプリンターが大量生産大量消費という現代の生産システムを変えることができるテクノロジーだということはこれまでなんども語ってきた。3Dデータをもとに、各自が各家庭で必要なぶんだけ「もの」を出力することで、暮らしのコストは大幅に下がる。現状ではなかなか企業にとってのメリットがないことから、この大規模な「産業革命」は十分に機能していないが、「ステイホーム」がスローガンになりつつある今日、3Dプリンターの真価がようやく試されようとしているとも言える。

ミステリーマン
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3Dプリンターが環境を改善する可能性があるんだね。
シャッフルたん

広報エリナ
ああ、製造に無駄のない3Dプリンターによるものつくりが普及することでCO2排出量の削減、温暖化の抑止にも資すると言われている。環境問題と真剣に向きあわねければならない今だからこそ、3Dプリンターに期待が集まってるんだ。

 

 

ミステリーマン
ミステリーマン

もうここまできたらピンチをチャンスに変えるしかないもんね!
シャッフルたん

広報エリナ
うむ! 冬来りなば春遠からじ!

ミステリーマン
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塞翁が馬!
シャッフルたん

広報エリナ
その心意気だ! というわけで、今回は感染症から考える環境問題について、以上、広報エリナでした。

 

 

(参考文献)

『ウイルスは生きている』(著・中屋敷均/講談社現代新書)
『感染症の世界史』(著・石弘之/角川ソフィア文庫)
『ウイルス・プラネット』(著・カール・ジンマー/訳・今西康子/ポピュラーサイエンス)
『生物はウイルスが進化させた』(著・武村政春/ブルーバックス)

 

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